第5話 クリスマスイブの淋しいチケット

12月24日。


クリスマスイブ。


クリスマスのイルミネーションがキラキラと眩しいくらいに輝いて見える今日。


一体、どれだけの人が幸せでHAPPYなクリスマスになるのだろう?


そんな私も壱耶とデートをするんだ。


映画のペアチケットが、また当たっちゃって、只今、壱耶と待ち合わせ中。


だけど未だに現れない壱耶。


そろそろ開演するっていうのに何してるのかな?




その時だった。




私の携帯に着信が入る。


壱耶からだ。




「もしもし、壱耶?映画、始まる……」


「……ゴメン…急用が入って連絡するの遅くなってしまって」


「そうか…じゃあ仕方ないね」


「本当ゴメン…この埋め合わせは…」




「壱耶ぁ~誰に電話してるの?」




ズキン


私の耳に入ってきた女の人の声。



「悪い…今…ちょっと待っ…」

「分かった」



そういう会話が聞こえる。



「…誰…?壱耶…女の人と一緒?」


「あ、うん……実は、俺、彼女と付き合い始めて…」


「埋め合わせとか言って…別れるつもりだったんでしょう?私の事、好きじゃなかったんだ」


「それは違う!」


「……私…壱耶は…そんな事しない人だって…思っていたのに…」


「…歌音…悪い…」


「…分かった…もう良い…」



スッと私の携帯が手元から離れた。




「えっ?」


「こっちから別れてやるよ!」


「えっ!?」


男の人の声がし、私の携帯から話をしている。



グイッと肩を抱き寄せられた。



「つーかさ、彼女、寒い中、放っておいて君は別の彼女と宜しくってやつ?それって、どうなの?だけど、ちょうど良かった。じゃあ、俺が彼女と宜しくやっちゃおかな?こんな可愛い彼女、俺にはもったいないない位だけど。それじゃ」




男の人は携帯を切った。



「はい。それと…」



スッと携帯を渡すと同時に、私が持っているチケットを一枚引き抜く。



「あっ!」


「あっ!って…一人で2回観るの?それとも…他に連れいるわけ?だったら、これ返す」



と、チケットを返そうとする男の人。



「いるわけ…」


「…彼氏と行くはずだったんだろうし。だってこれペアチケットだもんな?思い出に取って置く?」


「いりませんっ!」


「だよな?俺が君の立場ならいらねーもん。俺で良かったら一緒にどお?嫌なら良いけど」


「…良いよ…別に…あなたがそれで良いなら…でも…あなたこそ彼女と待ち合わせしてたんじゃ…男の人が一人でここにいる方がおかしいよ」


「えっ?クリスマスイブに男の人が映画館に一人でいたら禁止とか駄目って条件あるの?いやぁ~だったら君も女の子一人だよ。俺いなかったら」



「なっ…!…ムカつく…」



クスクス笑う男の人。



「ほら行くよ」



私の手を掴み映画館に入る事にした。



だけど……


映画所じゃなかった。


フラれたショックで涙が次々と溢れてくる。


バレないようにとしていたものの




グイッと肩を抱き寄せ



「出ようか」



耳元で言われた。



ドキッ


「でも…」



グイッと私の手を掴み館内を出ると、私の肩を抱き寄せたかと思うと


すぐに上着を頭からかぶせた。



ドキン


「映画所じゃない事位、分かるよ。顔洗ってきな。待ってるから。それとも…魔法でもかけてあげようか?」


「えっ!?魔……ほ…ぅ…」



キスされた。



ドキッ



かあああ~~~っ!



顔が熱くなったのが分かった。



再びキスをされ、深いキスをされた。


余りにも突然過ぎて驚くのと同時に頭がついていけない。



「大丈夫?涙止まった?」




ドキン



しかも今改めてマジマジで顔を見るとイケメンだったぁっ!!



