28話 実験
戦況は戦力不足過ぎる上にマトモに逃げる事すら出来そうにない大河たちの方が圧倒的に不利な状況にも関わらず大河は笑っていた。しかしそれは隕石落下の際の死にかけているのに無邪気に笑う奇妙な笑みではなく、諦めてしまった時とは違い今回は正気ではあるのに不敵にそして少し意地悪そうな表情を浮かべていた。
(特別お前に恨みはな…くもないな。今現在、下山の邪魔された上に襲われたわけだしな。まあ仕方ないよな襲ってきたのはそっちの方だもんな。しょうがないよな?)
「すまないボヘムさん、これから少し過激なダンスをすることになるけど許してくれ」
大河は発言の意味がわからず首を傾げるボヘムを背負った後、ヒートベアーに少しだけ近づいてから片手を前に出して指を振った。
『ユニークスキル:ゆびをふる発動
タイガは指を振って【サンダーボルト】
を選択した
発動失敗:タイガはステーキを手に入れた』
「美味しそうだな。そういえば今日は昼ご飯食べれてなかったから有難いな。戦の前じゃないけど腹ごしらえには嬉しい品だなあははははは…じゃないー!」
(戦闘中でなければ当たりの部類になるのだが残念ながら今回はハズレのアタリ…いや、今はハズレのハズレかな?まあ食べるけど)
大河あっという間をステーキをたいらげた。
(我ながら何で戦闘中に敵の眼前でステーキ食ってんだろ俺)
大河が呑気な事を考えているとヒートベアーは再度攻撃を繰り出して来た。
「ガァー!(俺にも肉をよこせ!)」
大河は後ろに避けてから再び使用した。
『ユニークスキル:ゆびをふる発動
タイガは指を振って【サンダーボルト】
を選択した
発動失敗:タイガはオロナミンCを手に入れた』
「わ〜これでレモン11個分もの成分を補給出来て元気ハツラツだねやった!…だから違ーう!」
(本当にいい加減危機的状況下でボケたような効果発揮すんのやめろ!今は微塵もお呼びじゃないだよ!)
大河の態度に苛立ったヒートベアーが強く吠えた。
「グォー!(てめえ図々しく俺様の前で肉を頬張った後に更にお茶しようってのか?馬鹿にすんのも大概にしろ!)」
(今回も何言ってんのかわからないけど凄い怒られてる気がするな。側から見たら俺がふざけているように見えるからキレてるのかもな。俺はいたって大真面目なんだけどな)
大河は目の前の敵であるヒートベアーにほんの僅かではあるが申し訳ない気持ちになった。
(昨日まで散々腐るほど出てたんだからそろそろアレ系のヤツ出てくれ!)
大河は三度スキルを使用した。
『ユニークスキル:ゆびをふる発動
タイガは指を振って【サンダーボルト】
を選択した
発動失敗:タイガの後方から…』
ウィンドーに文字が表示され発動失敗の後
に表示された後方の文字を読み取った瞬間に自身に対して何が飛んでくる事を察知したタイガはすぐさま真横に飛んだ。そして…
『ドカーーン!』
その直後に大河の背後から彼に対して放たれていた手榴弾がヒートベアーに直撃した。
「クゥー(うう、一体何が…)」
そこまで大きな爆発ではなかったが熊は大きく後退しうめき声をあげた。大河は多少のダメージを与えられたことを確認した。
(ようやく結果的に成功したな。最近俺に対して危険物ばっかり飛んくるやつばかり引いてたからてっきり初手で引けると思ってただけ連続で外して少し焦ったけど許容範囲だな。それにしても初めて試した割には思った以上に上手くいったな。
クソ過ぎるスキルが更に手に負えないくらい悪化したと思っていたがどんなものも使いようだな。まあ本来こんな用途のため作られたものでは間違いなくないだろうけど)
大河は焼け野原にしてしまったお婆さんの畑を元に戻すためにスキルを使い続けていた時に気付いたことがあった。最初にスキルを使ったと頃はお手玉やらバットやら正直空からの落下中ではまるで役に立たないものばかり出てはいたが少なくとも砲丸やら包丁やらが飛んでくるのに比べればマシであり、何もない状態から何かが増える状況を考えると一応プラスと言えなくもなかった。
しかし最近だと自分に不利になるものばかりを引き当てており、以前のようなくだらなくも自分に害のないものの確率がだいぶ減ってきているように感じた。実際空から雨でなく槍やら剣やらの危険物が飛んでくることはそんなに珍しくなかった。
そしてそんなことが多々あったことによりそこから更に2つの事に気が付いた。
1つ目はスキルによって起こる現象の範囲が自分の周辺であるという事。まだ詳しく試せていなかったがおそらくこのスキルは特に自身で指定しない限りは自分の知らない場所でその効力を発揮することはまずないであろうことを何回も繰り返したにもかかわらずそのすべてにおいて発動の成功、失敗に関わらず大河の周辺でしか起きていないという事実から確信していた。
そしてもう一つが大河に降りかかる不幸な類のものはほぼ大河の前方か後方、真上と左右からしか来ず、斜めの角度からは来る事はないということだった。きっとこれはあの神のせめてもの優しさ…なんてものではなく、おそらくめんどくさくて色々調整やらなんやらしてない結果だろうと思い、大河は初めてあの神の堕落していてくれてよかった思った。
そして大河はこのスキル失敗によって自分に飛んでくることの多い危険物とそれらがあの無駄と思えた表示ウィンドーで『先読みでき、近い距離で回避して当てられれば攻撃手段になるのでは?』と踏んで、結果成功したのだった。
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