58話目 夜景と温泉にメイドと混浴?
大河は満点の星空を眺めながら温泉に浸かり、一日の疲れを落そうとしてしていた。が…
「いや~偶には3人で入浴するのも新鮮でいいねルルネ」
「そうですねリリカ。タイガさんもそう思われるでしょう?」
「………」
何故かメイドと混浴する事態に至っていた。
(どうしてこうなった!)
時は少し遡る。
大河は国王の計らいで今夜は城に客人として宿泊させてもらえる事となり、2人のメイドを世話役として付けてもらった。その後食事に誘われたが気まずい空気が継続しそうなことを危惧した大河は『色々あって目まぐるしい一日だったので疲れで食事が喉を通りそうにない』と断った。『ならば疲れと汗を流してくるといい』と国王に勧められ、ルルネとリリカに案内してもらい王城の最上階にある浴場へと足を運んだ。
来客用の更衣室で衣服を脱ぎ、いざ浴室の扉を開けると露天風呂のような状態で外の眺めがはっきりと視界に映し出された。体を洗い終えると、そのままお湯に体を沈ませた。
「ふ~、生き返るな~」
効能の高さも相まって今日の濃すぎる一日の疲れがどっとあふれてきた気がした。しかし上を見上げては綺麗な夜空の星々を、正面を向いては街頭などで照らされた夜の街並みを交互に眺めることのできる贅沢過ぎる眺めを堪能していた。しかしそんな束の間幸せにひびが入った。
「いや〜ここのお風呂は何度入っても飽きませんね」
「ええ、最上階から空を眺めたり眺めたり都市を一望出来る景色といい、引けを取らない効能の高さといい、文句の付け所がありませんね。タイガさんもそう思われるでしょう?」
「………」
それは突然だった。タイガがお湯に体全体を浸かり、効能の良さと夜空の景色に酔いしれていると突然隣からするはずのない、というかいてはならない人の声が聞こえてきたのだった。
「ああ、極楽極楽。やっぱりここのお湯を疲れが吹き飛びますねリリカ」
「そうですね。加えてこの夜特有の都市と夜景を一望できる特等席。これを毎日拝めるなんて本当に贅沢ですね。タイガさんもそう思いません?」
「あの、どこからツッコめばいいのかわからないのですが、何でここにおられるのですか?」
(というか物音一つ聞こえなかったのに隣に人がいるとかホラーでしかないのですが…)
「勿論汗を流し、一日の疲れを抜くためですが?」
「それは分かってます。僕が聞きたいのは何でよりによって男湯の方に入浴されているのかという事です」
「そんな!タイガ様には私たちが女性に見えているという事なのですか」
「私たちは正真正銘どこからどうみても男の子だというのに、あんまりなお言葉です」
「…さっきまでメイド服というどこからどう見ても女性としか思えない衣服を着用しておいてよくそんなに堂々と嘘がつけますね。それにあまりこういった発言はしたくありませんが、バスタオル越しでも分かるくらいに膨らんだ胸元とくびれた腰のソレは男性でないことを表していると思うのですが」
「人の事を見た目で判断するなんて最低です」
「そうです。もっと心使いとか内面で判断しよとか思わないのですか」
「肉体的に性別を判断するのに外見以外の判断材料なんて普通要らないと思うんですけど?」
「心は男の子かもしれないじゃないですか」
「少なくとも体が女性であることは間違いないのですが」
「それにしたって最低です」
「何がですか?」
「女性の胸元やお尻をいやらしい目でジロジロ見るなんて」
「そうです、タイガ様のエッチ~」
「一瞬にして男性設定が跡形もなく吹き飛びましたね!」
「男の人に裸体を見られるなんて…うぅ。もうお嫁にいけないわ」
「自分たちから入ってきておいてよくそんなセリフが出ます。それにバスタオル巻いているのでギリギリ全裸ではないと思いますよ」
「つまり全裸でなければ私たちの裸に価値はないと仰るのですか」
(ナニコレ、メンドクサイヨ~)
「どうやらこれくらいにした方がよさそうですね」
「?」
「申し訳ございません。先程までの言動はストレス発さ…ちょっとしたお遊びです」
「は?」
「あまりに真面目な返答をされるのでついついからかいたくなっただけです。乙女のよっとお茶目なジョークというやつです」
(なんてクソな遊びなんだ。という今
「ワー、オモシロクナーイ」
「タイガ様マイナス10ポイントです」
「そこは嘘でも『可愛いらしいジョークだね』と女性を褒める場面ですよ」
「そうですよ。大事な場面で女性側を立ててあげられないなんて女子力が足りませんよ」
「絶対に女子力とは関係ない気がするんですが。それに僕は男です」
(ていうかなんで俺の方が注意されてんの?)
