6話 モンスターにも拉致られました
大河は森の地面とハグする形で倒れていた。動きたくてもスキルで出現し激突したハンマーによってあばら骨をごっそりと持っていかれまともに動けなかったからである。この状況を何とかするためにあまり使いたくなかったが動けないことには何もできなので渋々ながらユニークスキル:ゆびをふるを使うか悩んでいたがリスク覚悟で使用する事にした。
「
『ユニークスキル:ゆびをふる発動
タイガは指を振って【回復《ヒール》】
を選択しました
発動失敗:タイガは包帯を手に入れました』
腹部が重大なダメージを負ってしまっている今の状態や今までのスキルで発動された内容を考えるとまだ善意てきなものではあったが包帯一つでは今の状況はとても変えられそうになかった。
それからも繰り返し続けるがやはりそう上手い事引き当てることができず寧ろスキル発動によって使用する前よりも体力的に消耗していった。
そんなこんなで森に落ちてからしばらく時間が経過すると大河の目の前に一匹の猿型のモンスターの一種、モノマネールが現れた。のモンスター達は名前の通り多種族の見たものを真似たがる習性を持っており、知力も高いため人が扱う武器を扱えたりする。
駄目だ、終わった。死んだふりして何とかやり過ごそう。
大河は戦闘はおろか逃走すらできないと即座に判断して、身じろぎ一つしない事で死んだと思わせ立ち去らせる戦法を取った。
しかし大河の思惑どうりにはいかずモノマネールは大河をじっくり観察した後に首元の襟を掴んで大河を引っ張り始めた。最初は何故そんなことをするのかわからなかったが、しばらくするとその理由が判明した。
モノマネールは洞窟らしき場所に着くと再び引きずりながら大河を中へと運んで行った。そこには他の同類のモンスターが見られどうやらここがこのモンスターの住処であるこが判明し同時に巣に自分が持ち帰られる理由が嫌でも浮かんだ。
自分の死を直感した大河は小声で唱えながら必死でスキルを使用し続ける。
「
モンスターが足を止めると口を離し数回吠えた。すると中からモノマネールの子供と思わしき子猿のような姿をしたモンスターが数匹現れた。まるでご馳走を前にしたような無邪気でなんとも嬉しそうな表情をしているがその笑みは大河に絶望を与えるもの以外の何でもなかった。
おい、本当にどうなってんだよ俺の異世界転生!そもそも普通は初心者冒険者用の街とかに飛ばされて冒険者ギルドとか見つけて丁寧に説明されているであろう時間帯だろう?
それなのに何の因果で転生して1時間も経たずに街に到着出来ないどころか人にすら会えず、モンスターに捕まって殺されかけてるんだよ!恐らくどの世界探しても間違いなく俺だけだろうよ。転生早々何度も死にかけた挙句にモンスターの餌にされかけているのは)
「
大河がハズレばかり引き当てていると臀部や太ももに鋭いものが突き刺さるような痛みが走った。振り返ると子供らがかぶりついていた。幸いまだ力が弱いため嚙み切られるといったことはなさそうだが激痛には違いなかく、それを数カ所も一気に来るものだから溜まったものではなかった。
ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!時間がわからないから何ご飯は知らないが、このままだと確実に食卓に俺れがメインディシュとして並べられる!
「
激痛に苦しみながらも何度もスキルを行使するが当たりを一向に引き当てられずにいた。すると突然噛みつかれている感覚がなくなりどうしたのかと見返すと子供が困った顔で親と話しているようだった。
すると親は松明と鋭そうな刃物を持ってきた。これが何を意味するのかなど嫌でも理解させれられた。
マ・ズ・イ!このままだと全身火あぶりにされて丸焼きとかにされた挙句解体されて食われる‼︎
「キーキキ。キッキ(やっぱり生は良くないわ。炙っていい感じに焼いてからスライスしましょう)」
「キー!キー!キキーキキ(母ちゃん!母ちゃん!俺モモ肉ね)」
「キーキーキ(俺は何処でもいいからデカイ部位ね)」
何を言ってんのかはわからないものの自分という御馳走を目の前にして子供猿が歓喜している事はヒシヒシと伝わってきた。
目の前凶器が鮮烈に死というもの大河に感じさせ、これまでも感じた普通に死ぬ恐怖とはまた別の身体を食われて殺される独特の恐ろしさが彼の心を追い詰めていった。更に先ほどの空中からの落下と同じく身近に死が近づいた時ほど生存本能が働くためスキルの使用速度も否が応でも上がっていった。
勝手に殺されて無理矢理異世界転生された挙句こんな死に方なんて冗談じゃない!俺はあのクソ神を断罪するまで何が何でも死ねないんだ!
『ユニークスキル:ゆびをふる発動
タイガは指を振って【
選択した
発動失敗:モノマネールにエレキボルトが
落とされた』
「「ウキー!!」」
落雷の電撃によって見事モンスターの撃退には成功した…が
「ギャーー!!」
その落雷は大河ごとまとめてモンスターども感電させ丸焦げにした。大河はモンスターに丸焼きにはされず命は助かりこそしたもののまたしても自らのスキルに巻き込まれ多大なダメージを負い死の淵をさ迷っていた。
それからしばらく経って口と手を動かせるくらいに回復したら大河は再びスキルの連続使用をし続けた。痺れはある程度とれたものの粉々になっているあばらは当然ならるわけもなく、そんな状態でモンスターの巣穴を抜けるなど無理に等しかったからである。
火傷になったり凍傷になったり毒になったり、それらがいつの間にか治ったりを繰り返し、スキルを使い続けた。そしてもう何回目になるかわからないスキル使用でようやく意図していたものとは違うがそれを上回るものを引き当て完全回復を果たした。
そして連れてこられた道をなるべく気配を消してゆっくり進みながら出口を目指し素早く迅速にでも決して物音を立てないように慎重に移動していった。そして無事自分が連れてこられた洞窟の出口までたどり着くことができた。
「やったぁーー!!これで俺は、自由だぁーー!!」
安心していたのも束の間、目の前から数匹のモノマネール達が大河の目の前に降りてきた。大河は最初状況を呑みずにおり、それは相手も同じなじで仲間が食料として連行した人間が何故ここにいるのかなと興味深かそうに大河の事を観察していた。
「いや~あれですか?パトロールってやつですかね?それとも食料調達ですかねいやすいませんね自分から入ったわけではないけどお邪魔しちゃって。俺もうすぐおいとましますんで。それでは」
大河はまるで何事もなかったかのようにそそくさと立ち去ろうとした。が…
「キィ!キーキキ。キキー(飯が逃げたぞ!逃がさん。お前ら俺についてこい)」
「「キッキー(イエス、ボス!)」」
当然モノマネール達は見逃してくれるはずもなく大河の後を追い始めた。
「ですよね〜」
結局大河は無事立ち去ることなどできるはずもなくサルの軍勢に追われる羽目になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます