約束は守る

 生配信ライブで一通り腹筋を崩壊させ、笑い疲れた俺は気付くとベッドで寝落ちしていた。

 カーテンの隙間から差し込む陽の光に耐え切れず瞼を開け、目覚まし時計を確かめる。するとなんということでしょう。定番中の定番、出発予定時刻をとうに超えていましたとさ。


 慌ただしくも身支度を整え、どこぞのラブコメですかと言わんばかりに食パンを咥えて家を出る。水分を持たない炭水化物はいささか不自由で、何度か喉につっかえた。

 時間帯から察してひとけの少なくなった通学路。残り十分というタイムリミットに間に合おうと走り込んでいると、人影が見えた。


「マドカ……?」


 腫れた瞼に視界を阻まれ、わずかにぼやけてはいたが、距離が近付くになるにつれくっきりとピントが合う。既に登校していたと思った幼馴染を視認し、地面を蹴るスピードを落とす。


「……ソウちゃん!?」


 向こうも俺の存在に気付くや否や駆け寄ってきた。ていうか、よく俺だって分かったな。

 洗顔中、鏡を前に敢えて口には出さなかったが、他人と見間違えるレベルで顔は痛々しくも腫れ上がっている。漫画で例えるなら、大量の蜂が集中的に顔面を刺してきたような描写だ。

 出来ればここはコミカルにも『どなたですか』と小首を傾げてもらいたかったが、自分の要望を押し付けるのは迷惑以上のなにものでもない為、思想を取り払ってからその場に立ち止まる。


「どうしたんだ。先に行ってても良かっ」

「どうしたじゃない!」


 鋭く透る声が通学路に響いた。厳しめの口調に圧され、半歩退く。


「ひどい……なんで、ここまで……」


 目尻に溜まった涙が頬を伝い滴る。唇もぷるぷると震え、奥でかちかちと歯が鳴っていた。

 自然と、昨日殴打された左頬に触れてきたマドカ。いやいや、ちょっと待て。

 いくら幼馴染兼、友人でも異性に面と向かって掌を当てられるのは無意識に抵抗を生んでしまう。早い話が、妙に恥ずかしい……。


「あ、ご、ごめんね。痛かったよね……?」

「え、ま、まあ……それなりに……」


 けど向こうは恥ずかしくて咄嗟に離れたのではなく、痛覚が刺激されて反射的に離れたのだと都合よく解釈してくれた。まあ実際痛いは痛いが、朝の冷水洗顔時に比べればだいぶマシだ。あれが多分ピーク寸前だろうから、今晩の入浴は悶絶を覚悟しておくべきかもな。


「と、ところで、そんなに取り乱して何かあったのか?」

「ありも大ありよ。ソウちゃん、昨日殴られたんでしょ!?」

「え、なんでそれを……」

「リアちゃんから聞いたのよ!」


 お早い伝達だこと。爆速じゃないですか。


「ソウちゃんが急にお出掛けのお誘いしてくるなんて変だと思ったから連絡してみたのよ。そしたら……顔を酷く腫らして帰ってきたって……言われて……ッ!」


 止めていた涙を、またぽろぽろと零しだした。


「お、落ち着けってば……」

「落ち着いてられないわよ!」


 鎮静化は失敗。怒涛の勢いは増すばかりだ。


「もう! それから日を跨ぐまで何度も何度も……メール送ったり……電話掛けたりしたのに……出てくれないし返事もくれないから、心配で心配で……また寝不足になったんだからね!」


 言われてみれば、昨日の隈が一層黒ずんでいる。逆にそれだけ無反応なら就寝か多忙かを悟ってほしかった。しかし、一昨日はリア、昨日は俺と、石森家のアホ兄妹の為に幼馴染を無駄に不安がらせて健康を害してしまったのは事実だ。


「ご、ごめんって、悪かったよ……」

「絶対に許さない。日曜日に夕食ご馳走してくれるなら別だけど!」


 おや、谷矢円香さんには稀なケース、諭吉を人質に取ってきたぞ。

 はは~ん、さてはコーヒーストアに映画と最近やたらめったら俺が奢るもんだからその快楽に溺れたってところか。自分は裕福なクセして貧乏人から巻き上げるなんて、恐ろしい子。

 まあ、意固地になると吝嗇りんしょく扱いは免れないだろうし、心配を掛けさせてしまったのだから素直に折れるしかなさそうだ。


「分かったよ。それで手を打とう……」

「当たり前です」


 嬉しがれば可愛く見えたものを、常識とでも言いたげに腕を組み、ふんすと鼻を鳴らされた。

 まんざら予想に反してはなさそうだ。


「じゃ、じゃあ……約束もまとまったし、早く行くか」

「待って。最後にひとつ聞かせてほしい事があるの……」


 顰めった額のシワを健在に顔を寄せてくる。絶対二つ、三つ追加されるでしょ……。


「えっと……なんでしょうか……?」

「その傷……誰に付けられたの?」


 案の定被害を負った顔に対して加害者を尋ねられた。

 マドカはSNSを嗜まないから、昨夜の一件を知らないのも無理はない。

 下手に村上の名を出すのも憂鬱だ。白倉グループに攻め入って揉め事を起こせばケガする恐れも有り得る。その辺の不良とかなら特定も不可そうだし、それで誤魔化そう。


「そ」

「あの下品男ね」


 答えに辿り着くのが早いマドカさんマジやばいっすわ。


「あの、まだ誰とも……」

「隠さなくて大丈夫よ。あいつ、ソウちゃんのことを異常なまでに目の敵にしてたから、絶対そうに決まってる!」


 ポイントは的確なんだが、村上が俺に抱いていた憎悪の度合いを今知った。

 キモオタクだから因縁付けられてたんじゃないのか……。なんかしたっけ……?


「さ、犯人も分かった事だし、早く行きましょ。教室着いたら直ぐとっちめてあげる」

「あの、マドカ……」

「心配しないで。私が護身用に合気道習ってるの、ソウちゃんも知ってるでしょ?」

「いやだから、そうじゃなくて……」

「ほら、行こ。急がないと遅刻しちゃう」


 聞く耳も持たず、マドカは臨戦態勢万全に通学路の正規ルートを先に駆け出した。

 う~ん、そのヤル気……無駄になりそうだな。


 ▲▲▲


 村上智也は事件当日、警察に保護されたあと精神病棟に搬送された。


 理由は明確。何の脈絡も無い有象無象から突然家を取り囲まれ、高額商品の毀損から始まり、自宅への放火、全裸での土下座の強要など、過度な制裁を受ければ誰だって恐怖が根付き、頭がおかしくなる。


 社会復帰どころか、日常生活への復帰も見込めない状態らしく、これまでの阻喪も含め退学処分と下された。お気の毒に。

 病院まではタイムラインで把握していたけど、まさか退学まで追い詰められるとはね。大事なことなのでもう一回。お気の毒に☆


 おまけに事の発端は『オタクが嫌い』だとかの薄い根拠からのグッズ破壊。因果応報と蔑視され、ネット掲示板でも自業自得だとまとめ上げられた。

 メディアでも昨夜の件は大きく報じられ、警察も捜査を進めている。

 ひとつ言えるのが、俺は無罪も無罪だ。俺はただ動画を垂れ流して感想を述べただけ。復讐を匂わすアナウンスは一度だってしていない。なんなら加害者に手も出していないし、寧ろこっちが一方的に出されたと堂々と告げれる。


 なので警察も、事件の発生源となった例の動画に触発され、犯行に及んだ人物たちを対象とした。勝ち確定ってやつだ。


 ▲▲▲


 という一部始終を久保先生から伝えられた。


 入室するや否や着席を促され、少し早めのホームルームが開始されたのは言うまでもない。

 当校、ましてや自分の受け持つ生徒の問題なのだから、教師として動くのも至極当然。


 違和感としては、空席が余分にひとつあった事だ。白倉はまだ出席していない。まあ、昨日あれだけ痛い目に遭えば、登校も躊躇してしまうのも当たり前か。しかも一人暮らしで助けになってくれる家族がいないのなら、尚更だ。彼女が忌み嫌う厳しい姉も、その時ばかりは心の支えになってくれる。推測に過ぎないけど。

 因みに村上の情報についてはホームルーム中にこっそりと送信しておいた。SNSでの件も伝えたし、登校を促すメールもバッチリ送信済み。


 そして俺はというと、悲惨になった見た目から直ぐに被害者と結び付けられ、有無を言わさず朝礼終了後に生徒指導室へ呼び出された。

 美人ながらも圧を掛けてくる久保先生に口を滑らせまいと、なるべく白倉が関与してないと改変を駆使して事の顛末を述べる。

 遅くまで教室に残っていた理由は、俺の家庭事情から食材の特売時間になるまで待機していたこと。村上が教室に戻ってきたのは、俺をいたぶるのに絶好の機会だと睨んだため。

 ついでに折られたフィギュアも自分のと称し、事件直後にこっそり回収した実物を証拠として見せる。


 とにかく今回の事件は俺と村上の二名のみで、他は一切絡んでいないと懸命に訴えた。


 動画を大手のユーザーに送った経緯に関しては、暗い面持ちで『助けてもらいたかったから』と、同情を誘うべく芝居を打つ。ま、自演で流しただけなんですけどね。

 その言葉を悲痛な叫びと捉えてくれたのか、先生は手で両目を覆って苦い表情を作った。

 結果、被害者サイドである上に不良生徒の悪事がこう明るみに出たのなら、俺を非難する必要性は無いと解放してもらえた。よっしゃラッキぃ。

 初めて入った生徒指導室での事情聴取は、一限目を丸々潰した。


 感覚としては十分前後に満たなかったのに、時間の流れとは不思議なぶっ飛び方だ。

 二限目開始前の休憩に入ると、各教室から生徒が数名出て来る。視界に映ったどの男女も敢えて目線を逸らし、横切っていく。嘲笑でも同情でもない、完璧な無視が有り難いと感じられたのは十六年間の人生を送ってきて史上初だ。


 そうこうしているうちに教室に着くと、まだ入ってもいないのにB組内は森閑した。

 誰かが声でも荒らげたかと予測を立てるも、全員の視線が俺に釘付けだから、注目を集めている大元が自分だと悟る。

 一歩踏み入れると、特段ざわつかれる訳でもないが、妙にこの空気が鬱陶しい。

 視線の色は、見慣れた不満や安堵ではない。なんかこう……脅えてる……みたいな。


「な、なあ、石森……」


 すると、手前に位置した席に座る眼鏡をかけた男子生徒が話し掛けてきた。

 シラクラ王国に属せない平民ポジ……名前なんだっけ、興味無くて覚えてないや。


「お、おれさ、マスクド戦士すっげぇ好きなんだよ。石森とも前から話したいと思ってたしさ、今日一緒に昼飯食わないか……?」

「あ、おめ、きたねぇぞ!」


 眼鏡男の後ろから、小太りの生徒が裏切り行為を意味する言葉を発した。

 狙ってきたタイミング、それにわざとらしい言い回し、大体察しがつく。

 俺を敵に回さない腹案だな。


 瞬く間に人ひとりを精神的に追い込む為の軍勢に影響を与えた、大手ユーザー(本人)と太いパイプを持った人物。そんな表には出さない裏大物のご機嫌を取っていれば自分は安泰だし、且つ守ってもらえる。という魂胆が見え見えだった。

