第11話 節度


.....あ、それはね、いろいろ。このあたりにもね....



そこまで話したところで、人の気配がした。




僕が話すのを止める。と、


彼女もすっ、といつもの硬い表情に戻り、それでは、なんて言いながら


静かに歩いて去って行く。




節度、って言うのかな....なんか、気にしすぎみたいな気もするんだけど(笑)。


温泉の紹介はその次の、ミーティングの時。

やっぱり早く来てた僕と、偶然会ったその子とで....



.....あ、あのホラ、此間のね、温泉ね。

ここのオフィスのすぐそばにあるよ。




「どのあたりですか?」



....ほら、ここの北門を出て、ずーっと上がっていったところにね、

市営の天然温泉があるって。




「そこ...結構遠いですね。クルマ持ってないし...」




....あ、なんかね、巡回バスが出てるらしいよ。なんなら....






仕事がハネたら、帰りに乗せてってあげようか、と言おうとしたのだが

その時、グループの男の子が来たので、いつものように彼女の話しはそこでオワリ。




会話が途切れた事を不自然に思ったのか、グループのひとり、ヨゥが

「何の話しですかー?」なんて。


この子は、真っ直ぐで元気、男らしいいい青年だ。




....うん、あのね、温泉の話。


僕がそういうと、彼女は俯いた。


なんか、恥かしいみたいだったので

僕も適当に誤魔化した。





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