第33話 妹
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……」
長いこと口喧嘩が続いてしまい、結局終わったのはしゃべり疲れた時だった。
でも、ただひたすらに思っていることだけをぶつけたおかげか、心の中は大分すっきりとした感じだった。
「はぁ……。どうしてここまで来てあなたと言い争わないといけないのよ……」
「……それはこっちのせりふだよ」
発言の節目節目に棘を混ぜつつも、流石にあいつもこれ以上続ける気はないのか特に何も言い返してくれることはなかった。
お互いただ暴言だけをぶつけ合ったのでストレス解消にはなったが、結局肝心なことは聞けていない。
もののはずみに言ってくれでもしたらよかったんだけど、どうやらそう簡単にはいかないみたいだ。
「…………そんなに聞きたいわけ?」
「勿論」
ここまで来たんだ。諦めてなるもんか。
「はぁ……分かったよ。そんなに知りたいなら教えてあげるわ。私が死んじゃ嫌だって泣きつくぐらいだものね」
「……別に泣きついてねぇよ」
くそっ。こいつに寂しいって言ったのはやっぱり失敗だったな……。
「いいわよ。答えてあげるわよ」
「えっ!?本当にっ!?」
「反応がうるさい」
「ご、ごめんっ……」
どういう心境の変化なんだろうか。そうならそうと、あんな口論を始める前に言ってほしかったと思うばかりだった。
まぁ、なんて言ったらすぐに機嫌を損ねて撤回されてしまわないので言わないが……。
「それで、どうして私が死ぬのか聞きたいんでしょ?」
「うん。きっと大人になりたくないからって理由以外にもあると思うんだけど」
「はぁ……別にあなたに話したからって何も変わらないでしょうけど。いいわよ話してあげるわ。じゃないとここから脱出できなくて死ねないからね」
心境の変化というよりかは、どうやら諦めたようだ。
強情な彼女が折れるというのは初めてのことなので、少し勝った気がして嬉しい。
「にやにやしないでくれる?気持ち悪い」
「あっ、ご、ごめん」
おっと、どうやらあまりの嬉しさに表情に出ていたようだった。
気を付けないと。
「はぁ……、黙って聞いてなさいよ。途中口挟んできた瞬間、私はもう何も話さないから」
「わ、分かったよ」
さっきは思ったことをぶちまけてしまったけど、今からは気を付けよう。
今みたいな感じでいくと確実に彼女の機嫌を悪くしてしまう。
いつものように彼女の機嫌を伺うしかないか。
「それで実際のところはどうなんだ?」
「そうね……。何から話しましょうか……」
話すとは言ったものの、真っ先から言い淀む。
言うのを戸惑っているというよりかは、何を話せばいいか迷っているという感じだった。
「――そうね、まずはあれからね」
悩んでいた末に、ゆっくりと口を開く。
「私、妹が死んだのよね」
「――え?」
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