第13話 第9.5局②

・・・・・・


・・・・・・


「ありがとうございました。」


「ありがとうございました。」


「・・・・・・すごいですね。何もできずに終わっちゃいました。」


「これでも将棋は久しぶりに指したんだけどね。・・・腕はなかなか鈍るものじゃないね。」


「・・・・・・でも、すっごく楽しかったです。本当に、・・・・・・楽しかったです。」


「・・・ハンカチ、いる?」


「・・・・・・すいません、急に泣いちゃって・・・・・・いろいろと思い出しちゃったんです。」


「・・・そう。」


「・・・・・・なんで泣いてるのか聞かないんですね」


「言ったでしょ、私はあまり他人の事情に深入りするのは好きじゃないって。」


「・・・・・・ありがとうございます。」


「どういたしまして。」


・・・・・・


・・・・・・


「・・・ねえ、君、私の弟子にならない?」


「え!?・・・・・・弟子・・・・・・ですか。」


「そう、弟子。それで、私が君の師匠。・・・どう?」


「あの、・・・・・・どうしてそんなことを?」


「どうして・・・か。・・・まあ、気まぐれ・・・かな。」


「き、気まぐれですか。」


「そう、気まぐれ。でも、そっちの方が、面白いと思わない?普通に将棋をするより。」


「・・・・・・分かりました。・・・・・・えっと・・・・・・師匠。」


「・・・おお、少し、ムズムズするね。」


「ちょ、師匠の提案じゃないですか。」


「何も『師匠』と呼べとまでは言ってないんだけど。・・・でも、うん、いいね、これも。」


「・・・・・・じゃあ、師匠は師匠ということで。」


「そうだね。それでいこう。それで、次の対局なんだけど、いつがいい?私はいつでも。」


「えっと、・・・・・・また来週、この時間にこの場所でお願いしてもいいですか?」


「分かった。じゃあ、約束。」


「・・・・・・指切りなんて、久しぶりです。」


「早くしないと、手、引っ込めちゃうよ。約束破棄にしちゃうよ。」


「ちょ、やります。やりますから。」




「じゃあ、また来週。」


「はい、また来週お願いします、師匠。」

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