第6話 温泉のペアチケット
それから数か月が過ぎ、彼、優綺とは、あの日以来会っていない。
お互いの連絡先も知らない。
家だって一回切りじゃ全く分からない。
だけど、不思議と後悔はしていない自分がいた。
それから私は彼氏が出来る。
だけど別れてしまい、次の彼氏も出来たけど、すぐに別れる。
「…長く続かない…」
そして、再び彼氏が出来た。
今度こそはと思っていた。
関係も持った仲だったし続いてはいたんだけど…
結局、別れてしまった。
そして、しばらく男の子と縁がないまま毎日を過ごしていた。
そんなある日 ――――
「あっ!…これ…」
温泉のペアチケット。
手当たり次第応募した事を思い出した。
母親に尋ねるも、無理と断られた。
数日後、街に用事で出た帰り、出たついでに街をブラつく。
「…映画…もう随分と観てないなぁ~。まあ、行く相手もいないしレンタルで観れば…」
「映画館で」
ビクッ
突然に声を掛けられ驚く私。
「…観れば、もっと迫力あって面白くない?」
振り返る私。
「人違いだったらごめん。君の名前は…相澤 歌音?」
「はい…そうですけど…えっ!?あなた誰ですかっ!?」
「俺、優綺。樋野優綺。覚えてくれてるなら良いけど……忘れられない夜にと思っていたけど、初Hの相手も忘れる……」
「……優綺…?あの?」
「あの?って…何人かいるのか?じゃあ、俺は何番目なんだよ」
私は抱きついた。
「一番目!」
「じゃあ、2番目もいるんだな」
「いないよ!永遠の一番目だから」
私は何故かキスをした。
「おい……場所考えろ!」
「……ごめん…嬉しくて…つい…」
「バーカ」
そんな優綺もキスをしてくれた。
「まだまだだな」
「えっ?」
そう言うと、グイッと後頭部を押し、私を隠すように深いキスをされた。
「顔赤いぞ」
「し、仕方ないじゃん!優綺がHなキスするから!」
「ベッドの上じゃないからHなキスじゃない。エロいキスにしとけ!」
「もうっ!バカッ!どっちも変わらないから!」
クスクス笑う優綺。
「あっ!優綺…彼女いたりする?」
「彼女?いないけど。いたら、こんな街中でキスするかよ!そういうお前、彼氏は?」
「いない。付き合って別れての繰り返し」
「俺と一緒か。俺達付き合う?」
「簡単に言わないで!」
「駄目?」
甘えるように言う優綺。
「駄目だよ。好きって気持ちないのに」
「キスしといて?体の関係もありの俺達なのに?」
「そうだとしても……と、とにかく、それよりも、温泉のペアチケット当たっちゃって…彼女いるならと思って……せっかく偶然に会ったついでに……」
「二人で行こうぜ」
「えっ?」
「ここで会えたのも何かの縁なんじゃ?温泉行こう。いつにする?週末1泊2日として3日間の余裕持たせて有給使えば良いし更に4日間あれば移動も全然ありっしょ?」
「本当に良いの?」
「良いよ。俺で良ければ」
「じゃあ……行ってくれる?」
「勿論!」
私達は連絡先を交換し行く事にした。
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