57話 双子のメイド姉妹
「とりあえず話は終わりだが、とっくに日は落ちてもう遅いし今日は城に泊まっていってはどうかね?」
「いえ、そんな厄介になるわけには」
「そんなことは気にしなくていい。迷惑をかけてしまった事へのせめてもの詫びだと思ってくれ」
「ですがこんな立派な所に泊まらせてもらうなんて。やっぱり俺帰らせて…」
場違いな感じがして遠慮していた大河だったが、ふとある自問が脳裏に宿った。
(よくよく考えたら今の俺…帰れる家なくない?)
「その…やっぱりお言葉に甘えて今晩はお世話になります」
「そうかそうか。おーい、メイド長」
「お呼びでしょうか」
「リリカとルルネをここに連れて来てくれ」
「かしこまりました」
それから1分もしない内にメイド長が赤髪の右、青髪の左のサイドテールの双子と思われる瓜二つのメイドさんを王の間へと連れてきた。
「この城は広いし色々と勝っても分からず大変だろうから君の滞在中はこの…2人を君の世話役に付けようと思う」
(何だ今の変な間は?)
「何か困ったことがあったら何でも2人に聞いてくれ」
「その前にお2人の名前を教えて頂きたいのですが」
「…だそうだ。2人とも自己紹介なさい」
「拒否します」
「私たちを選別したのは陛下なのですから陛下の方で紹介なさってください」
(え?何これ)
「タイガ君は私にではなく君たちに尋ねているんだ」
「いえ、別に教えて頂けるのならどちらでも構わないのですが」
「だ、そうですよ陛下。タイガ様はどちらでもよいとのこと」
「もしかしてまたしても私たちの区別がつかぬゆえに紹介を避けようとされているわけではありませんよね?」
「な、何を思うしておるか。そのように私を愚弄するとは怪しからん奴らだな。今のは聞かなかったことにする故今すぐ…」
「それでしたらとっととそれぞれ名指しで紹介してくださいませ」
ルブノ国王は奥歯に物が挟まった様な表情を浮かべてから1分程メイド姉妹を交互に観察した後に沈黙を破った。
「………あ、ああ…えっと、その。右がリリカで左がルルネだ。彼女たちは双子の姉妹でこの城のメイドとして働いてもらっいる。わからない事があったら何でも尋ねるといい」
「違います
「
わざわざ時間をかけて回答したにも関わらずルブノの国王が外してしまった事により、微妙な空気となってしまった。そして国王はそれを誤魔化さんと突然笑い出した。
「じ、実は私も本当はそうであろうと思っていたのだ。はははははははは」
「というのは嘘です」
「は?」
「え?」
「本当は右がリリカで」
「左がルルネです」
(色々とややこしくてどっちがどっちかわからないのですが)
「それでは最初に私が言っていた通りではないか」
「はい。そうですが何か?」
「『何か?』ではないだろう。正解であるならばなぜわざわざ違うと嘘ついて否定したのだ」
「陛下があてずっぽで答えていないか確かめるためでございます。現に私たちが否定したとたんにコロッと意見を変更されました」
「仮に適当なお答えでなかったとしても私たちを正確に区別できていないのは確かです」
「そ、そういわれても…タイガ殿もぱっと見どちらがどちらか判別はつかぬであろう?」
いきなり話を振られたため、大河は咄嗟に言葉が出てこなかった。
「えっと………でも髪型は左右対称ですし、髪色や瞳の色なんかも違いませんか?」
「よく互いを真似て髪を染めたりカラーコンタクトにして入れ替わっているそうでな。故に外見では違いがあるように見えて入れ替わってるかどうかわからず全く区別がつかん」
(確かにそれじゃ見分けつかんわな)
「大丈夫です、私たちを愛しているなら見分けられます」
「別に私は愛してまではおらんのじゃが」
「そんな!陛下は私たちを大事に思っておられんかったのですか?」
(その2つはかなり似て非なる感情だと思うんですが)
「陛下が国民を愛さない冷徹な国王になってしまわれていたなんて。うぅ…」
「それとこれとでは意味が全く違うじゃろうが!」
(王女姉妹もめんどくさかったけど、このメイドさんたちも大概だな。どうしよう、早々にメイドチャンジしてほしいのですが)
「まあ陛下へのおちょ…ジョークはさて置き」
「ジョークにしては無駄に演技レベルが高いのう、毎度」
「ちゃんと私たちを見分ける方法はございますよ」
そう言われて大河は2人のメイド姉妹をじっと観察する。
「確かに双子なだけあってどちらがどちらかほとんど区別がつきませんね。しいて言うならリリカさんの方がルルネさんよりほんの僅かに髪が長いことくらいですかね」
大河が何となくで口にした瞬間、3人は口を閉ざし辺りはシーンと静まり返った。
(あれ、やっぱり勘違いだったか?)
「陛下、さっき出会ったばかりのタイガ様すら見分ける方法を見つけてしまわれましたよ」
「ああ、陛下はいつになったら私たちを見分けてくださる日が来るのでしょうか」
「なんか…すいません」
「いや、その…気にすることはないぞ」
大河は区別する方法を言い当てたにも関わらず、そのせいで間接的に陛下を追い込む形になってしまい、なんともいたたまれない気持ちになった。
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