7話 過去最高にヤバイ物が落下中です

 大河は後ろから迫るモノマネールの群れを振り払うべく逃げていた。転生した体だからなのか生前に比べてやたら早く動くことができ素早く巣穴からは遠ざかることはできた。


 しかし流石にあちちらもモンスターなだけあり動きが俊敏だった。それも森が住処の近くにあるサル型の魔物なだけあって上手く木々を移動しながら大河に追いつこうとしていた。


 大河は巣穴から持ってきた包丁のような刃物を使って戦おうか悩んだが、この世界での戦闘が初な上に相手の強さが未知数のため逃げながらスキルを使用して倒すことを選択した。


「かえんほうしゃ、かえんほうしゃ、かえんほうしゃ、かえんほうしゃ、かえんほうしゃ」


 とりあえず攻撃できそう言葉を連呼するがやはり引き当てられないのは理解していたが大河の予想外のことが連発した。


『ユニークスキル:ゆびをふる発動

 タイガは指を振って【かえんほうしゃ】を選択した

 発動失敗:モノマネールマネールの筋力が上昇した

 発動失敗:タイガの物理防御が低下した

 発動失敗:モノマネールの筋力が大幅に上昇した

 発動失敗:キングマネールが巨大化し全てのステータスが上昇した

 発動失敗:タイガの頭上から包丁が落下した』


「危ねっ!おおーい!敵がパワーアップした上にこっちはパワーダウンしてるってどうなってんだよ。悪いもの引きすぎだろ!」


 元よりハイリスクノーリターンになる確率が高いのは承知の上ではあったがハイリスクマイナスリターンに、それも5回のうち5回ともなるとは思っておらず、あまりの間の悪さに落ち込みたくなるもそんな余裕さえ追跡してくるモンスターが与えてくれなかった。


 それからも何度となくスキルの発動を試みるも、まるでお約束お約束であるかのようにことごとく自分に対してのデバフや追ってくるモンスターへのバフばかりを引き続け自らのスキルによってどんどんピンチへと追い込まれていくもこの方法以外に選択肢の無かった大河はこのスキルにかけて酷使し続けた。


 しかし空気を読んでいるためか、それともあえて空気を読んでいるからこそ出ないのかと思えるくらい大河に対して不利となるものばかりで続けるので途中からスキルを使うのをやめてスピードを上げて振り切る作戦に切り替えた。トップスピードで走り出した。


 モノマネールも追いつこうとスピードを上げるものの大河の方が上回っておりスキルで俊敏が上がっていたキングマネール以外は大河と離されていった。


 それからしばらく逃げ続けると森を抜けて周り一面畑だらけのところまで逃げてきてた。

 全力使い切って逃走する予定だった大河だがキングマネールは撒けそうにないとふんで再度スキルに頼ることにした。


 そろそろ流石にまずいぞ。かなりの距離を相当なスピードで走らされてもう足が限界なんだ。いい加減引き当ててくれよ!


「かえんほうしゃ」


『ユニークスキル:ゆびをふる発動

 タイガは指を振って【かえんほうしゃ】を選択した

 発動失敗:大河の頭上から隕石が落下した』


「は?」


 空を見上げると今までに見たことのない謎の超巨大物体が空から落ちようとしていた。


 おい!これまた死亡フラグじゃねーか。いい加減にしろ!これじゃモンスター全滅できても巻き添えで俺も確実に死ぬって!とりあえず隕石なんとかしないと。


「隕石消滅、隕石消滅」


 大河は頭上から落下して来ている隕石を排除すべくスキルを使用した。しかし、彼はこの選択をしてしまったことをすぐに後悔した。


『ユニークスキル:ゆびをふる発動

 タイガは指を振って【隕石消滅】を選択した

 発動失敗:隕石が巨大化した

 発動失敗:キングマネールの頭上から隕石が 落下した』


 またこのパターンか!状況悪化させてどうすんだよ。俺が願ったのは隕石の消滅なんだよ。縮小ならまだしもなんで巨大化してんだよ!しかもとんでもない危険物体がさらっと増えやがった。馴染みの店のおばちゃんが『サービスでコロッケもう一個入れとくね』みたいなオマケ感覚みたいにさらっともう一個隕石なんて追加すんじゃね!


 またしても大河の望みは叶わないどころか現状は悪化の一途をたどり、大河は腹部になんとも言えない痛みが走った。


 い、胃が痛て〜。あのクソ神同様クソなスキルだとは思ってたけどますます駄目化が進んでるように思えてならないんだが⁉︎


 最初は自分の不遇に嘆いていた大河だったが逃げても逃げても隕石との距離が広がらないどころか近づいている現状にこれまで不幸による精神的疲労の蓄積も相まって精神が半壊してしまった。


 は、はははは。もう無理だよ、逃げれっこないもん。あんなものそうだよそもそもチート能力どころかお荷物スキルを背負っている俺がもう魔王なんて倒せるわけないじゃないか。頑張ってもどうせ魔王の幹部辺りとすら対面する前によくわからないチンピラモンスターにやられるのが落ちだろうし、苦労する前に楽に逝けるのならそれでいいじゃないか?


 大河はこれから味わうであろう壮絶な苦労を想像してこの状況含めこれから先の異世界生活を諦めてしまっていた。


 それにこのまま死んでももしかしたら他の神様の元に行けるかもしれない。そうすればあのクソ神の事も報告できるし、あれに厳正なる裁きを下せるかもしれない。仮にそうできなかったとしても他の神なら少なくともあれよりひどいことはないだろう。なんだよく考えたらここでジ・エンドになる方がよっぽどいいじゃないか?


 大河は今にも隕石で死の一歩手前にいるというのにまるで無邪気な笑顔のまま純粋無垢な少女がお花畑をスキップするかのような感じでとても歪で異常な笑みを浮かべていた。






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