第11話 キャンパス



とはいえ、そんなに都会、と言う程でもない

地方都市、と言う感じの駅で、僕は電車を降りた。


遠くには山も幾つか見えるし、空も良く見える。


「環境は、いいね。」



駅前の看板を見て、スーパーの名前を探したが・・・。


さあ、さっぱり分からない(笑)。



駅員さんに聞いてみると・・・。「ああ、ひとつ戻った方が近いかも。

歩いても行けるけど。線路沿いに行けば、山の方に見えるよ、看板。」


・・・と言う訳で歩いていったが、結構ある。


夏の朝なので、そんなに暑いと言う程もないけれど。

まだ7時にもならない。



歩いているうちに、太陽が昇ってくると、段々暑くなってくる。



10分くらい歩いただろうか。


次の、急行が止まらない駅が見えた頃に、看板を見つけた。



「なーんだ。やっぱり電車で戻れば良かった。」


と。笑ってしまう。



でも、まだ朝8時前。

スーパーに行っても、搬入の業者さんくらいしかいないだろうなあ。


と、気づく。



「大学はどっちだろう?」


陽子さんは、短期コース、つまり短大に行ったのだけど

同じ校内にある。


たしか、山の上だとか・・・。


「まあ、今は夏休みだから、行っても誰も居ないな。」



と、ふらふらとスーパーの看板の方へと行ってみる。



スーパー、と言うよりも

ショッピングセンターと言うくらいの広さで

駐車場が、どーんと広く


2階建て。屋上が駐車場。



「すごいなぁ・・・。」と、思ってみていた。



僕の町の店も大きいけど、その倍くらいはあるみたい。



やっぱりボーリング場の跡地かな、なんて思った。


ボーリングが流行って、廃れて。

後は、スーパーになったり、映画館になったり。

いろいろだった。



搬入のトラックが出入りしているので



つい、なんとなくそっちの方へ、歩いていってみる。


広い県道沿いにあるこのお店。


搬入用出入り口は別にあり、その、トラックが往来している辺りから

ちょっと歩いて入ってみたり。



邪魔にならないように・・・と、端っこを歩いて。




と・・・・

ガードマンのおじさんが「キミ、ダメだよ入ってきちゃ」


ああ、見つかっちゃった(笑)