 昨日遠くで俺のこと、笑ってたくせによ。でもまあ、同士なら快く歓迎してやらないとな。


「いいよ。一緒に食べようか」

「ほ、ホントか? よっしゃ!」

「あ、だけど最初に言っておく」

「へ……?」

「中途半端な知識口にしたら……許さないからな……?」


 眼鏡男の顔が青ざめる。

 危険人物の側近につくには危険が伴うっていうのを、彼にはしっかりと覚えていってほしい。俺は本気でマスクド戦士を愛している人間しか受け入れない。わざとらしく近寄って来ようものなら喜んで牙を向けてやるよ。興味あると虚言する人間ほど質の悪いものはない。

 眼鏡男がへなへなと脱力するのを尻目に、その場を離れる。


「…………まじかよ」

「…………あ~ぁ、終わったな」


 小太りがウシシと憎たらしく笑う。

 バカが。下手に胡麻擦ろうとするからだ。といっても、別に何も危害は加えない。

 今はこの支配欲に数分間でもいいから浸りたいだけだ。


「お帰り、ソウちゃん」


 自席付近で、マドカから話し掛けられた。

 今朝額に滲ませたシワは完全に取れ、少し嬉しそうな微笑みを口角に漂わせている。


「大丈夫だった? それとも、なにかペナルティでも課せられた……?」

「特に何も無いって。ただ詳細を洗い浚い吐かされただけ」

「ふふ、それじゃあまるで拷問ね」

「先生の目付きが鋭くて本当に拷問だったよ……」


 何気無い雑談をしているだけなのに、羨ましそうな視線が刺さる。

 なんだその目は。谷矢円香は安全を保障されてるとでも言いたげだな。

 本心を知ろうとせず、位の高い人間の接し方で俺を下に見た自分らの責任だ。ちょっとやそっとじゃ心開かないぞ。


「…………あ」


 その小さくも弱弱しい声が背後から聞こえた。誰だかを直ぐに察知する。だってマドカさんの表情殺気立ってるんだもん……。


「よ、よお……」


 振り向いた先に白倉の姿を見付ける。顔は若干窶やつれ、瞼は真っ赤に腫れ上がり、目の下は隈が出来ていた。不安でいっぱいの夜を過ごしてきた様子だ。

 身なりに気を配る余裕もなかったんだろうな。髪はぼさぼさで、メイク感もゼロだ。

 すっかり以前の面影も無い女王様の登場に、ようやくクラス内がざわめいた。ラグかよ。


「…………なあ、白倉が一番やばいんじゃないのか?」

「…………村上以上に、石森虐めてたもんな」


 状況を認識した周囲のこの反応……察するに、上手い具合に勘違いしてくれたみたいだ。

 グループ随一の側近を、キモオタとないがしろに見下してきた俺によって消された。その事実をSNS上で知り、守りを失った女王様は脅え躊躇い、気付けば遅めの登校に至ってしまった……とね。


 断定的では無いにしろ、あながち間違いでもなさそうだ。

 もっとも、俺との視線を拒んでいるのは残った取り巻きの面々。友情はどうであれ、あいつらにとって人気者の実力行使主義である村上を失ったのは相当な痛手だ。


 無関心にスマホ画面へ集中しているようだが、そんなのは見せ掛け。そわそわと焦った感情がもろばれだ。同じ目に遭わされるのかと疑心暗鬼に陥っているのだろうか。

 とは言え、俺が白倉に憎悪を抱くなど今となってはない。だから顔色は変えないし、寧ろ来てくれたかと安堵の表情で彼女と視線を交わす。


「…………おいおい、カモが来たって顔だぞ」

「…………女王を退けて王の爆誕か」

「…………今までのは大目に見てやるから筆下ろしさせろとか言うんじゃ」

「…………えぇ、サイテ~」


 自由に妄想を膨らませるのも大概にしろ。


「…………それは私の役目よ!」


 ほら、マドカも『くだらないこと抜かしてんじゃないわよ』って口動かしてるじゃないか。

 取り敢えずマスクド戦士のみなさん、それもちょっと良いかもって思ってしまった俺をふんだんに殴ってください。今ならアナタ方の殴打を小鳥のさえずりに変換できます!


