第21話 *情報操作
【姉あらわる】有瀬陽乃突然休止の謎【スキャンダル?】
1名前:名も無きファン
スレ立てたぞっと
2名前:名も無きファン
おつ。じゃあ俺は噂の動画を貼っておく
h**ps://tw***/Y,shutola/******
有瀬陽乃の出るミスコンとか、いろんな意味で恐ろしいわ
3名前:名も無きファン
これ、編集上手すぎだろ。プロの犯行か?
あとやっぱ陽乃たんかわゆい
4名前:名も無きファン
お姉ちゃん、髪型一緒にすると見分けつかねーな
5名前:名も無きファン
双子? ただのそっくりさんってレベルじゃないよね
6名前:名も無きファン
動画で2年って言ってたから、年齢的に年子っぽい
7名前:名も無きファン
双子じゃなくてもここまで似るものなのか……わし、妹と全然似てないんだけど
まぁ体重も15kg違うが(
8名前:名も無きファン
デブおつ
9名前:名も無きファン
それより、2人が並んでるところもっと見たい
他に撮ってるやつとかないの?
10名前:名も無きファン
今の所ないなー
11名前:名も無きファン
おねえちゃんの反応初々しい
こういう慣れてない素人感たまんない
12名前:名も無きファン
恥ずかしがりながらも一生懸命なところがツボる
13名前:名も無きファン
これだけ似てるなら、事務所は何で早く出さなかったんだ?
姉とか、良いネタだろうに
14名前:名も無きファン
そうはできない理由があったんじゃね?
だからこその突然の休止だとか
15名前:名も無きファン
理由ってなんだよ?
16名前:名も無きファン
生き別れからの再会?
17名前:名も無きファン
何そのドラマな家庭の事情
18名前:名も無きファン
動画のあれ、現地で見てた奴の情報によれば、誕生日は4か月しか違わないらしい
19名前:名も無きファン
は?
どういうこと?
21名前:名も無きファン
従姉妹……てわけでもないよな?
20名前:名も無きファン
これって父親がクズ案件?
21名前:名も無きファン
本当だとしたらスキャンダルだわ
22名前:名も無きファン
まじかよ、休止の件でも何か絡んでそう
23名前:名も無きファン
可能性は高いよな
24名前:名も無きファン
つっても、しょせん噂の域を出ないわけで
誰かソースある?
25名前:名も無きファン
ない
26名前:名も無きファン
しらん
27名前:名も無きファン
ですよねー
28名前:名も無きファン
とりあえず、何かの訳あり姉妹ってことか
29名前:名も無きファン
復帰作は、姉も一緒だといいな
30名前:名も無きファン
お前らなら、この姉妹でどんなの見たい?
31名前:名も無きファン
月並みだけど、やっぱ鏡映しの様な、そっくりなやつかな?
32名前:名も無きファン
いや、あえてそれぞれの個性が出てるやつかな?
お姉ちゃんの方、なんか大人しそうだし
33名前:名も無きファン
わかる
妹の陽乃ちゃんに振り回されてるの見てみたい
34名前:名も無きファン
同じ顔だからこそ、そういうの見たいよな
35名前:名も無きファン
とりあえず、続報待たれる
36名前:名も無きファン
今はまだ、情報少ないしな
37名前:名も無きファン
情報と言えば、陽乃ちゃん達とちょくちょく映ってたゴスロリの子、めっさ可愛くね?
38名前:名も無きファン
それな!
39名前:名も無きファン
あの姉妹と一緒にいて見劣りしないって、凄くね?
40名前:名も無きファン
あー、だれだろ
すっごく気になる
41名前:名も無きファン
それより後ろ姿しか映ってないけど、4歳くらいの女の子がすごくよくね?
42名前:名も無きファン
おまわりさーん!
ここでーす!!!
