第6話 諦め

目下の悩みは、現在の職種とスキルの説明である。

結局ほとんどローカルで実行するVBAしか書いていないので、システムエンジニアではない。社内システムのプログラマとも自称できない。BPRに専属した場合の職種って企画で合っているのか・・・?


私はさすがに弊社に見切りをつけようと思っている。彼女の死からもすでに3年はとっくの昔に経っていた。潮時だ。


誰もがヘコヘコしていたころの私を求めている。従順で、言うことを何でも聞き、ルール外の対応をこなすことで業績だけはいっちょ前になった私を。私は、かつての自分自身が嫌いになっていた。ルールを守らない分析者を生み出す土壌は、私のような「やさしい人」の存在だったのだ。


コロナになれば否が応でも働き方は変わらざるを得ないが、私の会社は何も変わらなかったいや、変えることを拒んだ。今も彼らはネットが重い、紙に印をつけられないという問題に躍起になっており、そもそも部門間のやり取りに精度そものに問題があることを改めない。文句を言うだけで、自分たちの言うことを聞く奴隷を欲し、結果派遣や外注を拡張することになった。これにて一件落着と社長は思っているらしい。私はそのことを全社会議のムービーへYoutubeよろしくコメントせざるを得なかった。


おそらく、私の前提から間違っていたのだろう。私の会社は事業会社であり、ソリューション営業を行っている。あくまでソリューションに内包される手段についてプロダクトとしての価格表と求められる品質はあっても、指示書を画一化することはできないのだ。なぜなら、ソリューションとは臨機応変のものであり、その場その場で要望も人も変わるためである。私が求めたのは、あくまでプロダクトの販売には一定の入稿ルールがあり、それを守ることから品質の担保の議論が始まるというものだったが、それは違ったようだ。結局私はただの一方的な侵略者、あるいは邪魔者に見られていた。良かれと思って続けてきたにもかかわらずである。


それでも、作ってしまったモンスターには向き合わなければならない。アジャイルで作ってしまったために完全に忘れていたシステムの仕様書を書きながら、今日もエラーの魔物と闘わなければならない。


だが、何も一人で作るべきではない。開発に限らず責任というものは進めば進むほど責任を背負う。複数人ならその歩みは遅々としたかもしれないが、その分、すべてを負わずとも済むのだ。そしてコンセプトそのものに同意が得られないなら、さっさと引き上げるべきだ。それを強く警鐘として残そうと思う。


むろん、学びがなかったわけではない。

確かにこのツールの構成言語はVBAだけと言いつつ、スクレイピングやOutlookVBAにも手を伸ばせた。それだけではなく、他のシステムの開発ではPythonもRも書いたし、サーバーレス開発もしたし、RPAも作った。開発部門なのかBPR部門なのかよくわからない今のポジションも、自由にやらせてもらえる部分があった以上、何もかもが悪かったわけではなかったと思う。


問題はこれをどうやって業務履歴書とやらに書き起こすか・・・

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さよならマクロマン @raoki

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