21話 薄すぎる友情

「さあ、弁解があるのならばどうぞどうぞご自由に」


 モヒ・カーンはスコーンの方を見て電流を食らって同じような結末はたどりたくないと考えたが、正直に話したところでどう考えてもお説教回避不可のイベント直行するのは目に見えていたので黙秘を決め込もうと考えていた。


 しかし隣にいる父親からの今までにない恐ろしい眼力と早く喋れと言う無言の圧力にじわりじわりと追い詰められていき耐えきれなくなったモヒ・カーンは父親からの圧力から逃れたくて口を開いてしまった。


「騙されないでください。仮にこいつがウソビリくんに仕掛けをしてなかったんだとしたらこれは単純に故障しているのです。でなければ正直者の私たちにウソビリくんが作動するわけイギギギギ!」


大河は今のモヒ・カーンの発言によってある事に気付いた。


(フランスパンが弁明してた時、俺がウソビリくんに細工したと公言している際には電流が流れなかったから単に発動のタイミングが少し遅いだけなのかと思っていたが、多分違うな。どうやら2人共俺が何らかの形で細工した本気で思っているらしいな。どうやったらそんなありえない妄想を本気に思えるのやら)


 大河は二重の意味で呆れながら痺れてるモヒ・カーンを眺めていた。電流が流れ終わるとモヒパパは呆れながらモヒ・カーンに取り付けられたベルトを自分に巻きなおし、スコーンパパと同じ発言を行った。


「お前は私の息子だ」


 やはりウソビリくんは沈黙のままで、息子への冷たい視線を送りながら再びモヒ・カーンにベルトを付け直す。


「それで、これが本当に故障と言う事であればお前とスコーン君は私たちの息子ではなかった。或いは何らかの方法で息子の姿をした別人と言うことになってしまうのだが。つまりお前は自分が偽物だとそう言いたいのか?」


「………」


 今すぐにでも違うと反論したかったが反論したらしたでこれまで嘘をついてきたことに対しての質問攻めになるのは目に見えていたので何もモヒ・カーン言えなかった。

 それから口を噤んでしまい何も喋らなく なってしまったので仕方なく話を切り替えることにした


「だんまりでは一向に話が進まん。今しがた嘘をついた件については不問にしてやるから両者とも正直に答えろ。結局お前たちは何故こんな事をやっていたんだ」


 スコーンとモヒ・カーンは俯き気味だった顔を上げて咄嗟に互いを見合った。その1秒にも満たない0コンマ何秒かの間に彼らのゲス脳が両者とも同じ結論を導き出していた。


((こうなったら、こいつうまくを囮にして俺だけでも助からねば))


 この時点で彼らのほぼ利害によって成り立っていた仲間意識といったものは完全に崩壊し、己が生き残る為にどう上手く擦りつけるかだけを考えていた。そして互いに相手の方を指差しながら同じ台詞を吐き出した。


「「実はこいつに脅されて仕方なくアバババババババ!き、貴様!裏切って自分の罪を無実の友にイギギギギギギギ!擦り付けようなどは、恥ずかしいとは思わないのか?なんだ!お前と違って俺は清廉潔白ウギャーーーー!」」


 お互い同じ嘘を同時に付き続けるため、両者とも数秒毎に同じように電流を食らい続けていた。


「な、なんて奴だ!電流くらい続けてるってことはここまでほとんど正直に本当の事を言ってないってことじゃないか。お前どれだけ心と言動が汚れてるんだよ!」


「同じように感電してんだからお前も人のこと言えないだろう!」


「いいや、俺の心はお前なんかと違って真っ白なんだオギャーーー!」


「ほ〜れみたことか。やっぱりお前の心の方が汚れているじゃないか。お前のドブのように汚れ切った心と聖水のように清く清らかな俺の心を一緒にするんじゃアババババババババ!」


「そんなんでよく清く清らかなんて言葉を口にできたものだな。やっぱりお前なんかより俺の方が誠実な心の持ち主なんだアアアアアアア!」


「誠実と言う言葉の意味をちゃんと理解してから発言するんだな。全く分不相応なことをよくそんな恥ずかしげもなく言えるものだ。俺にはとても真似できなイイイイイイイ!」


 共にけなし会うことをやめない両者の姿はまるで泥沼の離婚調停を見せられているような気分にさせられた。


(分かってたことだけどこいつらの友情とやら薄すぎるだろう。まるで味噌の入ってない味噌汁並みに関係が薄すぎる。親友だの相棒だの言ってたくせに互いを庇おうとする様子が欠片も感じられない)


 大河はある種の復讐を果たすことをできたと言えばできたのだが、その果てに見ている光景があまりに醜すぎて苦笑いが止まらなかった。人を見かけだけで判断してはいけないがこの手の輩には特に気を付けなければと改めて思うと同時にこんな上辺の名ばかりの友達は絶対いらないと思うのだった。

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