「ソウちゃん、ちょっと避けて……」

「え……?」


 内面狼狽えていると、マドカが白倉との対面を望んで前へ出た。見物人の声は再度静まり、不穏な空気に堪え切れず小刻みに歯を震わせるくぐもった音が伝わってくる。


「よくおめおめと顔を出せたものね。あなたのところの下品なお仲間さんが随分好き勝手暴れてくれたおかげで、彼は受けなくてもいい痛みを受けたのよ」


 凍てつく声に白倉は何も反論せず、俯きながら黙って聞いていた。


「お山の大将を気取るのは結構だけど、次あなたの監督不行届で彼がまた傷付く場合があったら……私は全力でその伸びた鼻っ面を潰してあげる……ッ!」


 援護されているのに、安心も快楽も感じ得れない重たい空気。

 隕石を防ぐのにシェルターに隠れたはいいものの、中で時限爆弾を発見した気分だ……。うん、今のは忘れてくれ。俺が悪かった。


「…………ッ!」


 マドカから耐え難い侮辱を浴びせられた白倉が、きゅっとスクールバッグの持ち手を握る。

 悔しいよな、自分が一番の被害者なんだから……。

 学校での立ち位置を守ろうと映像から彼女の姿を消したことで、グッズの持ち主は俺の所持品と定着した。


 昨夜タイムライン上では同情する声がいくつも上がったが、白倉に対するコメントは勿論無い。だから彼女は俺の他からは誰からも慰めてもらえない、責められるばかりの舞台に立たされている。反論すれば公になるリスク、黙り込んでいれば非難を受ける。

 終息後もっとも救われないのは彼女……白倉薺だ。


「ほら、ソウちゃんも何か言ってあげて」

「いや、俺は……」

「いいから、ほら。あの男いないんだし、今がチャンスよ。これまで受けてきたこと、全部言ってやりなさい!」


 肝っ玉のでかいお姉さん態度に気圧され、マドカと交代する。

 動く音を察してか、白倉が顔を上げた。悔しい、悲しい、そんな嫌な涙を流している。

 やるせない気持ちが押し寄せてきた。

 どっちにしろこのままでは彼女の威厳は紛い物だと明るみになり、シラクラ王国は崩壊の一途を辿る。


 だったら、これしかない。


「も、モッキー……」

「…………いつも通りにしろ」

「……え?」

「…………言ったろ。残りの学校生活に協力するって」


 周りのざわめきに埋もれるような、密やかな声で伝える。

 ちゃちな予想で、これまで通り虐げてくれれば……『あの村上を退学に追い込んだ石森にも怯まない最強の女王』として再び君臨することができる。

 クラスメイトたちの見る目は一層大きくなるだろうし、尊厳も固まるに違いない。

 それが実現できるなら、俺は我慢するだけだ。


「…………ホントに、良いの?」

「…………ああ、構わない」


 同等に低音で確認を取ってきた白倉に、肯定の意を唱える。

 約束もとい契約を交わしたんだ。男に二言は無い。

 その瞬間。


「ふんッ!」


 つ~んと伝わる痛みが全身を痙攣させた。


「いったあああぁぁぁッ!?」

「ソウちゃん!?」


 脛を蹴られてうずくまる。クラス中は静まり返り、男の情けない呻き声だけが小さく漂う。



「な~にずっと見ちゃってくれてんのよ~ッ!」



 息を止めるほどの痛みに歯を食い縛っていると、か細い声が幻聴だったように、あの元気にも生意気な口調が聞こえてきた。



「モッキーまじキッモーっ!」



 そしてお決まりの、語呂良きフレーズが辺りに鳴り響く。

 すると同時に、クラスからは歓声が沸き上がり、白倉を称えるコールが教室内を震わせた。


 悪役へ勇猛果敢に立ち向かった、正義の味方と誰もが思った一瞬。彼女の威厳、尊厳が強まった証だ。

 引き寄せられた視線の先には、涙を滲ませる二年B組の女王様が佇んでいた。

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