34話 タイガは逃走に失敗しました
(何で1日の内に連続でこんなヤバイ奴らと鉢合わせてしまったんですかね?アレですか?1週間理不尽に苛まれなかったからその分ですかね?確かに人に関して恵まれてましたけど、その間に使用しまくったスキルは本当にろくな結果出なかったのでお相子だとは思うのですが?)
大河は誰にでもなく只々心の中で吐き出すように愚痴っていた。
(この2人はあれだ…ヘンテコヘッドズ変態コンビ《スコーン、モヒ》と系統は違うが同じ人種だ。これ以上このドM姉妹に関わっていては良くないことが起こる可能性がある。というか間違いなく起こる予感しかしない。とにかく一早くこの場を立ち去ろう)
大河は逃げるためにそっと静かに足を踏み出して逃走しようとするも素早く察知したエルノアによって肩を掴まれ阻まれてしまう。
「おい貴様、黙ってどこに行こうとしている」
「いや~俺のせいでお2人に迷惑かけてしまったみたいなんでいわれた通り責任取るために逃げて行った奴らを捕まえに行こうかと」
「それは反省していてとても殊勝な行いだと言いたいところだが、何故踏み出している貴様の足の向きが逃げて行った連中の真逆を向いているのだ」
(く!ここから逃れたいあまり焦っちまった)
「そうでしたね、逃げて行ったのはそっちでしたね。すいません、うっかりうっかり」
「まて」
「何ですか?」
「貴様このまま逃亡しようとか思っていないだろうな?」
「まっさか~そんな事思っているはずないじゃないですか」
大河がとぼけた感じで誤魔化そうとするとエルノアは大河の顔をじっと覗き込んできた。
「いや貴様は間違いなく嘘をついている」
「何でそんなにハッキリ断言できるんですかね?」
「貴様の目が黒い。それはつまり嘘をついてるからだ」
「は?いや、俺の目は元々こういう色なんだけど…」
(何で目の色だけで嘘つき呼ばわりされないといけないんですかね?)
「いや、貴様のそれは悪さを重ねたから黒いのであろう?まるで魚の様に濁りに濁りきった色をしているぞ」
(何でこの子こんなにナチュラルに悪口言えるの?驚く事に悪気あってとかじゃなく素で言ってるから流石にグサグサくるんですが…)
「いけませんよ。罪を償うふりをして逃走しようなど考えてしまうのはとても罪深い事なのだと自覚しなればなりませんよ。私の言っていることは分かりますね?」
(どうしよう…何言ってんのかわかんないんだけど。何よりこいつらの訴える罪が一番理解も納得出来ないんだけど)
「はやとちりで誤解しないで下さいよ。お2人の邪魔をしてしまった罪は重々自覚していますし、その罪を一刻も晴らそうと急ぎすぎるあまり方向感覚を間違ってしまっただけですよ。ですからそんなに深く疑うのはやめてくださいよ」
「もう結構いい歳に見えるのにそれで方角とは真逆の方を目指して歩もうとするほどの方向音痴とはな。貴様は年齢一桁のお子様化か?はあ~感性だけでなく方向感覚まで捻じ曲がっているとは本当に残念な奴だな貴様」
「いや~この年になってお恥ずかしいですね」
(今すぐにでもこのクソ生意気幼女の頭をカチ割ってやりたい)
大河はなるべく早くここを立ち去るために穏便に済ませられるよう反省してますアピールをキレそうになる感情を必死に押し殺していた。
「それでは俺はこれから連中を追いかけて…」
「待ってください」
突然引き留められた。
「どうかしましたか」
「エルノアの言った通り今の目が濁るほど人間として汚れてしまっている貴女を野放しにしてしまうのは危険です。きっとまた邪な心が芽生えて間違った道に進むかもしれません。いえ、きっとそうなります」
(どうしよう…この清楚モドキの頭も勝ち割ってしまいたい)
「そうならないためにもまずは逃亡した者達を追ってもらうよりもこの人の歪んだ価値観を正さねばなりません」
(そろそろ俺の怒りのパラメーターがカンストしそう)
「姉上、どうやってこの男の腐った人間性を取り除くおつもりなのですか?」
「私がこの青年を調きょ…洗脳してこの人の邪悪を打ち払い私の言うことに従うようにして見せます」
(今この人調教って言いかけたぞ。しかも言い直した言葉のチョイスがもっと酷くて言い直した必要性をまるで感じないのだが。建前だとしても、もっとましなセリフはなかったんですかね?)
「まあとりあえず貴方には私の素晴らしい体験談を特別に聞かせてあげましょう。感謝してくださいね」
(駄目だ。有り難いと思う気持ちも要素も見つからないし溢れてこない。しかも代わりと言わんばかりに全身からアレルギ―みたいな拒絶反応をビンビン感じるのですが…)
「あれは私や人類がこの世に生を受ける前の事…」
「ちょい待った。さっき私の体験談をとか言ってたのに何であんたどころか人類誕生より前の話をしようとしてんだよ。なんの話で俺を諭そうとしてんだよ?お前の生前が恐竜とかそういった話でも始めようってのか」
「そんなわけないではないですか。愚かな妄想はほどほどにしてください」
「なら意味不明な文脈から始めるのはやめていただきたいですね」
「今のテストです。私の話に貴方がきちん耳を傾けているのかの」
「そうかい」
「そし貴方の耳が正常に機能してるかの確認です」
「…そうかい」
(マジで要らんお世話だ)
大河はクラリスの話が始める前からヒートベアーとの戦闘後よりも疲労し、最後まで持つのかこれから聞くことになる恐らく普通でないであろう体験談を耳にして心配になった。
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