第13話 弁当と科学者たち

 さてっ、

 ここ一帯の土地を持つあたし、ハチミツこと蜂堂光子による前回のあらすじよ!


 えっと、なんだっけ……、前回、あたしってば野球しか出番がなかったし……、

 全然、覚えていないのよねえ――まあ、うろ覚えでもいいでしょう? 


 そこ、文句は言わせないわ!


 というわけであらすじよ! …………そうね、午前の授業が終わったわっ。


 え? これじゃダメ? 台本通りにやれって……? いやよ、どうしてあんたの言う通りにしないといけないわけ? あたしを従えられると思っているの? この、あたしをっ!


 いいから言え……って、誰に言っているのか分かって――あ、はい。

 言いますごめんなさいぃ……。じゃあ、えっと、今後の展開を――そこを読めばいいの? 


 こほん。


 これからお昼の時間、そのあとに、午後の授業を受けるのよっ、以上!


 え? もっとインパクトが欲しい? パンチがない……? あんたの台本通りに言ったんでしょうが! あ、アレンジは見逃して、要点はちゃんと伝えたじゃない!!


 パンチが欲しいならあんたを存分に殴ってあげようかしら?


 違う、そういうことじゃない? 分かってるわよそれくらい!

 あぁもう! 色々している内に時間が、尺が――撮れ高は充分? じゃあいいの?


 あ、じゃあそういうことで、あらすじ終わりっ!


「ぐだぐだ過ぎる!!」(トンマ)



【昼休み】


「あー、やっと昼だー」

 

 午前の授業は、今までないくらいにしんどかった。

 この瞬間、昼休みのこのほのぼのした感じに感謝だな……。


 さて、しかしこの休息タイムには、大きな一つのイベントが待っているのだ。


「トーンマっ、一緒にお昼食ーべよっ」


 そう、これだ。アキバだ。

 ぱっと見、嬉しいイベントだろう……、


 女の子の手作りのお弁当を一緒に食べる……、漫画でよく見るやつだ。


 男子にとって、これ以上に心が躍るイベントは……、まあ、あるにはあるが、しかしこれだって充分に匹敵するレベルのイベントと言えた。


 貴重なことに変わりない。


 しかしだ。

 命を懸けてまで、望むものでは、ない!


「死死死死死死死死死死死死死死ッッ」(男子一同)


「ダラダラダラダラダラダラダラ……っ」


 汗がすげえ。

 これは、俺にしか聞こえないのかなあ?

 

 普通、あそこまで殺気が放たれていれば、

 アキバかハッピーあたりなら、気づきそうなものだけど……。


「……、ねえ、トンマ、なんだか視線を感じない……?」


 お? アキバが気づいてくれたか?

 だとすると、アキバに嫌われたくない男子どもはこれでやめるはず……。

 良い流れだ……よし、よしっ。


「気づいたか。実はな……」


「あ、これって私が久しぶりに学校に来たからよね。

 珍しいから見られてるだけだと思うし……あはは、気にし過ぎかも」


「…………ああ、かもな」


 気づ、かなかったか……、教えることは簡単だが、俺から教えるのはなんだか、負けた気がする……、それに、アキバを巻き込みたくない、というのも本音だ。

 気づいてくれなきゃ男子どもに殺されそうという状況だが、それでもだ。


「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪」(男子一同)


「いや強がってる場合じゃねえな! 怨念が半端ねえぞ!?」



「どうしたの? 急に大声を出して」

「あ、いや……ところでさ、アキバはこのクラスの男子を、どう思う?」


「!?」(男子一同)


 ――どうだ、この質問の回答次第では、お前らの動きに制限がかかるだろう……、

 これ以上、俺に危害を加えられないような状況にな――!


「(て、てめえええええええええええええええええええっっ!!)」(男子一同)


 はははははッッ、俺の勝利、目前だ! 残念だったなあ、男子どもぉ!!

 

 なっはははははッッ!



「みんなのことをどう……? うんっ、みんな、良い人だよね!」



 ……………………。


「(あはははははははははははははははははははははっっ!!)」(男子一同)


 いぃいいいいいいいいいいいいやぁあああああああああああああああ!?


 動きに制限をかけるどころか、際限がなくなりやがったよ!


 アキバめ、まさか実は知ってて楽しんでいるんじゃないだろうな!?


「おーい、飯、食おうぜトンマ」

「ん? ああ、ハッピーか……」


「…………」(男子一同)


 あれ? ハッピーの時は反応しないんだな。


「あら? ここで集まって食べるの? だったらあたしも混ぜなさいよっ」

「ハチミツか……、はぁ」

「なんで溜息!? ねえどうして!?」


「…………はぁ」(男子一同)


「なんであんたたちも溜息をつくわけ!? これ、なんなのよぉおおおおおっ!」


 なんだかんだと、やっぱりあいつらはノリが良いなあ。


「あら、みなさんでお食事ですか? なら、私も一緒に、いいですか?」

「委員長か。いいぞ、でも、机がないかもな……」

「なら、あたしのを使いなさいよ」

「ありがとうございます、ハチミツさん。でも、そうしたらハチミツさんの席が……」


「あたしは大丈夫。……そうね、トンマの席、半分を借りようかしら」

「初耳なんだが」


「トンマ君はそれでもいいのですか……?」

「え、まあ、俺は構わないけど……、委員長? どうして睨むの?」

「いえ、特に意味はないです」


「あってほしかった! 意味もなく睨むの失礼過ぎるよなあ!?」

「うるさいですよ、めっ」

「俺の扱い、やっぱり酷いままじゃないか!」


 委員長、俺のこと絶対に嫌いだろ、色々と迷惑をかけたことあるけどさあ!!


「勘違いしないでくださいね」

「え?」

「私、トンマ君のこと、嫌いですから」


「勘違いしてないけど。合ってるよそれで! 自分で言ってて傷つくぞ、これ……」

「あははは」

「笑うな!」

 

 楽しそー。

 もういいや、委員長に言い合いで勝てる気がしないし……。


 すると、今度はハチミツが俺に急接近してきた。

 肩と肩が触れ合い……、というか、狭っ!!


「ちょっ、もうちょっとそっちにいきなさいよ!」

「これ以上いったら俺は床で食うことになるんだよ!」

「あら、いいじゃない、そこで」


「お前は俺の席の半分を望んだんだろ!? それ以上を求めるなよ!」

「私の家のテーブルは、こんな小さな机の数十倍もあるの」

「でしょうねえ、このお嬢様が! でもここは学校だからな、がまんしろ」

「ちょっと、いきなりお嬢様とか言わないでくれる? どきっと、するでしょ……」


「なんで照れる。意味が分からん」

「っ、ここからこっちに入ってくるな」


「……俺の目がおかしいのかな? 俺が持つべき比率がゼロだよ?」

「見間違いよ」


「堂々と嘘をつくな! ガッツリ見えてんだよこっちは!

 お前の不正をこの目でしっかりとなあ!!」


 ハチミツが渋々、

(いやなんでだよ……)


「分かったわよ」と言って、席を半分、分けてくれた。


 当たり前のことだけどな。丸くなったなあ、と思ったけど、これが普通だ。

 だんだん、感覚が麻痺してきてる。


 よし、これで準備万端だな……、にしても、この席、すげえな。

 このクラスの中心人物、ほぼ全員がいるよ。


 中でも癖が強いやつを集めた、という意味でだが。


「それでは、みなさん、お弁当を食べましょうか」

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