63話 王都定例会議前2
「ていうか何処かの頭デッカチがチャチャ入れてきたせいで話逸れちまったがシュヴァルトのおっさんは?」
「そういえばそうですね。何処かの変質者様のせいですっかり忘れてしまっておりました」
「チッ!」
「それが…その、家庭の事情で出席できないとかなんとか」
「は?なんだそりゃ」
「私も詳しく話知らなくて、今朝方突然が入って『急で悪いんだが私の代わりに出席してくれ』と。『今の私には陛下に合わせる顔がない』とも仰られていたような…」
「よくわかりませんが本当に急ですな」
「流石に可哀そうでですね」
「だ、大丈夫です。確かに唐突な話で大変でしたけどそれよりこの場に私なんかがいるのが場違いと言いますか」
(お気持ちはひじょーによく分かるけど、代役でいらした貴女ですら場違いならそもそも本来この場にいる必要性0%にも関わらずこの場を立ち去ることを許されていない俺は何なんですかね?)
大河は返答が帰ってこないと承知しながらも心の中に浮かんだ疑問をぶつけずにはいられなかった。
「そんなことないって」
「で、ですがもっと私よりもっと相応しい人が来るべきだったと言いますか」
(俺もその意見には賛同する。少なくとも何の統括も士気もしてない俺なんかよりもっと価値のある人物にテーブルの椅子を提供してほしい。何なら誰でも名乗ってさえくれれば喜んでこの一億ジャンボ宝くじの当たりにも勝るとも劣らない陛下の隣という大抵の人にとっては嬉しいであろうその席をお譲りします)
「でもアロネちゃんより役職的に上ってシュヴァルトのオッサン除くとガンジだけっしょ」
「貴方は何をおっしゃってるんですか?エイト副司令官がおられるでしょう」
「あ、やべ。そうだったそうだった。今のナシで」
「まあ確かに粗暴というか礼儀とかに欠けてる無作法なガンジをこの場に呼ばなかったのは分かるけど、何でそもそもエイトさんに代わりを頼まずアロネちゃんを行かせたんやろう?」
「エイト殿は仕事で王都を離れておりましたかな?」
「そういうわけではないのですが、どうやらエイトさんの方も家庭の事情で出席できないとの事でして」
「は?エイトのおっさんもかよ。一体何があったんやろ」
「今までこのような事はありませんでしたから私にはわかりかねます」
「まあとりあえずアロネちゃんも座りなよ」
「でも私なんか…」
「アロネちゃんも王都警備隊の中地区の副隊長やってるんだからこの集まりに出席するのはそこまで場違いじゃないよ」
「そうですよ。未来の予行演習だと思って気楽に座っておられるだけで構いませんから」
「そうそうシュヴァルトやエルトのおっさんたちがポックリ逝っちゃったら結果的に繰り上げられてアロネちゃんが後釜に座ることになって嫌でも出席することに「フリーズ」ヒィヤー!まつ毛が、まつ毛が凍る!何すんだよ」
「まったくあなたと言う人は。軽薄なのは恰好だけにしてください。軽々しく縁起でもないことを口にするものではありませんよ」
「だからって何も顔面狙って打つ事無いだろうが!今日で2回目だぞ」
「貴方にはそれぐらいしなければ効果がないかと。それに頭も冷えて一石二鳥かと思いまして」
「んだとこの三十路「フリーズ」ヒィヤー!目が!目が―!」
「私はまだ29歳と6ヶ月です」
「殆ど変わらな…「フリーズ」
相対する2人がやり取りをしている間にも
「でも万が一、本当に万が一スポラパッチさんの言ったようにそうなったとしてもガンジさんがいますし、他の隊長さんなんかもしっかりしてますから私なんかが総司令官なんかになる事はないと思いますよ」
「いや、他の隊長さん方はまだしもガンジがなることこそまずないも思うよ」
「…共に仕事をする側が苦労する」
「ああ、あれだけ敬語が使えない上に口の悪くて品位がないと腕っぷしの実力はあっても命令系統を発信させる役に付かせるのは怖すぎしょ」
「仰っている事は確かですが、よくあなたの口からそのような発言ができたものですね」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味だろう」
「スポラパッチもガンジと近いとこあるしな」
「…無礼を体現している存在と言える」
「寧ろ無礼そのものとも言えます」
「いくらなんでも言い過ぎろう。お前らこそ無礼だろうが!」
「「「まあ、そう思わない事もない(です)けどスポラパッチ(さん)相手なら別に問題ないだろ(かと)」」」
「お前ら…」
怒りでわなわなと震えている中、アロネがおどおどした感じで呟き始めた。
「でも、現に隊長職には…」
「それはアロネちゃんの事を考えての事でしょうね」
「ぶっちゃけ自信なさ過ぎて遠慮しまくるアロネちゃんを副隊長にさ
せるために戦闘実績だけはあるガンジを苦肉の策として隊長職に付けただけっしょ」
「それに恐らく命令系は大体アロネさんが出してるんじゃないの?といいうより戦闘以外の仕事はほぼアロネさんが片付けているのでしょう。アレにそれらを処理する能力は微塵もないでしょうし」
「それに自信ないだろうけどもう代わりなんか呼べっこないんだから座りなよ」
「そもそも仮に召集かけても恐らく応じないでしょうしね、彼は」
「うぅ…そうですね」
退路のなくなった少女は渋々腰を下ろしながらいち早くお家に帰りたいと思い、表情から大体察した周りは心の中で同情しながら『ファイト』と届かないエールを送っていた。
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