「すみません」と言って、戻ろうとした。


すると・・・。



「町野くん、町野くんだろ?」と、

搬入プラットホームの高いとこから、聞き覚えのある声。


振り向くと・・・・。


天然パーマ。色浅黒く。

にこやか、元気。


どこかで貰ったエプロンをしていて。「フランQ」とか書いてある・・・。



「副店長!・・・じゃなかった。原田さん!」



あの、副店長だった。



原田さんは、軽く、プラットフォームの階段を駆け下りてきて



「よーぉ、元気だったか。」と、僕の肩を叩いて、にっこり。


僕も、懐かしい、お世話になった人に会えて、嬉しかった。



「キミがどうしてここに・・・あ、そうか、沢口くんか、まだ出勤前だから。」と

記憶のいい人。


アルバイトなんて一杯いると思うけど。



「原田さんは、なぜここにいらっしゃるのですか?」と、尋ねると


「うん、本部だから、時々回るんだ。まあ、バイヤーと言うか・・・

アルバイトみたいなもんだよ、忙しい店のお手伝い」


と、偉くなってもそういう事を厭わずにやる原田さんは、いいなぁ、と思う。


会社も、そういう気風の会社で


「福祉の思想」を持っているから


陽子さんのような前途のある人には投資する。そういう感じなので



役職だろうと、仕事は仕事。出来る事はやる。


そういう人がリーダーになる、そういう会社だった。



「じゃ、寮へ行ってみるか・・・と言っても、女子寮だからなぁ・・・。」と、原田さん。



僕は「大丈夫だそうです、寮のみんなが『遊びにおいで』って言ってくれて。」

と言うと


原田さんはにっこり。「まあ、キミなら大丈夫だろうね。ちょっと待ってて。クルマで送るから。



と、言ってくれたけど



「いえ、お仕事のお邪魔になりますから、場所を教えてくだされば

歩いて行きます。」





原田さんはにっこり「そうか。ありがとう。場所はね、そこの次の角を曲がって少し行くと

ちょっとお洒落な建物がね、池のそばにあるから。


アメニティなんとか、って言う看板が出てるよ。そこが女子寮。」


と、原田さん。



「ありがとうございます。」と、僕は礼をして。


行こうとした。


原田さんは「お昼頃まで居るから、時間があったら事務所に寄ってね。

珈琲でも飲もうよ。」




と。



僕はにっこり「ありがとうございます。助かりました。お蔭様で。

女子寮の場所なんて聞けませんし。」と。笑。



原田さんは、搬入プラットホームに駆け上がり「じゃ!」と、手を振って。

仕事に戻る。




「颯爽としてるなぁ・・・。」と、僕は思う。




スーパーマーケットの店員なんて、一見つまらない仕事、と

見えるけど。


気の持ちようで、あんなに颯爽とした

ビジネスマンになれるんだなあ、なんて思った。



そう考えると、将来の職業選びも、ちょっと違って見えてきたりした。



鉄道員になりたいと思っていたけれど、もし、なれなくても

他に、いろいろあって。


その仕事なりの楽しさが見つかるかもしれない、などと。





原田さんに教わった道順を辿ると


大きな池があった。

池の周りに道路があって。


僕は、みんなでツーリングした富士五湖を思い出していたり。


「精進湖もこんなもんだったな」なんて思う。



その湖岸道路から、ちょっと入ったところにあった

煉瓦ふうに見える、コンクリートの建物が


その、アメニティ青池だった。




お洒落な建物で、エントランスが広くとってあって

なんとなく「レストランかな」なんて思うような感じだけど

3階建て。



「まだ、寝てるかな・・・でも8時過ぎだから」


とは思ったけど、そう、女の子だと

寝起き見られたりすると怒るし(笑)


ノーメークは見せない、とか(笑)


「どっかで暇つぶして来るか」と

思って、湖岸を散歩しようと思って。



湖岸の道路は自然のままで、草花が生い茂っていて。


青池と言う名前だけど、水は青くなく

ふつうの透明な水。


水鳥がふわふわ。あひるかな。


ユーモラスな声で鳴くので心和む。


ぱたり、と、扉が閉じる音がして。


アメニティ青池から、誰か出てきた。


すらり、長身。漆黒の長い髪。


きりっ、とした凛々しいお姉さんは

なんとなく、知的な雰囲気の。



僕の方をちら、と見て


微笑む「旅行?」


お姉さんは、大学生だろうか。




「あ、あの・・・・僕、スーパーでアルバイトしてた・・・。」と言うと


お姉さんは唐突ににかっ、と笑って。

その落差が面白かった。


「ああ、キミ、陽子ちゃんのカレシでしょ!声で分かった!」



そう、電話を取ってくれたお姉さんの声だった。



「はい。ちょっと、近くまで来たもので。」と言うと


お姉さんは笑って「来るのは聞いてるわ、さ、入って!陽子ちゃんもわたしも

きょうは学校なの」



と、僕の手を取って広いエントランスへ。


・・・・学校あるんだな、なんて思って。




ふかふかのソファのあるリヴィングは、明るい。

柔らかい色の照明があり、結構な広さ。


1階は、ダイニングとバスルーム、プレイルーム、ロビー。

2階と3階がプライベートスペースらしい。



お姉さんは僕をソファに掛けさせて「わたしは麗子、うららって呼んで。

陽子ちゃんと同じ学校だけど、私は大学なの、あ、フダちゃーん、来たよ。陽子ちゃんの

カレシ」



よばれたフダちゃんは、ほえ、と言う顔で。

上下トレーナーのまま(笑)


