第11話 節度
.....あ、それはね、いろいろ。このあたりにもね....
そこまで話したところで、人の気配がした。
僕が話すのを止める。と、
彼女もすっ、といつもの硬い表情に戻り、それでは、なんて言いながら
静かに歩いて去って行く。
節度、って言うのかな....なんか、気にしすぎみたいな気もするんだけど(笑)。
温泉の紹介はその次の、ミーティングの時。
やっぱり早く来てた僕と、偶然会ったその子とで....
.....あ、あのホラ、此間のね、温泉ね。
ここのオフィスのすぐそばにあるよ。
「どのあたりですか?」
....ほら、ここの北門を出て、ずーっと上がっていったところにね、
市営の天然温泉があるって。
「そこ...結構遠いですね。クルマ持ってないし...」
....あ、なんかね、巡回バスが出てるらしいよ。なんなら....
仕事がハネたら、帰りに乗せてってあげようか、と言おうとしたのだが
その時、グループの男の子が来たので、いつものように彼女の話しはそこでオワリ。
会話が途切れた事を不自然に思ったのか、グループのひとり、ヨゥが
「何の話しですかー?」なんて。
この子は、真っ直ぐで元気、男らしいいい青年だ。
....うん、あのね、温泉の話。
僕がそういうと、彼女は俯いた。
なんか、恥かしいみたいだったので
僕も適当に誤魔化した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます