第6話 困ったな


僕は、いくつかある小さなミーティング・ルームの奥に座っていた。


ミーティングが始まるのは午前10時。

すこし前に行って、誰もいない部屋でひとり、くつろぐのも僕のスタイル。




そう、こんな性格も....特定のパートナーを持たない理由だった。

ひとりでのんびりしていて、好きな音楽のメロディーや

楽しい思い出のこととか....ぼんやり考えているのが好きだった。



だから、そういうところが解らない子は

僕が怒って口を利かないのだ、と

誤解するらしかった。


(まあ、でも賑やかな子と一緒の時は合わせてしまうのが僕で...

結果、ひどく疲れてしまったりするのだった)。



ミドルティーンの頃から、付かず離れず、みたいな感じだった子も

割と、物静かなタイプだったし...



そんな風に物思いに耽っていると、新しいグループのメンバーが

まとまって、ミーティングルームに入ってきた。


みんな、マジメそうな青年ばかりだった。



扉が閉じ、もう、これで終わりかな?と思った瞬間


ひざかけを持って入ってきたのは、その子だった。



彼女は、僕を見、周りの人に気付かれない程度に微笑んだ。

俯き加減の眼鏡越しの瞳は、輝いていたように見えた。





......ちょっと、困ったな......。




何故か解らないが、僕はその時そんな風に思ったことを憶えている。



勘、みたいなものだろうか。



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