「それでそんなジョークを言う為だけに男湯に入ったんですか?」
「そんなことの為に自ら肌を晒すような安っぽい女だと認識しているのですか」
「そんな風に女性を軽んじるのは感心しませんね」
「実際今俺の目の前で思いっきりさらけ出しているのですが?自ら女性としての価値観やら品位を暴落させている事気付いてほしいのですが」
「タイガ様にはバスタオル姿とはいえ私たちが裸を晒しているように見えるのですか?」
「寧ろ他に何があるというのですか?」
「裸に見せかけたボデーィペイントかもしれないじゃないですか」
「それならお湯で絵の具が完全に溶けてますね」
「水に触れても溶けない類の物を使用しております」
「え?そうなんですか」
「勿論…嘘でございます」
「またですか」
「或いは裸に見せかけた服かもしれないじゃないですか」
「へー、濡れている素肌まで再現しているなんてすごい服だな」
(最高の湯に浸かっているであろうに、この姉妹のせいで風呂に入る前より疲れてる気がする。主に精神が)
「………」
「………」
「……?」
「はあ~駄目ですねタイガ様。マイナス20ポイントです」
「殿方なら女性がツッコんでほしいタイミングでツッコミを入れて差し上げるのが道理ですよ」
(そんなもん分かるわけないだろう)
「というかなんですか、さっきから口にされているポイントって?」
「ああ、それはタイガ様に対する好感度でございます」
「私たちにとって有益な場合は+を、私たちにとって面白くない場合は-を与える仕組みとなっております」
(何で+は有益なのに対して-が面白くない場合なんだろうか?まあでも王女姉妹含め女性からの好感度なんてほぼマイナス同然みたいな状態だから別に気にすることは…)
「因みにこのままマイナスのままだと『私たちはタイガさんに襲われてしまいました』と口を滑らしてしまうかもしれません」
「口を滑らすっていうか捏造じゃないですかそれ。1ミリ足りともそんな事実は無いでしょうに」
「問題なのは事実かどうかではありません。私たちのようなか弱いメイドをタイガ様が襲ったかもしれないという疑惑を植え付けられることにあります」
「卑劣な性犯罪者とか弱い美人メイドの女性被害者。果たして第三者にはどちらの発現がより信憑性があるでしょうか?」
(ゲーム感覚でなんて恐ろしい事を言ってくるんだこのメイドたち!)
「それも勿論嘘…なんですよね?」
「………」
「………」
「何で2人ともニコニコ顔で無言を貫いているんですか。ここは『その通り嘘でございます』って言ってくれるところでしょうが」
「申し訳ございません。正直者の私はタイガ様の様に虚言を口にするなんて罪深い事は冗談でも出来かねます」
「私も『嘘は人を不幸にする』と教えられて育てられてたものですねでお遊びでも口にすることはできません。お許しを」
「これまで散々嘘八兆並べておいてよく図々しくそんな事口にできましたね!どの口がそんな事ほざけるんですか!」
「「この口ですか」」
「………」
メイド姉妹のあまりの言い分に開いた口が塞がらなかった。
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