第2話
いいか、お前ら。私はガス欠で動けない。
前略。自分自身の体力を過大評価していました。もともと外で冒険するタイプの人間ではなく、自宅でゴロゴロ読書する私の体力はないに等しく、あえていうのならば点です。しかも何もしていないにも関わらず、ジワジワと減っていくのです。常に毒状態で体力は点。そんな私が昨日の月曜日に片付けをして、タダで済むはずがない。しかも頑張ってしまい、今朝は目も当てられない状態になったのは言うまでもありません。動いた後に私自身がどうなるかをシミュレーションして片付け作業を調節する。そんな大事な工程を綺麗サッパリ忘れていた私は本当に愚かです。
何が私にその選択をさせたのでしょう。初日にしてラスボスの急所である『思い出の品を捨てる』という攻撃手段を選んだ私は、激痛を伴い嫌な汗を滲ませて選別作業に取りかかりました。まずは捨てるものを選び、ゴミの種類によって、ひとつひとつビニール袋に分類しては入れていきます。説明するなら簡単で、実際ただそれだけの作業なんですが、捨てる選択をするたびに、悲しく辛い日々のフラッシュバックが私に襲いかかってきました。
現実は非情です。ラスボスのターンは続きます。攻撃をくらうたび、苦しくて動けず涙が出そうになりました。なに、この苦行と自身に問えば『そりゃ暴れるわ、だって急所だもの。』どこかの詩人のような言葉が浮かびましたが、何の効果もありません。片付けることは、思い出にさようならと区切りをつける行為です。恋愛でいうと別れ話を切り出す側であり、別れ話を切り出される側です。身の切られるような痛み、ジクジクと化膿した傷にツンツン攻撃をされる感じです。
そんな苦しみを味わうこと数回、過呼吸になりかけました。いいですか。過呼吸になりかけたら、すぅと息を吸い、ふっと息を止めて数をゆっくり1から数を数えるのです。ギリギリまで止めたら力を抜きます。すると息が自然に入ってきます。そしてまた、ふっと息を止めての繰り返し。息を止めても死ぬことはないので、息を吸って呼吸を止めて数えられる数字の記録更新に集中すると割と落ち着いてきます(※これは、あくまで著者の感想であり、効果を保証するものではありません)。ですが、多用する状況まで自分を追い詰めないでください。以上、著者からのワンポイントアドバイスでした。……あれ、なんの話だっけ。
脱線しました、すみません。片付けでしたね。とりあえず捨てるかを判断できた思い出の品の『一部』をゴミ袋に入れ終わった私は、ズタボロです。使い込まれた雑巾の方がまだ生き生きしてると思いながら、ザックリ集めておいた雑貨や不要なクリーニングのハンガーを分類して、月曜日はフィニッシュしました。
『思い出の 整理はとても 荷が重い 初心者さんは 最後にしようね』
自戒を込めて、ここに記しておきます。さて、今日はお片付けを休みました。ですが、明日は程々にラスボスと戦おうと思います。それでは。
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