第10話 汝、正しいと思うなかれ

 諸君に問おう

 お前らは自らがやっていることを正しいと思っているか?

 お前らは、何もかも自分のしていることが正しいと思っているのか?

 本当に?


 それを確信して言えるものであれば、私はお前らを軽蔑する


 それを不思議がっているように頭を傾げるだろう

 お前らの表情を見ればわかる

 だからこそ、私は理由を言う


 お前らは、自ら人ではなく、全知全能を宣言している

 お前らが自らがやっていることを何も考えることも悩むこともなく、自信を持って答えることは、そういうことだ

 だって、そうだろう

 お前らも私も、完全になることができない人間なのだから

 完全を目指し、完全になれない

 このことを言うと、なら完全を目指すことも何かをなすことも意味がないと問う

 私はお前らに答えよう

 断じて違う、と

 私もお前らも人であり、生物である以上、完全を目指し、未知を理解しないといけない

 そこに変なフィルターを入れれば、歪んだ世界に見えてしまう

 それは良くない

 傲慢と、全知全能と勘違いをしてしまう

 それは良くない結果を導くことになる

 人類も地球も世界も、自らの望まぬ終わりにより早く直面させることになろう

 生物は、自らが利益と思っていることを、自らが合理的だと勝手に思っていることへと、簡単に惑わされて突き進んでいくのだから

 自らにとって、本当の意味で良い結果になるとは限らないのに―…


 話が逸れた

 戻そうか

 私は、自らが正しいと思ったことはない

 それでも、何かを選択して進めていく必要があるから、自らの考えに従って動くだけだ

 常に、自らが正しいかという問いかけをし、自らを疑い、悩み苦しみ、最後はそれを糧にして、自らの進むべきことを確認しながら、進んで行く

 これが我々の人生であり、生物の生涯であろう

 そして、常に未知を知り、過去から受け継がれた道を次世代へと繋ぎ、もしくは終わりのない道にし―…

 その一助となるのが我々であろう


 だからこそ、私は自らが正しいとは思わない

 お前らに強要する気はないが、それでも、お前らが正しいとは限らない以上、正しいと思うべきではないと言おう


 そう、汝、正しいと思うことなかれ

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