≪嘘…ヤバイ≫



次々に色々ありすぎて頭と心が追い付かない状態のまま映画館に入って相手の顔を見る余裕もなかった。


だけど、今、こうして明るい所で見ると……


正にイケメン!


しかも年上と思われる男の人は、私が経験した事のないキスをするとなると遥かに色々と経験済みであろう。


初対面の人に全てを奪われそうな勢いだ。



「ねえ、今、改めて思ったけど……君いくつ?」

「えっ?」

「見た所によると……高校生?」

「……はい……」

「やっぱり……」


「……ごめんなさい……」

「えっ?どうして謝るの?」

「いや……」

「……未成年だけど……彼氏と過ごすはずだったっていう、お泊まりコース」


「……それは……」


「じゃあ、帰るに帰れないってやつだ。じゃあ、俺が限定彼氏っつー事で出掛けようぜ」



私達は映画館を後に街に出ると


彼・樋野 優綺(とうの ゆうき)。21歳。


の運転でドライブする事にした。




「煙草吸うけど平気?」



ドキン



≪ヤバイ……大人の男の人だ≫



「は、はい……」



慣れない大人の男の人の不意の行動等に私はドキドキしっぱなしだ。


その時、白い粉のようなものが見える。



「……雪……?」


「ホワイトクリスマスってやつか……酷くなる前に帰った方が良いみたいだな。家まで送る」


「えっ?」


「お泊まりコースとはいえ一緒に…」

「帰りたくない」

「えっ!?」



私は優綺の言葉を遮るように言った。



「外泊するつもりで出て来たのに…だったら、一人で街に出る」


「辞めといた方が良い」


「私は家になんか帰りたくない!適当に時間潰すから!」


「だったら俺の所に来れば良い」


「…えっ?」


「女の子一人で街なんていたら危険すぎるだろう?未成年だってバレたら特にヤバイ話だ!」


「…これ以上…優綺に迷惑…」


車を脇にとめられたたかと思うと、

グイッと顎を掴まれキスされた。


ドキッ


「誰が、迷惑だって言った?」



ドキン

至近距離に胸が大きく跳ねる。



「つーか…思ってねーし。女の子を街でおろして放っておいて落ち着くわけねえだろう?一人暮らしだし部屋も余ってるから」



「………………」



「…良い…ホテルでも行く」


「お前馬鹿?」


「なっ…!」


「ホテル、満室に決まってんじゃん。家で過ごせないカップルもいれば色々な奴等が利用してるし」


「そんなの分かんないじゃん!」


「歌音!彼氏の事でヤケになってイライラしてるのもあるかもしれないけど、俺の言う事を聞けっ!」


「やだっ!」




ガタン


助手席を倒され両手を押えつけられた。



ドキッ



「じゃあ、どうすれば言う事聞く?襲った方が良い?」


「そ、そんなの…」


「言っておくけど襲うくらい簡単なんだけど?でも高校生相手にムキになっても駄目だし強姦罪になり兼ねないからな。大人を甘くみない方が良くないか?」



「………………」



私は大人しくし、優綺は運転を再開し、私は気付けば眠っていた。



「全く…高校生って難しい年頃だよな……つーか…この子…初対面じゃない気がすんのは…あっ!」



優綺は気付いた。


私の記憶にはなかったけど優綺は思い出したようだ。



「2回目だ……まさか、逆の立場になるとはな……」



マンションに着くと、私をおんぶしようとした優綺に対し私は目を覚ます。



「優……綺……?」

「歌音、マンションに着いたけど歩けそう?」

「うん……大丈夫……」



立ち上がる中、転びそうになる。



「うわっ!馬鹿。急に歩くなよ」

「…ごめん…」

「全く」


私達は移動した。




すると……




「…優……綺……?」


「お前…何して……」




≪彼女……?≫



「……ごめん…今日の事…謝りたくて」


「謝る?仕事だったんだろう?」



「………………」



「ごめん…私、やっぱり帰る……」



グイッと私の腕を掴み引き止める優綺。