……
「うぅ、何で話題があたしに……」
凜の為に割り当てられたデスクの前で、彼女はPCの前で頭を抱えて唸る。
現在文化祭が終わった日の夜、凛は自分の家でなく、アカツキ本社の芸能広報部に居た。
項垂れている凜に、20代中頃の元気そうな女性スタッフが、揶揄うように話しかける。
「しょうがないですよ~、3人セットにされてる様な舞台だったんですから。見た感じ悪い様に言われてるわけじゃないし、素直に喜んだらどうですか、お嬢様?」
「……お嬢様はやめて。凜でいいわ」
「あ、それと先程、今日の喫茶店の動画も編集も終わりましたよ。いつでも投稿できる状態です。いや~、こっちも可愛く撮れてますよ、凛様」
「様付けは……いいわ、それも頃合をみて投稿しましょう。タイミングは任せます」
「ラジャー!」
意気揚々と返事する女性スタッフは、他のデスクに座っているスタッフに力強くサムズアップした。
それに笑顔で答える皆の姿をみて、凜はもしやと妙な予感が過ぎる。
「ちょっと待って! あたしばかりを映した場面がないかチェックします!」
「「「えええぇぇ~っ!?」」」
「えええぇぇ~、じゃありません! て、あるの?! もぅ、今回は陽乃さんと平折ちゃんの宣伝でしょー?!」
するとたちまち、「もったいない!」「どうせなら!」「個人で楽しむ分には!」という声が返って来る。
凜は揶揄われているなと思いつつも、この空気は嫌いではなかった。
元々、親と距離を置いていた凜は、今までアカツキグループの業務に関わることはほとんどなかった。
今回関わっているのは、親友の平折とその異母妹の陽乃が関わっているので、仕方がないという理由もあった。
有瀬直樹の件も、自分が言い出したことだからというのもある。
「他の動画は、なかなかの力作だと思いませんか? 平折ちゃんが慣れないながらも頑張るところって、応援したくなりますよね。スムーズに接客する陽乃ちゃんとも良い対比になってますし」
「そうね、あの子はなんだって一生懸命な子だから」
「この衣装も自作なんですって? 今度の写真集、独自のデザインした衣装を作るのもいいのかも。あ、凛様が結構映ってるのは他意はないですよ?」
「ま、一緒によく呼ばれていたもの。わかってるわ」
2日目のコスプレ喫茶の編集を見ながら、凜は親友の事に思いを寄せた。
今、凜がやっているのは、大型掲示板やSNSに、事前に情報を流して平折と陽乃の写真集を出す時に有利な状況を作るための、下地作りである。
彼女達の成功の為に、自分が出来る事をやりたかったのだ。
そう、凜が考えている時だった。
「進捗はどうなっている?」
「せ、専務?! はい、編集も完璧です! 流した情報も炎上せず、こちらの制御下にあります!」
「お父――専務、有瀬直樹が直接絡んでくる様子はなく、もし手を出してきたとしても問題ないと思います」
そこに唐突に現れたのは、南條豊和――凜の父親だった。
経営者一族である彼が顔を出した瞬間、この場の空気が張りつめたものとなる。
そんなものは知った事じゃないと彼は無遠慮に皆の顔を一望し、そして報告を聞いて満足気に頷く。
「凛、後は任せるぞ。今度は出し抜かれるなよ」
「……はい」
彼はそれだけを告げて後にすると、たちまち部屋はスタッフたちの、安堵のため息の合唱会が開かれた。
それだけ彼らにとって、巨大グループの経営者の一人である南條豊和は、緊張する相手なのである。
「はぁ、びっくりした……妙に迫力あるんだよな」
「顔よりも、雰囲気とか空気が怖いんだよね」
「まぁまぁ、怒られることが無いよう、しっかり仕事しましょ」
「あの、父がすいません……」
皆のあまりの変わり様を見て、思わず凛は頭を下げた。
それを見たスタッフ達は、どうした事かと目をパチクリとさせ、一体どうした事かと考え込んでしまう。
「あ! そう言えば専務の娘さんでしたよね!」
「今まで新年会でも見てたけど、あまりにイメージ違うからてっきり!」
「そうそう、人形みたいに冷たいイメージがあったけど、実際話すと全然違うというか」
「なんていうか、普通の女の子だよね」
「動画じゃ凄いポーズもとるし、色々ノリノリだし!」
「ちょ、ちょっと! あれはお祭りっていうか……あぁ、もう!」
赤面し、慌てる凜をよそに、ドッ、とスタッフたちの間で笑いが起こる。
凜は頬を膨らませてつつも、揶揄われて嫌な気分になる事はなかった。
(確かに、あたしも変わったかもね)
数か月前の自分と比べて、そんな自覚はあった。
変わったとすれば、それは親友と想い人の影響だ。
気付けば、クラスでも目立たなかったのに写真集のモデルになる平折に、スタッフが恐れる父にも臆せず意見を言う想い人。
昴はそれだけじゃなく、有瀬直樹にも毅然として意見も述べるし、自分が暴走しかけた時は諫めてくれる。
きっとこの2人は、これからもどんどんと変わっていくのだろう。
そう思うと凜は、立ち止まってはいられないという気持ちになるのだった。
それだけじゃない――
「負けられないよね」
画面に映る親友を見ながら、凜は誰に聞かれるでもなく独り言ちた。
可愛らしい彼女と自分を比べると、嫉妬にも似た思いが胸を焦がす。
それを振り払うかのように、凜は作業の続きに取り掛かるのだった。
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