68話 またしても神の失敗が発覚しました
一瞬目の前が白く光ったと思ったら視界が王城からギルドの目前に切り替わっていた。初めて味わう
(恐らく何も言葉を交わすことなく
「メイド長が仰っていた事は大半が嘘だと思って適当に聞き流しておいた方がいいんですかね」
大河は半分ヤケクソ気味にエルド隊長に尋ねた。
「えっとですね、少なくともメイド長が仰っていたリスクの方に関しては本当の事ですね」
「 一番嘘であって欲しかったとこじゃないですか」
「とは言え出発前に私が申しました通りメイド長が人を相手にテレポートで失敗した事はありませんよ。少なくとも私が知る限りは」
「最初からその情報だけ伝えてほしかったですね」
(起床時のメイドの件も合わせると、あれだけだ精神の半分が摩擦された気がする)
「そういえば大分遅れてしまいましたが私は王室護衛隊の隊長を務めさせてもらっていますエルドです。どうぞよろしくお願いします」
「タイガです。奇妙な出会いから始まりましたが、こちらこそよろしくお願いします」
かなり遅めの自己紹介を済まし心のモヤモヤが少し晴れたところでギルドの中へと進んだ。
昨日に比べて早く来たからか比較的すいていたこともありすぐに順番が回ってきた。
「ああタイ…タイガ…さん?ですよね」
「ええ、まあそうですけど」
顔合わせそうそう受付嬢から困惑した表情を向けられたが心当たりのない大河は不審に思った。
「申し訳ありません。昨日と服装の種類と言いますか色が180度違いましたので本当に同一人物かと戸惑ってしまい」
(そういえば学ランに制服ズボンの黒々セットだった昨日に対して今日は白々だもんな)
「ミッション達成の報告は昨日 氏より受けておりますが何かあったのですか?後から来られた 氏『彼なら先に行ったからすでに到着している筈なのだが?何かあったのかな』と心配しておりましたよ」
タイガ含め連れの3人は事情を把握しているため顔を渋めた。
(そういえば後からギルドの方に足を運ぶって言っていたな。つくづく迷惑かけてしまってるなあの人には)
「心配させてしまいすいません。予定外のアクシデントに見舞われまして」
(流石に王女やら警備隊やらに捕まったとは言えないしな)
「そうですか。それと今回のミッションに不手際があった事深くお詫び申し上げねばなりません」
「何の話ですか?」
「ヒートベアー遭遇の件です」
(ああ、あったなそういえば。さあ帰ろうって時に突然現れた森の熊さん事件。その後も強烈な出来事の連続で忘れてたけどあれもかなりやばかったっけ)
「本来であればまだ冬眠状態中の筈なのですが何故か出現してしまったことから恐らく1週間ほど前に起こった隕石落下による衝撃で冬眠中のモンスターが目覚め始めたのかもしれません」
(うげっ!そういえば会議でも言われてたなその件。完全に自業自得…)
「と言ってもそれまで発見されておらず、これまでこの時期に四季山ではモンスターの出現が確認されなかったこともありまだ現れることもないだろうと油断してしまいました。本当に申し訳ありません」
受付嬢とギルドマスターは深々とお辞儀した。意図して起こした事ではないとはいえ、自身の行動にによって招いてしまった不幸に対して真剣にお詫びする目の前の受付嬢には罪悪感しかわいてこなかった。
「確かに危険な目には遭いましたけど、それなら仕方ありませんよ。それに幸い無事だったわけですし」
(元々俺のせいですし)
「そう言っていただけると助かります」
受付嬢がホッと胸でなでおろす。そしてその姿を見て大河も安堵する。
「それにしても冬眠明けとはいえまだ駆け出しですらないタイガさんがヒートベアー討伐されるとは驚きました」
「まあ、運がよかっただけです」
「そんなに謙遜されなくてもいいですよ」
(スキルというか
「やっぱりあのモンスター強かったんですか?」