「歌音、いて良いから」

「む、無理だよ」

「歌音っ!」



私は掴まれた手を放し走り去った。



「……お前…ずっと…ここに?あがれば?」


「大丈夫。すぐ帰るから。私…これ以上優綺とは付き合えない。その事を伝えに来た」


「そっか……気付いてはいたけど」


「えっ!?」


「去年、電話してるの知ってたし、その後、帰ったのも知ってる。友達なのか本彼氏(カレ)かは自信なかったけど、お前雰囲気変わってるから他に男いるかもなって……彼氏、待たせてんだろう?行きな」



「ごめん…優綺……」

「俺こそ悪かったな」


「ううん……。ねえ……さっきの女の子は?」


「あー、彼氏にフラれた……女の子。偶々、同じ映画館でお互いの連れと待ち合わせしていた所に彼氏から連絡あったみたいで」


「そっか……」


「放っておけなくて出かけた」


「優綺……優しいからね。それじゃ」




二人は別れた。





私は偶々、近くにあった公園にいた。




「彼女、一人で何してんの?こんな時間に」




≪えっ!?ナンパ?≫




私は振り向く。




「…ゆ…優綺っ!えっ!?彼女は?」

「帰ったよ」



カチッ

煙草に火をつける優綺。




「今、フラれて来た所」

「えっ!?…まさか…私のせい?」

「だとしたら?」

「えっ!?ちょ、ちょっと冗談…私、誤解解く!」



私はブランコから立ち上がり足早に向かおうとしたが腕を掴まれた。



「嘘だよ」

「えっ!?」


「それに追った所で無理な話だから。彼女は彼氏と帰ったから。いやぁ~俺よりもイイ男いるんだな?俺だけかと思ったけど」


「優綺……」


「さっ、部屋に行こう。寒いっしょ?」



私は優綺の手を掴むとキスをした。



「歌音…」


「今度は私が優綺の傍にいてあげるから」



スッと片頬に触れるとキスをする優綺。


一旦、唇が離れると深いキスをされた。



「高校生の子供(ガキ)のくせに俺を惑わすな!」

「高校生だから相手にならないでしょう?」

「歌音、そうとも限らないから」

「えっ!?」

「男と女だって事、頭に入れておいた方が良い」




私達は移動した。



「さっ、部屋に行きな」



私は、再び優綺にキスをする。



「歌音!」

「分かってる!分かってるけど……」



「…………」



「…ごめん…部屋に行く」



背後から抱きしめられ洋服を脱がされる。



「言ったろ?男と女だって……俺がどれだけ我慢してると思ってんの?歌音」



向き合う私達。


振り返れば優綺も上を脱いでいた。



私を抱きかかえお姫様抱っこをするとベットに連れて行くと押えつけた。



ドキン



「今ならまだ間に合うけど?後悔しても知らないよ」


「別に後悔なんてしない!」


「…どれだけ自信なの?お前…」



首スジにキスをされ徐々に進めていく。


≪こ、怖いけど…≫

≪だけど……嫌な思いする位なら≫



しばらくして、私の身体に痛みが拡がる。



「…っ!」


「…まさかと思ったけど……やっぱり初めてだったんだな……本当……馬鹿……」



「…………」



「……歌音…無茶しすぎだから…どうして言わなかったんだ……」


「今日……覚悟していたから……でも…結局フラれたけど……」


「でも…今、思えば後悔していたかもな……良かったな……俺で……彼氏は事は忘れろ!無理なら…彼氏としている想像でもしてれば?」


「…バカ…」


「付き合っていた彼氏よりも後悔しないって思わせてやっても良いけど?」


「えっ?」


「初めてなら尚更。忘れられない夜にしてやろうか?相澤 歌音さん」



ドキン



キスをし、深いキスをされた。



何も知らない私を優しくリードする大人の対応にドキドキしながらも私達は一つになり身を委ねていた。



































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