31話 強力な武器?をゲットした
突然フライパンという存在しなかった物体が現れた事により警戒したヒートベアーは一瞬動きが止まり、大河はフライパンをひっくり返したりして隅から隅までじっくりと観察した。
「へ―お手玉の時も思ったけどあっちの世界の物と全く同じ物に見えるな。こっちの世界でもそこら辺の器具の違いはないのか?まあとりあえずはこれで武器はゲットだな。はっはっはっはっ…じゃなーい!何でこんな状態で出てくるのが剣とか銃とかじゃなくフライパンなんだよ!」
大河は手に入れて早々にフライパンを投げ捨てたい衝動に駆られた。
(確かにどこからか俺めがけて即死級の物が投げ込まれるよりはましだよマシですけど、このフライパンで俺にどうしろと?あれかあれですか?このフライパンで戦えと?これであのクマさんの頭をはたいて混乱させろとでも?無理に決まってっんだろ!)
大河がまたしもて役に立たない物の出現に焦り混乱しているといつの間にかヒートベアーの攻撃がすぐそこまで迫ってきていた。大河はよけられないとわかりつつも本能から熊の攻撃をかわそうとのけぞろうとした。
すると驚くべきことに間に合わないと思われた一撃をかわし、文字通り鉛ように重い足は動かせるようになり咄嗟に退いた。そしてヒートベアーの爪は空を切っていた。
大河も攻撃を放ったヒートベアーも間違いなく当たると思っていただけに何が起きたのか理解できず少しの間放心状態となって硬直していた。
(え?何で避けられたんだ?間違いなく直撃するはずだったのに。スキル発動後に素早さが上がるみたいな特殊効果でも…ないな、うん。今まで一度もそんなことなかったしそれはない。熊が疲れてきて攻撃が遅くなったは…)
大河が考え込んでいる間に襲いかかってきたヒートベアーの攻撃を再度横に飛んで回避した。
(疲労によって攻撃速度が低下した可能性も完全に消えたな。思いっきり元気で寧ろさっきより早いし。となると残っているは可能性としてはただ一つ。このただのフライパンだと思っていた物が実は魔力を帯びた素早さアップ機能を備えた特別な魔道具だったということだ!)
先程と違いまさにお宝を手に入れることが出来た大河は新品のオモチャを手にした子供の様なキラキラした眼差しでフライパンを眺めた。
(凄いな。我ながらよくこんな上物引き当てられたな。最近の散々な不運のおつりが返ってきたのだろうか?それともこれからさらに良くないことが起こる前触れだろうか。まあよくわからないけど起死回生のアイテムを手に入れることができたのには違いない)
大河が感激しているとヒートベアーが距離を詰めて腕を振り上げてきた。
(もしからしたら他にも備わってるかもしれないな。試してみるか)
大河はヒートベアーの真横に踏み出し攻撃を回避すると同時にフライパンをカウンターの要領でヒートベアーの顔面に叩きつけた。轟音を響かせ直撃したフライパンによってヒートベアーは万歳するような方で前のめりに倒れた。大河は見事撃退に成功した。
(おそらくモンスターであっただろうこのクマさんを一撃で倒せたあたり、多分パワーアップ効果まで付いていたのか。なんて素晴らしいんだ!
どう考えても本来振り回したり敵の頭部にぶつける戦闘道具じゃないし、使ってるとこを他人見られたら色々言われそうだけど、とりあえずそこは目を瞑ろう。異世界生活始めて早くも強力武器を手にできたのだから!)
大河が感激しているとボヘムが感謝を述べた。
「本当にありがとう。君がいなかったら私はどうなっていたことか」
「まあ不運にもモンスターと遭遇してしまった不幸がチャラになったと思えばいいんじゃないですかね」
(俺も結果的に色々な意味で
「とりあえず一刻も早く下山しましょう。このまま留まっておくと何が起こるかわかりませんから」
「そうじゃのう。もう山にモンスターはいないとは思うが念の為に山を下った方がいいじゃろうな。その前に」
ボヘムは動かなくなったヒートベアーのもとに駆け寄り手を当てると小さい声で何かを呟いた。するとはボヘムの手に現れたワープホールの中に吸い込まれるようにヒートベアーは忽然と姿を消した。
「え?今のって…」
「収納魔法じゃよ。直接目にするのは初めてかの?」
「はい」
「知ってるとは思うが収納魔法は討伐・捕獲したモンスターや持ち運びたい大きな道具なんかを別空間に収納できる便利な魔法じゃ。冒険者を続けていく上でパーティー内には最低1人は必須と言われとるものじゃからタイガ君もこれから冒険者をやっていくのならこのスキルを己で習得するか会得している者をパーティーに入れるたほうがええぞ。まあわざわざ言われんでも心得ておるじゃろうがの」
「いえいえ知識を再確認することが出来ましたし、より深く知ることが出来ましたのでとても参考になりました」
(ボヘムさん嘘をついてすいません。参考になったのは本当ですが、心得てるどころかそもそも認識すらしてませんでした)
ボヘムの口ぶりから察するに冒険者になるのならば知っていて当然と言わんばかりの口ぶりに知りませんでした言うことができなかたった。大河が罪悪感を感じている中ボヘムは大河が運んでいたリュクをヒートベアーと同じく収納魔法で吸い込んだ。
「それじゃそろそろ移動しようか」
「はい」
(アクジテントはあったけどなんとか依頼をこなせたな。だけどもう夕方になってしまった。宿とか見つかるかな?)
大河は低くなっていく太陽を眺めながら残されている今日の時間の少なさに不安を抱くのだった。
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