第6話 嘘つきは戦争を望む
私は愛されなかった。
小さい時、振り向いて欲しくて、頑張る。
だけど、親は認めてくれなかった。
私がまるで家族の中に存在しないかように扱う。
私には、家族の気持ちなんて分からなかった。
だって、自分の気持ちに余裕がなかった。
だから、家族が私に愛を抱いていたとしても、気づかない。気づけるはずもなかった。
「愛して、愛して、私を―…。」
何度、心の中で思ったことだろう。
数えきれない―…、思いは膨らむ。
ある日、嘘をついてみた。
頑張っても駄目なら、より頑張っていることを言えば言い。
だって、そうだよね。
私はこれ以上頑張れないが、嘘をつけば、これ以上頑張っていることを言えるのだから―…。
その時、家族は私を褒めてくれた。
「頑張ったね。すごいね。」
その言葉は、麻薬だ。
欲しい、欲しい、欲しい、もっともっと。
もしも私が大人であれば、それがどういうものかわかったのかもしれない。
だけど、私は小さな子どもだ。
純粋に嬉しかった。
やっと、欲しかったものが手に入れられた。
余計に手に入れられなかった数以上のものを手に入れたいと思った。
罪悪感はあった。
だけど、しだいに快楽に満たされた。
嘘なしでは生きられなくなるのには、時間を要しなかった。
嘘をつくことでしか愛されなかった。
だから、どんどん嘘をついた。
臆病だから、こいつに嘘をついてはいけないとわかるし、嘘だと判明しても、ほんの少しの我慢で世間はみんな忘れた。
そして、私は、他人から愛されるということを望んだ。
この快楽から逃れるすべもないし、逃れたくもない。
だから、嘘をつき続けていると、それが現実になることがある。
それが、快楽を加速させる。
幸せだ。
たとえ、自らに能力がなくても、能力をつけようとしなくても、簡単に望んだものが手に入れられるようになった。
そして、私は、世界を望んだ。
私は、世界を支配していいのだと―…。
だって、私は嘘を現実にしているのだから―…。
そして、私を追い詰める奴らは、嘘にいつも騙され、損をするのだから―…。
ざまぁみろ。
私を嘘つき呼ばわりするのだから―…。
私は嘘を現実に変えているではないか。
ああ~、私は、世界を創っている。私は世界で、周りは私のための引き立て役であり、私に従うべきなのだ。
分かっていない奴らはなんて知能が低いのだろう。
だけど、時々、酷く、私を追い詰めてくる分かっていない奴らがいる。
私は反論できない。
どうして、どうして、ふざけるな。
だから、潰した。
消した。
だけど、いつも満たされることがなかった。
むしろより欲しくなった。
どんどん膨らむ。
だから、最後は本当に世界をとろう、と思ってしまう。
世界を奪おう。
私は世界で一番であり、一番でなくてはならないのだ。
ずっと、永遠に―…。
私以外は私に貢献する存在であり、奪われるのは当たり前のことだ。
私は法であり、私には法が及ばない。
当たり前のことだ。
世界にある支配者たちは、私の行動に疑念を抱く。
何で反対する。
操作すればいい。
ずっと、やってきたではないか。
それをすれば、いつの間にか、私の言うことを聞いてくれるのだ。私の嘘に―…。
そして、私は逆らうものを武力を、戦争で潰す。
私のおこなう戦争は、栄光で輝かしいものでしかない。
世界は―…。
そして、私は夢を終えるのだった。
無惨な最後によって―…。
勝利という名の敗北によって―…。
さあ、私はこのことを当時信じることはないし、ずっと気づくこともない。
どうして、どうして、とずっと叫び続けて、最後は誰もいなくなるのだ。
本当に、どうしてと喚きちらして―…。
嘘つきの人生に何があろう?
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