第7話 嘘はいつまでも真実に抵抗することはできない

 嘘は好きだ

 嘘は私という存在を気持ちよくさせてくれる

 私を讃えてくれる

 私を強い存在であると思わせてくれる

 こんな気持ち良いことは、他で味わえるだろうか

 あるにはある

 嘘以外の方法は、とてもきつく、決して、褒めてもらえたり、気持ちよい思いをさせてくれるとは限らない

 ギャンブルだ

 そんな不安定なものにすがるぐらいなら、嘘にすがった方が確実だ

 だから、嘘はいつも気持ちよい、素晴らしいものだ

 ああ、嘘よ、嘘よ、嘘よ、私をもっと気持ちよくしておくれ


 満足は大敵だ

 幸せは大事だ

 満たされないということを知らないといけない

 幸せは人を気持ちよくさせてくれる、本当の意味で

 だけど、幸せは全部を満たしてくれるわけがない

 どこかに渇きを感じさせる

 欲しい、欲しい、欲しい、満たせよ、心を気持ちよさで

 だけど、知っている

 私たちは満たされることがないことによって、進化という名の特化と、比較生産費説のように、より多くの可能性を手に入れたのだから

 前提というものを変えながら、条件を増やしながら、依存しながら、依存が終わることによって滅びることを付け加えながら

 だから、完全に満たされることはない

 そこが、私たちの成長できる面であり、世界を知るということを広げることのできる無限かそれぐらいの有限な世界に生きている者たちの定めであり

 ああ、幸せはあるが、完全に満たされることがないのは当たり前なのだ


 嘘を信じ込ませるのは簡単だ

 嘘の情報だけを流し、それ以外の情報を遮断すればよい

 そのために必要なのは権力であり、権力を持っているものを自らの手中に収め、媚びる者たちに分け与えればよい、決して全部ではなく、一部のみを

 彼らは、嘘のために働き、そこから広がる嘘を信じ込んだ人たちが、嘘を広める

 真実を弾圧して

 もう、こうなれば嘘は勝利したも同然だ

 私の嘘は勝利をし、私の妄想は世界の定義となる

 私の嘘を信じ、行動する者たちは、私のために死んでいく

 無駄死にという名の犠牲者として

 まあ、その死を名誉あるものぐらいにはしてやろう

 そう、お前らは私のための象徴どうぐであり、変えのきく使い捨て用品のように


 だけど、嘘で世界を覆うとも、真実の前には本当の意味での勝利はない

 嘘は敗北する

 完全な存在であり、完全な概念、不変的であり、普遍的なものと勝手に勘違いして

 愚かなり、愚かなり

 誰もが知れ

 我々は死という運命と滅びという運命さだめからは逃れえない

 ただ、できることはただ、遠ざけることのみだ

 だから、お前の信念や考えなど、不変的でもなければ、普遍的でもない

 知れ

 己が完全になれないという存在であることを

 完全ではないから、成長することができ、よりよい満足を求められることができるのを

 そう、知れ

 世界を

 嘘という気持ちよい世界には永遠不変でなく、いつか崩壊していく運命であることを

 世界という名の真実の前に、その抵抗など無意味なのだから

 さあ、世界を知るために、我々は生きるのだ

 そこから得られる果実は、我々に滅びるという名の餓死を一時的に回避させてくれる

 その果実を求めていこう

 滅びという餓死の時に、そのことに気づいても遅いのだから

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