17話 クズの勧誘

 大河がスコーンの発言に呆れているとモヒ・カーンも同じく呟いた。


「俺もだ。聴取書をどう書くかに捉われて俺も見落としていた」


「聴取書?」


(そういえば途中途中ノートに何か書いていたな。どれどれ)


 大河は体を前に出してモヒ・カーンが書き記していたノートに目を通した。文字は異世界語のようだったがこの部分はちゃんと仕事されていたのか問題なく解読することができたので読み始めた。


「『罪人は不法侵入をした自分の罪を一向に認めようとせず抵抗を続ける。更に隊長に【俺を開放しないとどうなるかわかってるんだろうな?】脅したり、質問に対して明らかな虚偽の発言をしたりして悔い改めることなく罪を重ねる。更に質問の最中に隠し持っていた凶器で危害を加えようとしてきた。何とか取り押さえることに成功するもかなり危険人物である事が再確認出来た』っと。て、おい!」


(俺がいつ危害を加えようとしたんだよ。寧ろウソ発見器によって意図的に危害を加えられそうになったのはこっちなのだんですけど?。ほ、本当の事が一つも記載されていないのだが…


デタラメな捏造もいいとこ…いや、嘘しか並んでいない時点で捏造としても下の下だろ。もうちょっと真実味を織り交ぜるなりして工夫出来ないのかよ?まったく、どうなってんだこの世界の警備隊とやらは。まさか他の街の警備隊の隊長達もこの2人みたいなロクデナシじゃないだろうな)


大河が頭を抱えてこの世界の警備隊がスコーンとモヒ・カーンの様な輩と同類でない事を祈っているとスコーンが大河の肩に手を置き誘ってきた。


「なあ、お前も俺達の仲間にならないか」


「は?」


「お前も俺らと一緒に悪を極めようぜ」


(なんで悪事に手を染める行為に勧誘してるのにこんな純真無垢みたいなキラキラした表情で誘えるのだろうか?)


「そうだぜ。力を合わせて他人から金を搾り取るのは最高に気持ちいいんだぜ。お前も俺たちと協力して愚民どもから搾れるだけ搾り取ってやろうぜ」


(このモヒカンヘッドもなんでクズ行為をスポーツ漫画みたいに爽やかな顔で語れるのだろうか?)


「その恐ろしい頭脳で数々の犯罪行為をしてきたんだろう?俺らの仲間になるなら表向き無実の人間ってことで通してやるし、お前にとってもいい話だろう?きっと俺達最高のチームになれるぜ」


(ど、どこからツッコんでいいのかわかんねーけど…とりあえず今すぐこいつらぶっ飛ばしたい)



「断る」


「な、何故だ!なぜ断るんだ!」


「寧ろ何でそこまで断らないと思い込んでいるんだよ」


「俺らと手を組めば楽にお金が手に入るんだぞ!」


(お金は手に入るかもしれないがそれと引き換えに人として致命的なものを間違いなく失うだろうからな。そうでなくてもこいつらといるとろくな事にならないのがはっきりしてるからな)


「お前らと同じレベルに落ちる気はない」


「ひ、酷い。酷いぞ!せっかく人が親切心で誘ってやってるというのに。人の行為を簡単に踏みにじるだなんて最低な行為だと思わないのか!」


「そうだそうだ!貴様には他人を思いやる心ってものがないのか!」


 2人は涙ながらに訴え、その姿だけを見ると大河が非道な行いをしたと思われても仕方ないくらいにスコーンとモヒ・カーンは切実そうに訴えるが当然大河には微塵も響かない。


「お前らにだけはそのセリフ言われたかない」


(つくづく開いた口がふさがらなくなるような発言をポンポン口にするなこの二人は。冤罪吹っかけて金を巻き上げようとしていた奴らがよくぬけぬけと他人を思う心がどうのこうのとほざけるものだな。ブーメランが深々と自身に突き刺さっていることに気付け)


「こうなったら最終手段だ。スコーンあの部屋を使うぞ」


「そうか、まだあの部屋が残されていたな。先日リニューアルしたばかりのあの部屋が早くもお披露目ということだ。あの部屋ならばこの犯罪者も心を改め俺たちの仲間になりたいと懇願するはずだ。いひっひっひっひ」


(犯罪者みたいじゃなくもはや完全に犯罪者扱いになったな。俺の罪状を問われたら一体なんて答えるのかねこの2人は?というかこいつらの今の理論だと犯罪者が心を改めたら悪事に手を染めるてことになるよな。悪者が改心したのに犯罪行為に加担するとかこれいかに)


 大河はこの2人と会話を続けていると言葉の概念が根本から崩れ去っていくような感じに頭を悩ませながら部屋から出されて歩き続けた。さっきまでの部屋よりもさらに奥の方へと進んでいき、行き止まりの部へとたどり着いた。


「喜べ、お前で丁度87人目だ」


(どこに喜ぶ要素があるんですかね?それとどう考えても数字的にちょうどと思える節が見当たらない。それともこの世界では中途半端な事を丁度とでもいうですかね?まあ恐らくこいつらの使い方がおかしいだけだとは思うが)


 部屋の鍵が開けられて中へと入れさせられると想像を超えた恐ろしい光景を目にした。


 


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