第3話 真面目そうな彼だけど

「あのっ!俺と付き合って下さい!」

「えっ!?あっ、でも…」

「好きな人いたりしますか?」

「いや…いないけど…」

「じゃあ、お願いします!ゆっくりで良いので」

「……ゆっくり……分かりました」



彼・阪埜 壱耶(さかの いちや)君。同級生。


他高生の男子生徒と、ゆっくり付き合う事にした。


何度か出掛ける度に彼の良さが分かってきた。


純で優しい。




そんなある日の出掛けた日の帰り際 ――――



「壱耶君。私と……恋人として付き合っていかない?」


「えっ?良いんですか?」


「うん。だから、同級生なんだし敬語使わなくても良いから」


「あー、俺のキャラなんですよ」

「えっ?」

「本当の俺はこんなんじゃないよ。君が本当の俺を知って君が引かなきゃ良い…」



私は言い終える前に、キスで唇を塞いだ。



「……ごめん。どんな壱耶君でも壱耶君でしょう?本当の自分出して。まさか暴力振るうとか?」



「まさか」



クスクス笑う壱耶君。



「それなら良かった」

「暴力振るうとかって人間として最低行為じゃね?」



ドキン


ほぼ敬語で話をしていた壱耶君の話し方がガラリと変わり胸が大きく跳ねた。



「壱耶君…。そうだよね」




私達は恋人として付き合う事になった。




それから、付き合って半年が過ぎろうとしていたある日の事だった。




「…壱耶君…私の事…好き…なんだよね?」

「うん、そうだけど改まってどうしたの?」

「…じゃあ…私の事…抱いてくれても…」


「えっ?」


「私、色気ない?」

「いや、色気あるとかないとかの問題じゃないから」


「じゃあ、何?いつも覚悟してるのに、どうして?実は他に好きな人いたりするとか?」


「違うから!」


「…恋人同士でも抱けない時はあるよ」



「………………」



「……手を出したくても出せない時あるから」


「じゃあ、どうして男と女って関係持つの?好きだからでしょう?お互いが好きだから関係持つんじゃないの?ねえっ!壱耶っ!」



「……本当に関係持って後悔しないって言えるの?」


「……壱…耶……?」


「本当に愛し合ってるって言えるのか?男は簡単だよ!好きでもない女(ひと)抱いたりするのはね。成り行きで関係持つ事が出来るよ!それ分かって言ってるわけ?」


「…壱…耶……それって……私の事…」


「好きだよ。心から。……だけど……抱けないんだよ……」



「………………」



「ごめん……歌音……今日は…」


「言われなくても帰るよ…全然分かんない…壱耶の事好きだけど今日の壱耶は全然分かんないよっ!」



私は去った。




「男の子の考えって分かんない……好きなのに抱けない?おかしいよ…訳わかんないよ……私は好きで好きで仕方がないのに…関係持って良いって覚悟しているのに…何を考えているの?ねえ……壱耶……」




私は呟くように一人でトボトボ帰るのだった。


「ごめん……。歌音……。男と女は違うんだよ…。好きだから、付き合ってるからって関係持つ事が付きものじゃないんだよ。最初程大切に、この人だって人とすべきなんだよ…」














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る