「個体差にもやりますが本来ヒートベアーはB級クラスのモンスターですね。冬眠明けは体内に蓄えていた脂肪や栄養を使い果たしており、それにつられ体も二回りほど縮んでしまいますが、それでも他のモンスターと比べても獰猛で凶悪な獣でD級クラスに指定されているモンスターです。そこらの駆け出し冒険者は勿論、中級レベルの冒険者でも苦戦する程のモンスターですね」
(…よく勝てたな俺。本当にフライパン様様だな)
「このモンスターアベレージが高く最前線に近いとされている王都にわざわざ冒険者登録しに来る方は大抵が田舎で神童だのなんだのと騒がれて天狗になった身の程知らずかレベルの違いも分からずに来てしまうイタイ方ばかりで正直タイガさんもその類だと誤解しておりました申し訳ありません」
「は?」
今大河の耳には聞こえてはならない言葉が飛んできた。
「すいません聞き間違えですよね?今モンスターレベルが高くて最前線に近いとか言いましたか」
「ええ、そういいましたけど?」
「この都市っといわゆる始まりと街ではないのですか」
「リボーンのことですか?全然違いますよ。街の規模や人口、冒険者レベルから始まってあらゆるところが何から何まで違うじゃないですか」
苦笑する受付嬢とは対照的にタイガ様無言のままで不審に思った は声をかけた。
「………」
「タイガ様?」
「すいません。少し待っていただけますか」
「え、ええ」
なるべく表情は変えないままで心の中で烈火のごとく怒りながらその名を呼んだ
(クソ神!クソ神ーーー!!とっと応じて説明しろ!)
「なんじゃまたお主か。ワシの仕事を妨げようとは許されざる蛮行だということがまだ…」
(そんなことはどうでもいい!お前なんでよりによってバリバリ危険度高めの王都付近なんかに転生してくれてんだよ)
「なんじゃと?誰がそんなへまなんぞ…」
神は一瞬口ごもるとそのまま黙りこくった。
「ああ…道理で前はなかった筈の検問があるわけじゃな。まあなんだ、その…こういう事は偶にあるものじゃ。ドンマイ」
(なんでまたしても俺がミスしたみたいに言ってんだよ。どう考えてもお前のミスだろうが!俺を遥か上空から転生なんていうトンデモ事件を起こしといてどうやったらそれ以上に平然とミスを重ねられるんだよ!)
「人という生き物は誰しも必ず失敗という名のミスを犯すものだ。それならそのミスを笑って許すのも人というものじゃ」
(お前人じゃないだろう!というか笑い流せる範囲を優に超えてんだよあんたのやらかすことは)
「完璧な神であるワシですらそういったミスを1兆の1の確率だろうと犯してしまうという事じゃ」
(1兆分の1って突然雷に打たれたり人工衛星が落ちたりするくらい非現実的な確率の低さだと思うんだが、俺はその確率とすら言っていいかわからないやつに頻繁に当たっている気がしてならないんですがね)
「貴様川に流されたり山で遭遇して死んだとして川や山を責めるか」
(はい?)
「せんじゃろう?それはつまりもう仕方のない事だからじゃ」
(いや、何が言いたいのか全くわからないんだが)
「つまりじゃ、台風等の自然災害で悪意や意図せず被害が出てしまうのと同じようなものじゃ。この世界の理、一種の法則とも言えるじゃろうのう」
(それらとは全然違うからな。突発的に起こる自然傷害と人為的に起こるミスを同列扱うなよ。少なくともあんたのせいで起こってしまった事態には微塵もかわりはないからな。というか俺に対して失態しか見せてない辺り完璧なんかとは程の多いからなあんた)
「やはり凡人にすら到達出来ていないお主のその無駄に膨らんだだけの粗末な脳みそでは全知全能たるワシの考えは理解など出来…」
(そんなもん出来てたまるか!)
大河は息切れしながら強制的に念じる動作をやめたのだった。
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