55話 何故か国王から王女との結婚を勧められました
「改めると変な感じもするがとりあえず自己紹介をしておこう。私はルブノス・S・イルグラット。知っているとは思うがこの国の王だ」
「勿論存じております」
(すいません。つい数分前まで全く知りませんでした。って、あれ?)
大河は陛下の言葉に何か引っかかった。
『私はクラリス・クレイシー。そっちの可愛い美少女が妹のエルノア・クレイシーです』
(あいつらフルネームじゃなかった上に偽名じゃねーか!)
「どうかされたか?」
「いえ、なんでもありません。俺はイマムラタイガと申します」
「ふむ、タイガ殿。娘達の件に重ね名乗らない無礼を働き申し訳ない」
「いえ、こちらこそ」
(ここまで偉い人に真面目に頭下げられながら謝られるとこっちまで萎縮しちまうな)
「なるべく簡略化したくて早急に片付ける癖がついていてな。それに被害者の名前を聞くと一層罪悪感が強くなってしまうので悪いとは思いつつも耳にしないようにしてしまっていたのだ」
(それはそれでどうなのだろうか?)
「それはさて置き、とりわけ話があるのだが」
「はあ、何でしょうか」
(さっきは流したけどやっぱり娘の頬を引っ張ったのを怒っているのだるか?)
「その前に一つ聞きたいのだがタイガ君は今いくつなのかね?」
「今が14で今年15…です」
(咄嗟に前世の感覚通りに答えちゃったけど、どうなんだろう。そういや聞きそびれてたけど
「そうか今年で15か。やはり思った通り殆ど離れていないしこれなら大丈夫そうだな」
「?」
「タイガ君。実に急な申し出なのだが、私の娘エルノアと結婚してくれないか?」
「お断りします」
問われてから答えるまでの間に時間はほとんど存在しなかった。0.1秒にも満たない即返答。そこに思考はなかった。深い感情もなかった。只々考えるより先に本能がその問いに対して目の前に飛んできたナイフをよけるように、体が受け付けない事によって発現するアレルギー反応の様に思考するより先に拒絶するように答えていた。
「そ、そこまで即答して断らなくてもいいではないか」
「すいません」
仮にも
(外堀を埋められ始めたというか、何故か外堀の方から勝手に埋められに来てるんですが)
「あの子は童顔で幼さの残る顔立ちだが、父親の私から見ても贔屓目なしに美少女だ。少なくとも容姿の点だけでもそこまですぐ断られる相手じゃないはずだぞ」
「童顔とか幼さが残るというかじゃなくまさにまだ幼いと思われる
のですが」
(見た目もだけど精神年齢的な部分が主に。そして反比例するように態度はデカい。少なくとも俺には)
「しかしああ見えてあの子は今年15歳だ」
「え?」
(つうことは今のエルノアのは14歳!?あのちんちくりんが俺と同い年!?あの身長で?見た目完全に小学生…いや、下手したら小学生にすら見られないくらいの見た目なのに。まあ半比例して態度は大人だったけど)
「あの…失礼ですが桁が一つ多いのでは?」
「気持ちは分かるが残念ながら娘が14なのは事実だよ。それに一桁抜いた4歳は見た目的には流石に無理があるであろう」
「14もかなり無理があるように見受けられますがね」
(でも情緒というか精神年齢的なものは4歳児と同レベルに感じられたな)
「それでどうだろうか。さっきは唐突でよく考えずに返答してしまったと思うのだが、将来性を考えてもあの子はかなりの優良物件だと思うのだが娶ってもらえないだろうか?」
「…申し訳ありませんがやはりお断りさせていただきます」
正直唐突でなくとも大河の答えは決まっていたのだが、先程と同じように速攻で断りを入れてしまうと問題になりそうだと思った大河は少し間を置いた。そして返答に悩むふりをしてから申し訳なさそうな感じでやんわりと申し出を断った。
(冷静になって考えても、というか冷静考えれば考えるほど後にも先にもアレに振り回されて大変な人生を辿り、相手が王族であるが故に離婚したくても出来ず、溜まり続けるであろう精神的疲労が原因で過労死する未来が簡単に想像出来てしまうからな)
「理由をきかせてもらえるかのう」
「お…自分と
(王族がいるってことは貴族とかの高い地位も存在しているだろうし、立場的にいわゆる平民かそれ以下に該当する俺と一国の王女とでは全く釣り合いが取れていないの事実だしな)
「そんな事は気にしなくてよい。些細な問題だ」
「いえ、結構な問題だと思うのですが」
(寧ろ問題でないとこっちが困る)
「大丈夫だ、心配はいらない」
(何が大丈夫なのだろうか?)
「愛さえあればどうとでもなる」
「今日初めてお会いしたばかりのですが?」
「2人で愛を育むのに対して時間はそんなに重要じゃない」
「結構重要だともいますけど。それにそもそも王女と愛を育んだ覚えが微塵もないのですが?」
「よく思い返してみてくれ。きっと熱い時を過ごした時間があった筈だ」
(どこから湧いてくるのだろうか?その根拠のない確信めいた思いは)
「熱く喧嘩の様な言い合いになった記憶しかないのですが」
「喧嘩するほど仲が良いと言うし、君は娘達と相性ばっちりという事だ」
「こすり切れるぐらいにこじつけが強引に思えるのですが」
(どうしよう。まともな人かと思っていたのに段々言動が怪しくなってきたぞ。やはりあの2人の父親という事なのだろうか?)
会話を重ねる度に大河の国王への疑念が募っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます