第4話

元彼に電話することにした。

彼は浪人生だったのだが、つい先日、友人経由で彼が無事合格したということを聞いた。


わたしは推薦で現役合格を決め、先に上京した。

彼は一般受験で浪人として、地元に残った。

彼はそもそも精神的に弱かったこともあって、浪人中に電話をした時には結構あたられた。

正直しんどかった。

こっちはこっちで新生活が始まって何もかもが新鮮な世界で楽しいのに、彼だけがそこに水をさす存在だった。


だから六月に振った。


それからは一度も連絡を取ってない。

学校にサークル、バイトで楽しく忙しくすごしていた。


でも次の年の春。

わたしは赤の他人として、彼の合格を知った。

急に現実に戻された気分だった。

そうだ、わたしには彼氏がいた。


友人経由で彼の朗報を聞く。

それにわたしは酷く傷ついた。

実は未練があるのは、わたしの方ではないのか。


もう一度彼に会いたい。

彼の顔が見たい。

彼の笑い声を聞きたい。


夜の九時。

わたしは家のベランダに出た。

新月が出ていて、空にぽっかり穴が開いている。

唐突に訪れたこの孤独感を埋めるように、彼の携帯に連絡をした。


大胆にも、わたしは電話をかけた。


緊張で心臓が少し震えるし、春の始まりの風もまだ少し寒くてもっと震える。


「もしもし、どしたの」

彼は出てくれた。

事の経緯を話した。

「だからわたし、できれば......」

「え、復縁してくれるの」

嬉しさとかなにかが食道を通って込み上げてくる。

喉の奥が熱い。


「うん、でもそれは気のせいよ。復縁はしない方がいい」


わたしは電話を切って、彼氏に電話した。

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