115話 タイガVS分隊長ウエルグ 2
本気にさせちまったみたいだな。でも足元グラついてる辺りいい感じにダメージ与えられたみたいだし、さっきの奴同様に爆発のダメージによるせいなのか得意呪文が上手く決まっていない様だし、このままいければ…
「この機に乗じて一気に攻めさせてもう!」
「調子に乗るなよ…小僧がぁ!」
「そっちこそ魔法を撃てるものなら撃ってみやがれ!」
「こうなったら一か八か<眼前の低俗な愚民を甚振り嬲れ>メガ・フレイムウィップ」
光線のように一直線放たれた火。大河は盾で防ごうとした。
「そんな攻撃いくらでも防御して…」
<ヒュン>
な!軌道が…
大河は咄嗟に
「くっそ!これじゃ盾が意味ねぇー!」
「ほれ2発目だ!」
再び向かって来た火の鞭。右に回避するものの軌道を変えて追撃された。
この攻撃思っていた以上に速い!これじゃかわしながら前進できねー!
突破口の見つからない敵の攻撃に大河は止む終えず後ろに後退し距離を取った。
「そらそらそら!さっきの威勢はどこにいったのだ小僧⁉」
左右から交互に襲い来る
「そんなに離れて、臆したか小僧?逃げてばかりでは勝負に勝てんぞ」
「このままじゃ!…ん?」
距離をとった大河をあざ笑う様に挑発するウエルグ。悔しさから相手の顔に睨み返していると大河には疑問が浮かんできた。
あいつの表情、なんか変だ。それにこの攻撃…
離れても尚くる敵の追撃をかわし続けていると徐々に変化に気付き始め、タイミングを計っていた。
大河は再度ウエルグの方に視線を移し彼の様子を観察して確信した。
アイツのあの感じ…最初はま爆発のダメージによるものかと思ったが恐らく違うな。戦い始めた時にはなかった肩で息をしながらの苦しそうな表情、バテてるなあれは。さっきまでと比べて炎鞭の攻撃速度が格段に遅い。飛ばし過ぎもあるのだろうけどファイアボールのような魔法の形態維持が数秒あるかないかの魔法と違い命中させるか魔法を解除するかしないと使用中ずっと魔力と神経を使い続けるだろうな。それにあの回避後の追撃も魔法である限りあいつの魔力による主導の攻撃だろうし、オートとかでない分更に消耗したんだろうな。振り子のように左右からしか来ないのなら縄跳びの要領で恐らく回避できる筈
確信を得た大河は攻撃をかがんで回避した直後に走り出した。そうはさせまいとウエルグの
「くっ!ちょこまかと」
一定距離を詰めると回避後に再び大河に向かって先端が追撃し始めるがスピードの落ちた攻撃では捉えることができず易々とかわして前進していた。
よし、あと少し…
<ガクン>
な、足が!
残り数メートルといったところで疲労から足元が崩れてしまい、迫り来る
「フハハハハハ、惜しかったな。もう少しで我の元までたどり着けそうだった…!」
勝ち誇っていたウエルグだったが次に視界に捉えた光景に目を疑った。爆炎の中から這い出て自分のもうすぐ目の前まで迫って来ていたからである。
コイツ、足を負傷しながら突っ込んで来やがった!
「これで決めてやる!」
「<その絶壁であらゆるモノを弾け>ギガ・ウォール!」
”ガッーーン!!”
ウエルグが呪文を唱え切り魔法を発動すると突然大河とウエルグの間に魔法の障壁が出現した。大河の攻撃は壁によって阻まれ激突時の音が虚しく響いた。ほぼベストに近い感覚で叩き込んだ攻撃だったが障壁は強固で破壊するには至らなかった。
「くっ、硬い!」
「当然だ。いくら貴様の攻撃力が新人離れしていたとしても駆け出し冒険者風情が私の中級呪文の障壁を破壊する事など…」
見下していたウエルグだったが、大河の殴りつけた辺りに突然障亀裂が生じ狼狽えた。
「な、馬鹿な!私の中級呪文の障壁があんな奴に傷つけられるとは…」
「どうやら全く通用しない…というわけでもなさそうだな」
「それでも所詮かすり傷程度に過ぎぬわ!」
確かに今のままでは有効打にはならない
「だったらぶっ壊れるまで何発でも叩き込むだけだ!」
障壁を破壊せんと再び殴り掛かろうとした。しかし大河が拳を振り上げ踏み込もうとした瞬間に展開されていた障壁は解除された。そしてその視線の先、ウエルグはニヤリと下卑た笑みを浮かべた。
「なっ!」
「青いわ!<燃えよ>メガ・フレイム!」
ウエルグの放った火属性魔法攻撃が至近距離で炸裂。モロに食らった大河は焼かれながらふっ飛ばされて倒れた。
初級と同じ短分詠唱からの中級魔法!
「〈我が豪球に包まれてその身を爆ぜろ〉メガファイアボール・6連!」
「‼」
避けられねぇ!!
地面に突っ伏した大河に止めをささんと放たれた火球の連弾。大河はダメージから追撃を回避できず続けて食らってしまい爆炎に包まれるのだった。
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