70話 ステータス
(ビックリ系と恐怖系の連続コンボのせいで冒険者ギルドで冒険者登録をしたというよりお化け屋敷でスリラーを存分に味わった感じの疲弊感だな)
「それではこちらがタイガさんの冒険者カードになります」
「ありがとうご…」
目の前に差し出されたカードを受け取りながらお礼を言うおうとしたところ大河の口が止まった。
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冒険者カード
イマムラ・タイガ ◯
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「あの、このカード表も裏も俺の名前冒険者カードという文字しか記入されていないのですが、そういう物なんですか?」
「そうではあありませんよ。名前の横にマークがあるかと思われます。そこにご自身の親指を押し当てて下さい。カードに認証されている指紋と一致すればカードが読み取り起動する仕組みとなっております」
「なるほど。そういう仕組みになっているんですね」
「これは冒険者様が自分の冒険者カードを紛失した際に情報が漏洩しないための措置としてそういう仕様になっております」
(親切設計になっているのはわかるけどその親切心があるのであればあの登録方法をもう少し別の心臓に悪くない類のやり方に変更していただけないものなのだろうか?せめて冒険者らしく腕試しとかの類いにしてほしかった)
色々と引っかかりながら指紋認証を行った。するとウィンドウのようなものが表示された。
「今のように指紋認証が完了すると表示される仕組みとなっております」
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名前:イマムラ・タイガ
種族:
年齢:15歳
性別:男性
役職:なし
階級:駆け出し
状態:健康
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「それとこちらがタイガさんの身分証明書カードになります」
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名前:イマムラ・タイガ
種族:
職業:冒険者
最終記録地点:王都南部冒険者ギルド
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「こっちの方は特に指紋認証とかは必要ないんですね」
「冒険者カードと比べてそこまで重要な事は記載されていませんのでそのままの身分証明カードでしたら特に隠す必要がないとの事でそのまま記載しています。その代わりご本人の物と判別できるように裏に持ち主の写真が貼られております」
タイガはカードを裏返して確認してみるとそこには確かに大河の写真が貼られていた。しかしその写真に写っているの自分の顔は平時からかけ離れたような表情をしていた。
「…いつ撮ったんですかこの写真?」
「先程のケテリーの口の中で撮らせていただいました」
「…だからか」
特別見栄を張りたい気持ちなどはないものの、情けないというか阿鼻叫喚みたいな表情をしている
「あの、出来れば写真をもう一度取り直してほしいのですが」
(流石に起きる事が分かってればこれよりはマシな表情が出来るだろう)
「構いませんが別料金が発生しますがよろしいでしょうか?」
「…また、今度にします」
「冗談ですよ。ヒートベアーの件もありますから無料で行わせていただきます」
再度写真を撮った後それを元に身分証明書の写真を無難な物に変えてもらった。
「それでは改めて冒険者カードについてご説明させていただきますね」
「あ、続きあったんですね」
「ただその前に一つだけ確認事項がありまして。タイガさんが冒険者になるにあたり、ギルドの方針として冒険者様の現状等を把握しておくため冒険者カードに記録されているデータをギルド側でこのように紙に写しとして保存する形となりますがよろしいでしょか」
「はい、構いませんよ」
「それでは説明に入らせていただきます。冒険者カードが開示されると名前と年齢や性別といったいくつかの個人情報の次にステータス、
大河は冒険者カードのロックを解いて確認する。
(あ、ホントだ)
「まずはステータスの文字をクリックしてみてください」
言われた通り押してみるとその下に『メインステータス』『サブステータス』と2つの文字が表示された。
「ステータスって2種類に分類されているんですね」
「冒険者にとって戦闘を左右するのに直接影響のある要となる基本の基礎能力が記載されているのがメインステータス。他の本人の身長、体重といった詳細なデータが記載されているのがサブステータスになります」
「つまり冒険者にとってはメインの方に記載されているつの5つのステータスの数字が重要ということですね」
「そういう事になりますね。クエストによってはサブステータスの方も必要になってくるケースもありますが、基本的に戦闘を行うだけであればメインの数値が最も重要となってきます」
「一昔前は区分されいなかったんですがね」
「そうなんですか?」
「はい。以前は今で言うメインステータスが5大ステータスと呼ばれており、今のメインとサブが混合されておりました。しかし5大ステータスの方しか興味がないから見やすいように分けてくれていう声が多かった為、今はメインとサブの2つに区分して記載する仕組みになっております」
タイガはメインステータスの方を開いた。すると話にあった通り、「攻撃」「防御」「魔力」「魔防」「速度」の5つの数値が表示された。
「どれどれ…って、え?」
「どうかしたんですか?」
「あの…タイガさんって本当に冒険者登録初めですか?」
「そうですけど」
「冬眠明けとはいえヒートベアーを倒したほどですからかなり稀有なエクストラスキルか強力な魔力と魔法の持ち主かと思っていたのですが、これは…すみません。少しついてきてもらえますか」
言われるままに大河達はマイナの後ろを歩いて階段を下り、ギルド地下にある
個室部屋へと通された。
(なんだろう…流れ的に良くない事ではないと分かっていても地下室って普通に怖いんだけど。昨日の事があるから尚更)
「本来であれば登録時の冒険者様をここにお招きすることはあまりないのですが、タイガさんのステータスが駆け出しにしてはかなり特殊な数値でしたので情報漏洩に繋がらぬよう移動していただきました。もう一度みせてもらえますか」
「失礼ですが私も拝見さていただいてよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
大河は再度冒険者カードからステータスを表示した。マイナは
「成る程、確かにこれはこの部屋に連れて来られるのも頷けますな」
「ええ。しかし本当に申請前とは思えない程数値が高いですね」
「そうなんですか?俺はよくわからないのですが」
「ええ、かなり特別ですね。初めたてでは破格な強さですね」
(なにそれ凄い幸運?今までのマイナス負債が+になったのだろうか?或いはあのズボラなクソ神の事だからまたミスってくれたかなんかだろう。今回だけはグッジョブ!)
「一体どういう環境で…いえ、こういった詮索を避けるべきですね。申し訳ありません」
「いえいえ」
「念の為サブの方も確認させてもらってよろしいでしょうか?」
「勿論構いません。お願いします」
続けて開示されたステータスの欄を興味深そうに読み進めていた彼女の表情が突然固まり不審に思い声をかけた」
「どうかされましたか?」
「いえ、その…運気の数値がマイナスだったものですから」
(え?何それ)
「何というか…凄く縁起悪いですね」
「ええ、まあそれもありますがなにぶん魔力以外のステータスですら最低でも数値0でして、ましてそれを通り越してのマイナスの方を見たのが初めてだったものですから」
「…こういうケースって珍しいんですかね」
「珍しい…というよりは前例がありませんね。少なくとも私の知る限りはどのギルドからもこのような前代未聞の数値の冒険者がいたという報告を耳にした記憶がございません」
「ワ、ワ~イ。ボクガハジメテナンダ」
「そ、そうですね。ある意味歴史的瞬間ですよ。ね、ね」
「あ、ああ。その通りです。新たな記録保持者としてタイガ殿の名前が記載されるかもしれませんぞ」
「ソッカー、ボクユウメイジンニナレルンダ。ヤッター」
ショックから片言しか喋らなくなった大河を何とかフォローしようとするマイナと彼女に話を振られて何とか合わそうとするエルド隊長。大河の周りからは何とも言えない悲壮感が漂っていた。
しかし大河はまだ知らなかった。このショックが序の口、前座に過ぎない事を。
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