116話 タイガVS分隊長ウエルグ3
相手の魔法攻撃を連続でモロにもらい気絶しかけていた大河だったが、爆炎によって巻き上がり周囲を覆っていた土煙が晴れて日の光が顔を照らし、その眩しさで気を取り戻し、目を開けた視界には今の自分とは対照的な澄み切った青い空が視界に入った。
生きてる…な。手足も……ああ、ついてる。けど流石に…やべえ
戦闘前の爆発と落下の衝撃。戦闘での諸々の疲労。そして今さっきウエルグから受けた火属性魔法の連続コンボのダメージ。体を起こそうとしても中々起き上がれなかった。
体言うこと聞かないし、もう…寝てていいかな?来たばかりの新米にしてはよくやったほうだよな?もう残りは他の冒険者任せてこのままくたばって…
意識が遠のきかけていた。そんな時、彼の耳に爆発音に紛れた聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。
「「…っ!」」
何だろう?誰かが叫んで…
「「っだ!」」
なんか聞き覚えがあるような…誰だったっけ?
「「まだまだぁ!」」
「っ!」
戦意を失いかけていた大河にもはっきりと聞こえてくるほど
!…そうだ、そうだった。あいつらもあの軍勢を相手に戦ってるんだよな。寝てる場合じゃ…ねーよな。こんなとこでくたばってるようじゃあの時となんにも変わらないもんな。それに…
『こ奴が敵軍の指揮官の首を必ず捕る「はぁ⁉」だからお前たちも諦めず我々の背中を押してほしい』
『信頼しているぞ、同士よ。我々も力の限りを尽くす』
『ええ、王族の誇りにかけて最後まで抗いましょう』
『ああ~もう!こうなったらやけだ!ヤケクソだ!今の俺に演じきれるとは到底思えんが力の限り演じきってやるよ!
成り行きとはいえ約束…したもんな
胸を焼き付くすような思い。エルノアらのによって湧き出た感情が背中を押してフラつきながらも立ち上がった。ウエルグは間違いなく死んだと思っていただけに彼が復活したことに驚愕し困惑した。
「あ、あの攻撃を受けて生きている…だと!くっぬぬ………ふ、ふはははは!アレを受けて立ち上がった事は褒めてやるが所詮は風前の灯火。立っているのがやっとのことじゃろう?」
確かにアイツの言う通りだ。立ったはいいけど状況は最悪だ。このポンコツ寸前の状態で敵に突っ込まないといけなんだから笑えねよ。けど、やらないとな
「ここまで手こずらされるとは。まあいい、奴の命尽きるまで思う存分甚振ってやる」
あいつをぶっ飛ばす為にはさっきの障壁魔法、あれを何とかしないといけない。きっと俺が再び接近戦に持ち込めてもまたあの障壁を張ってガードされるだろう。けどさっきと同じように攻撃してもあれは壊せないし、連打じゃ仮に破壊できてもその間に詠唱と魔法発動の準備整えられて魔法を打ち込まれては意味がない。つまりあれを一撃でぶっ壊すことのできる破壊力が必要って事だ。その為には…
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「フアァァイイィヤアアァーー‼」
「ふぁ、ふぁ…いや?」
「魂がこもってなあああぁぁい!!はい、もう一回!」
「ファ、ファイヤー」
「ちっっっがあぁーーーう‼もっと心の奥から気持ちを込めて…」
「あの、そもそもこれはなんの練習なんですか?発声練習にしか思えないのですが」
「まさにその通りだが」
「………あ、あ~その~何と言いますか。僕にはブライトさんの様に所構わず叫び散らす趣味は持ち合わせていないのですが」
「ノッッオウゥゥゥゥッッ‼私とてそんな特殊な思考していなあぁぁいぃ!」
本気で言っているのだろうかこの人は?…残念だけど本気なんだろうなぁ…
「それじゃあ何故わざわざ発生練習なんかしているんですか?」
「少年のやる気を引き上げる為さ!」
「………」
「………」
「あの…説明終わりですか?」
「そうだが?」
「嘘だろ…はぁ」
「どうしたのだ少年、そんな呆れたような溜息ついて」
「今まさにそんな心情なのですが」
「ふむ、またもや誤解されているようだな」
「絶対誤解じゃないと思いますけどね」
「いいか少年やる気とはとても大事なものなだよ」
「は、はあ」
「そして声の大きさは時としてやる気。気力の高さに直結する」
「………」
まあ、そこは分からくもないですが
「そして高い気力は時として大きな壁を開き、破る為の武器となる」
この流れだとまとも話のパターンかな?
「しかしいきなり気力を最高潮にもっていけといわれても中々難しいものだ。特に大河少年のように普段大人しいタイプの人間は尚更だ」
まあ確かに
「なのでそれを自在に引き出す為のキー。一種のトリガーとなる行為や道具が必要となる」
「つまり戦闘に入る前や強襲を受けたりしても直ぐに戦闘態勢を整えることができるようになるためのアイテム作りが今回の練習の要ってことですか」
「いや、違うよ」
「え、違うんですか?今までの流れを整理したらそんなにハズレてない気がするんですけど」
「私のとっておきの一つをマスターしてもらうのが今回の目標だ」
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やっぱりアレしかないな。けど成功率はかなり低い上に体は限界ボロボロ。恐らくまともに動けるのはあと一回、次が最後の攻撃になるだろうな。不安要素だらけだけど…
『タイガ
『気力と度胸…ですよね?』
『うむ、それさえ忘れなければ大抵大丈夫だ!』
うん、大丈夫。辛うじてだけどちゃんとある。後は実践するだけだ!
体中が悲鳴を上げるながらも迷い無く敵への一歩を踏み出して駆け出した。
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