第24話 第17局
金曜日、深夜、大学の休憩スペース。いつものように師匠と将棋を指す。
「今日、友達に怪談話を聞かされまして。めちゃくちゃ怖かったです。」
それは、普段と同じたわいもない会話・・・のはずだった。僕の言葉に、師匠がピクリと反応する。そして、手にしていた駒を置くと、急に神妙な顔つきをした。
「この大学にもあるよ。怪談話。」
「・・・え。」
「これは、この大学に通う女子大生の話なんだけど・・・」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
怪談話を始めた師匠を制する。二、三度深呼吸をし、心の準備をする。
先程まで気にならなかった自動販売機の音や、休憩スペースを吹き抜ける風の音が、妙に大きく感じられた。
「・・・始めてください。」
僕の言葉に、師匠はこくりとうなずいた。そして、話し始める。
「これは、この大学に通う女子大生の話なんだけど、彼女はある日の深夜、忘れ物を取りにこの大学にやってきた。そして、見てしまったんだ。」
ゴクリ・・・
「人気のない休憩スペースで、将棋をする男女を!!」
・・・・・・
・・・・・・
「・・・え?・・・終わり・・・ですか?」
「・・・うん。」
「将棋をする男女って、・・・僕たちですよね。」
「・・・・・・うん。」
・・・・・・
・・・・・・
全く怖くなかった。
僕が間の抜けた表情になっているのが気に喰わなかったのだろうか。師匠は不貞腐れたようにこう言った。
「・・・ちょっと待って。もっと考えるから。次は怖いよ。」
師匠はうんうんうなっている。
今日、僕は、『怪談話を話す』という、師匠の不得意分野を発見してしまった。
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