旅行記

東北のド田舎に住む私は、仕事と一人暮らしの疲れが相まって心が疲れて少しの休暇を頂きました。



極寒の地で壁の薄いボロアパートに住んでいる私にとって玄関は脱衣場。ドア1枚向こうに心身と雪が降っている中、全裸で風呂場を出入りすると心臓が掴まれるような思いでした。



ただの休みでなく心の疲れを癒す休み。何をすれば良いのか分からず、実家に帰ってネットサーフィンをしていると運命のチケット販売アプリと出会いました。そこには大好きなタレントの観劇チケットが1枚だけ余っているという情報。今まで東北に住んでいることもあって、いわゆる『推し活』『追っかけ』とは無縁でした。



このチケットは、別の人が購入したものの行けなくなったためキャンセルしたもの。1度好きなタレントに会いに東京まで行くのも悪くないかな。



劇の日付を確認すると、なんと明後日。慌ててカードで購入して、劇場へのルートを検索。



田舎者が東京に行くのは物凄く沢山のハードルが。



まず新幹線の駅が隣町な上にバスは一時間に一本。新幹線で上野に降りたら、山手線で池袋に行くことになりますが、山手線は概念しか知りません。



しかも山手線の名前が出てこなくて家族全員で「あの東京の」「有名な」と会議が始まりました。



調べて始めて、外回りと内回りがあること、乗り遅れたら永遠にグルグル同じ線路を回り続けることを理解。



次の日に新幹線の駅にあるみどりの窓口で新幹線の往復チケットを購入。なぜか4枚くらい来るチケット。うち2枚は用途不明。窓口に乗り出すように質問を繰り返す姿はきっと不審だったでしょう。



用途不明なチケットの内1枚は山手線の線路図、もう1枚は一日タダで山手線を乗り回せるチケットでした。



え? ただで山手線に乗れる!?



タダという言葉は大好きです。小躍りしながら家に帰り、荷造り。日帰りのため、小さなトートバックで十分です。



チケットと万札の入った長財布に、スマホ、花粉症のためちり紙。



そして観劇をしたことが無い私の独自な判断で、もしも遠くて何も見えなかったときのための百均の望遠鏡。



もしも席がスピーカーに近くて音が大きかった時のための、音漏れする耳栓。



もしも劇場が寒かったときのためのブランケットまで。



これらを全部入れたら、小さなトートバッグにピッタリ収まりました。正にシンデレラフィット。



次の日は観劇当日。新幹線で上野に降りたら、天井から下がる看板に倣って山手線の改札へ。途中に見つけたみどりの窓口は光って見えました。たくさん質問すれば丁寧に答えてくれる窓口のお姉さん。しかし顔は「何わかりきったこと聞いてるんだこいつ?」という表情でした。



山手線の外回りと内回りを間違えれば、乗る時間が長くなって観劇に間に合いません。よく確認して乗り込むと驚き。電車にはトイレが付いているんですね!



よく都会で電車が何時間も止まったニュースを見る度に、催したらどうするんだろうと心配していましたがトイレが付いていたとは。



山手線で降りて他の電車に乗り継ぎ、池袋の町をGoogleマップで劇場へ。しかし到着したものの入口がない。右側は通行止めの工事コーン、左は劇場に隣接するデパートの駐車場。若い女の子グループが駐車場に入っていくのを見て直感で後をつけたら、何とか劇場まで着くことが出来ました。



たくさんの若い子が開場を待っている中、開いた瞬間に飛び出す私ともう一人の女の子。明らかに田舎者の2人ですね。彼女は慌てて譲ってくれました。私は一瞬だけ図太い神経の女に見えないか不安を覚えましたが、旅先での恥はかき捨て。この人たちと二度と会うことはありませんし、気にせず一番乗りして物販で台本を購入。



色々な商品がある中でなぜ台本かというと、青森に帰っても台本を開く度に劇が頭に蘇るからです。オススメしたい商品ですね。



劇は二階席でキャストは米粒。百均の望遠鏡の出番が来ました。耳栓は必要ありませんでしたが、ブランケットは一応膝の上に。



ダウンを羽織った上にブランケットという格好は青森の感覚でした。ここは東京。観劇が終わった頃には汗が滝のよう。



帰りの新幹線まで2時間。とりあえず遅めの昼食をとるため、劇場隣のデパートをウロウロ。どのレストランも千円越え! 高すぎる…やっと千円しないお店をみつけて注文したら、薄皮に包まれた草草草。オシャレなサラダ専門店でした。



食べる前に自撮りをするのが東京旅行のマナーかなと思って薄皮に包まれたサラダを齧りながら内カメラで角度を調整しながら時間をかけて1枚。確認するとややブレ、半目、鏡で見るよりブスと来た。諦めて母親に「無事東京到着」と電報のようなメールと共に送り付けました。



よく撮れてるね!と言ってくれた母親ですが、私より写真を撮るのが下手で、映画にもなった犬の『わさお』をスマホで撮った時なんか2匹いるかと思うほど。似た者親子です。



帰りに上野駅で高級そうなデザート店を見つけたのですが、何故か入口が2個。片方にはドアベルが着いていたので鳴らしてみますが音沙汰無し。もう片方が入口かと思いきや、開かない。



よく分からないので駅によくあるコンビニでスイーツを買い、新幹線で食べました。田舎者の弾丸日帰り旅行は確実に心を癒してくれました。また行くのも悪くないなと思っています

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