65話 王都定例会議2

 あらゆる責任者達が各自の近況報告をしていく中、タイガにはそれらが何なのかすらわからず1人置いてきぼりを食らう状態が長時間続いていた。


 それによって本来参加する必要のない…というかそもそも普通同じテーブルに着くこと事態がおこがましい会議で自身が出席している事の有意性が感じられなかった大河あるが思いもよらぬ形で予想外の報告を聞く事になった。


「とりあえずは皆変わらず平和なようで何よりだな。それではそろそろ…」


「陛下、まだご報告したい事があるのですがよろしいでしょうか」


「なんだスティーブン」


「陛下より調査を頼まれていた例の爆破事件についてです」


「そうか、そういえばあの件はそなたに一任したのだったな。しかし調査を行えるようになったのは昨日からではなかったか?もう調査し終えたのか?」


「そうなのですが結果的に調査は終わる結果になったと申しますか。とりあえず現在の状況を報告すべきかと思いまして」


「うむ、よくわからぬがとりあえず話を聞くとしようか」


「皆さんもご存知の通り8日前に王都なんふ突如として起こった原因不明の謎の大爆発」


(へ〜、そんな事あったんだ。物騒だな…ん?まてよ)


 呑気に他人事のように思っていた大河だったが2つのワードが引っかかった。


(8日前。そして大爆発っていうと…ま、まさか…)


 8日前。それは正に大河がこの世界に転生された日。そして同時に己のスキルによってこの世界に隕石と言う名の巨石を落下させてしまった日でもある。そしてそれによる被害は落下地点のみならずその周辺地域にも多大な影響を与えていた。


「確かあの衝撃によって岩とか木々やら色々な物が壁際まで飛ばされていましたからね」


「そうでしたね。私も確認のために南区に足を運びましたがモンスターが外の壁にめり込んでるのを見たときは目を疑いましたよ」


「気象予報ではそういった情報は一切ありませんでしたし、ここしばらくまだ少しだけ肌寒い日が続きはするが特にこれといって変化のない穏やかな天候が続くと言われていましたからね。突然爆音が起きたあの日は心底驚きましたよ」


「恐らくあれは天災とかではなく何者かの仕業によるものかと思われますよ」


「あの大爆発が人の手によるものと?正直信じられないですな」


「ええ、私も信じられませんが魔力痕跡が発見されなかったので間違いないかと」


「もしや魔王軍が新たな兵器か何かの威力を試すためにこの王都近くを実験に使った可能性も」


 知らされた事実にそれぞれ困惑し室内が混乱状態になりかけたときスティーブンは大きく咳払いをして注目を集めた。


「皆様それぞれ思うところはおありでしょうがまだ報告すべきことが残っておりますので申し訳ありませんが議論するのは後ほどとし報告を続けさせていただきます。あの爆発によってパニックを起こしたり動きが活発になって暴れていた各地の全てのモンスターの施圧及び討伐に成功しました」


(俺のせいですみません)


「うむそれはご苦労だった。それで原因の方は解明したのか?」


「それが昨日爆破付近と思われる場所に調査に向かいましたが辺りは特にこれといった変わりはなかったです」


「本当ですか?あれだけの爆音でしたし、かなりの強風で壁にも所々問題が生じていたほどでしたのに」


「私もそう思い隅々まで調査しましたが爆破跡と思える場所の発見には至りませんでした。何より本来ならあの周辺は全て吹き飛んでいる筈だったのですが、周囲は平和そのもので全くそんな痕跡は見受けられませんでした」


「誰かが魔法で修繕したか或いは信じられない事ですが時を戻したか…」


「あの規模の爆破の被害を修復出来るとなると相当なレベルの使い手ですね」


「やはり魔王軍が自分たちの仕業と知られるように痕跡を消したとしか」


(別にそんな大物の仕業ではありません。未だ冒険者にすらなれていない極めて小物です)


「まあ、色々と謎は残るが辺りが無事であるならばとりあえずは良しとしよう。それで損害の方はどうなっている」


「その事なんですが、昨日修正工事を行っていたのですが何故か昨日破損していた部位が元通り直っておりました」


「誠ですか」


「ええ、深く破損していたわけではありませんがあまりに手を入れなければならない箇所が多く南壁だけでも最低1カ月はかかる見込みだったので連日連夜復旧作業に追われていたのですが…」


(俺とあのバカ神のせいですみません)


「タイガ殿大丈夫ですか?お加減が優れないように見受けられますが」


「ダ、ダイジョウブデス」


 肉体的には問題なかったが精神的には言葉にならない謎の罪悪感が報告の度にのしかかってき押し潰されそうになっていた。


「昨日も修繕の為に現場に行くとものの見事に所々の破損していた箇所がなくなっておりました。新品と言うよりは爆破前の状態に戻った感じで」


「信じられませんね」


「念のため被害が一番大きかった南壁だけでなく東から西までの全ての壁を詳細に調査する予定ですが、現在のところ手を加えなければならい程の損傷は見当たっておりません」


(本当に俺とあのバカ神のせいで余計な手間かけさてすみません)


「ああ、それと昨夜判明したことですがどうやらあの爆破による影響が広範囲に及んでいたようで四季山で冬眠明けのヒートベアーが発見された模様です」


「四季山という事は南西方面ですよね。あの付近でも明け方モンスターがあられたのですか」


「ええ、幸い死傷者は出ておりませんが今回の件を機に範囲を拡大して冬眠明けモンスターの出現がないかどうか確認していく方針です」


(本当に…ほんとうーに、お手間を取らせて申し訳ありません。あのバカ神に与えられたスキルであんなことにならなければここにいる皆さんはいつも通りに過ごせていたのに俺のせいで必要のない労働を強いられることになってしまいすみません)


 大河は周りには聞こえない心の中で冷や汗を垂らしながら謝罪し続けるのだった。

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