46話 トンガリ兵士登場
「いたぞ!エルノア様とクラリス様だ。やっと発見した」
大河がエルノアにに首を絞められて襲われているところに街の方角からエルノア達の知人と思われる武装した赤髪の兵士がやってきた。
(よかった。この姉妹の知り合いみたいだな。これでようやく解放され…)
他者の介入に安堵しかけたが、大河はその男の髪形を目にした時、自分の目を疑った。それは顔2つ分くらいの長さがありそうな髪が縦長に逆立ち、先端がドリルや鉛筆の様に尖っている奇抜を通り越して見たことのない髪型だったからである、
(ま、まあこの状況から救ってくれるのなら誰でもいいし、見た目なんかどうでもいいか)
兵士の髪型に思うところはあったものの、兎に角助かりたかった大河は深く感がるのをやめた。
「エルノア様、クラリス様。ご無事でした…か…」
声が届くくらいの距離に近づき、赤髪兵士が2人の安否を確認しようとしたところ、エルノアが大河に掴みかかっているところを発見すると驚愕の表情をしながら驚いた様子で固まってしまった。
「き、き…」
(よくわからんがとにかくこの暴走娘を一刻も早く俺から引き剝がしてくれ)
「貴様!なに天下の往来で白昼堂々とエルノア様に抱き着いているんだ!なんて羨まし…じゃない。とっとと離れろ!そして今すぐ私とその場所をチェンジしろ」
(何を訳の分からん勘違いをしているんだこの男は。ちゃんと見なくても険悪な雰囲気的に全くそんな状況じゃないことぐらい理解できないのか?しかも発言が欲望丸出しじゃねーか。)
「ちゃんと見てから物を言え!それにそんな下らんこと言ってる暇があったらコイツをとっとと引き剥がしてくれ」
「な!言うに事欠いて貴様…エルノア様に抱き着いてるがくだらない事だと!自分が堪能しきってるからとぬけぬけとよくもそんな口を」
「ええい、違うわ!そこもだけど重要なのはそこじゃない!この子娘を…」
「はっ!そうか分かったぞ」
「よかった。ようやく自分の間違いを理解してくれ…」
「貴様エルノア様に暴行を加えようとしているんだな!」
「本当にどこに目を付けてんだよお前!首絞められて絶賛被害に遭っている最中なのはどう見ても俺だろうが!訳わかんない事言ってないでまず助けろ!」
「くそっ!エルノア様に抱き着きながら美少女特有の醸し出される甘い匂いをクンカクンカしてマシュマロの様な体の柔らかさと匂いを堪能し切ったから、今度はストレス発散の為にサンドバック代わりにする気だったのだろう。なんて奴だチクショウ。人間のクズめ」
(ええい!コイツも人の話を聞かない上に勝手に誤解して自分の世界に入り浸り被害妄想を信じられないくらいに拡大するタイプだな。どっちか一つだけでもキツイのに両方持ち合わせている奴とか…これなら誰も来なかった方がまだマシだ!)
「エルノア様に暴行を加えようとした罪、万事に値する。神に変わって俺が…」
「レッド、落ち着くのです」
レッドが騒いでいると後ろから同僚と思われる同じく鎧を着た青髪の兵士が後ろからやってきた。しかしその男もレッドと同じくらいの長さの同じ髪型だったので視界に入って早々に嫌な予感がして堪らなかった。
(まさかコイツまで変なこと言い始めるんじゃないだろうな?)
「何故止めるんだブルー!このクズはこれからエルノア様に危害を加えようとしている重罪人なんだぞ!これを看過しておくことなど…」
「一旦熱くなった頭を冷やして冷静になるのです。そしてよく見るのです、エルノア様の方を」
短期っぽいレッドと対照的に落ち着いた雰囲気で冷静にレッドを諭そうとするブルーを見て大河は希望が湧いた。
(おお!誤解に気付いて間違いに気付かせようとするなんて…こっちの方は赤髪と違ってまともそう…)
「エルノア様の右頬にはぶたれたような跡が残っています」
「「えっ?」」
レッドのみならず大河も意表を突かれてつい反応してしまいながら、釣られるようにブルーの指さす方向へと視線を移す。確かに指摘通りエルノアの左横顔は赤く腫れていた。
(そういえばさっきの不良かなんかひっぱたかれてたっけ?)
今までの激しい口論のせいで大河はすっかり忘れており、それを目にしたレッドは状況を処理しきれず混乱した。
「な、何故エルノア様は怪我されているんだ…はっ!」
「どうやら気付けたみたいだな。恐らくあの頬の跡はあの男によってつけられたに違いない」
「えっ?」
「それはつまりエルノア様に抱き着…痴漢行為をする前に暴力を振るって楽しみ、その後如何わしいことをしてエルノア様を辱めた後にまたしても暴行を加えよとしていたってことだよな」
「ああ、その通りだ。断罪しなければいけないクズ野郎というところは同じだがより深い罪を重ねた汚物だという事は理解して粛清せねばならない」
「そうだな。クズとゴミクズじゃ全然違うもんな」
(どこがそんなに違うのだろうか?文字数と多少の嫌悪の強弱の違いしか感じられないのだが)
これまた現れてしまった特殊な感性の持ち主に大河は不安を抱かずにはいられなかった。
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