「あ、キミかー。若いね。いくつ?」


僕が「16」




「16かー。いいなぁ。わたしも戻りたい。あ、私は礼子。この家ね、レイコが3人居るから

わたしはフダってよばれてる」



僕は、ちょっと笑った。



「あ、お姉さんを笑うと怖いわよー。あとで可愛がってあげるからね」と

にこにこ。


「陽子ちゃんは?」と、うらら。



ダイニングの方から「まだ、お部屋じゃない?」と言ってでてきた

ふんわりした感じの子。


「あの子はスズちゃん。玲子なんだけどね。なぜかスズちゃん。

鈴の字に似てるからかな、あの子は陽子ちゃんと同じ、短大」と。

礼子さんは言う。



「礼子さんは大学なんですか?」と僕が聞くと


「そう。ここの寮は全員。その方がいいでしょ?学生らしくて」



「なるほど・・・・・。じゃ、卒業したらみんな、寮から出るんですか?」



うららさんは「そう。だって、赴任先へ行くから。たぶん、みんなデザインセンター

だと思うけど。何をデザインするかはわからないけどね。

他にも何人かいるわ。ねえ、スズちゃん、マサエちゃんと靖子ちゃんは?」



「まだ寝てるんじゃない?」


「もー。遅刻するよ。ほんと。起こして来ないと。

ねえキミ、起こしてあげてよ。」と

うららさんはイタズラっぽく。



僕は「いやー。それはちょっと。可哀相ですよ、寝起き訪問なんて。

TVのバラエティみたい」


スターどっきり〇秘報告、なんてのがあった(笑)。



「はは、ほんと。でも、面白いじゃない?ついでに陽子ちゃんも起こしてあげれば?」



と、礼子さん。



なんか、いたずらに巻き込まれて、僕は二階へ。


階段は内側で、ふつうの家みたい。


廊下が長く、部屋は片側だけ。


端っこが靖子さん、かな。



「おはようございますー」と、スズちゃんがふざけて。


ドアを、コンコン。



とてとて、と、歩いてきて「起きてますー。」と、

ドアを開けたのは、


色白の美人さん。ちょっと小柄で

黒目がちの。


ちょっと中東ふうにも見える。



僕にどっきりしたけど、スズちゃんが居たので「おはようございますー。」と

ドアを閉じた。



「さ、次は面白いぞー。」と、スズちゃんは、隣のドアを、コンコン


「遅刻するぞー、こら!マサエ!」



どたどたどた・・・・。(笑)


ドアをがちゃ。


「遅刻、ウソ、何?、あんた誰、いやーオトコー。いや!」

と、ユーモラスな丸顔にソバージュの色浅黒く、愛らしい子は

ちょっとふくよかにまんまる。


かわいらしいふわふわパジャマ。


と、ドアを騒々しく閉じた。


スズちゃんは「ははは」と笑って。


「奥が陽子ちゃんだけど。もう起きてるだろうから、あなた、行ってきて」


3階は、レイコシスターズの部屋、らしい(笑)。



「え、僕は・・・いいです。遠慮しておきます。」

と、ちょっと、たじろぐ。


寝起きだったら可哀相だし(笑)



「優しいのね。じゃ、わたしが」と、スズちゃんは

陽子さんの部屋のドアをコンコン。



かちゃ、と、扉が開いて


陽子さんは、僕を見て、にっこり。


「ああ、来てくれたのね。」

もう、出かける支度をしていた所だった。






「うらら、そろそろ時間。」と、フダちゃん。


「あ!大変。じゃ、きょうはクルマで行こう!みんな、支度したら

わたしの車へ」

と、うららさん



僕は、ぽけっ(笑)


「あ、キミも乗ってく?大学、楽しいよ。講義ないし。

見学してけば?」と。


「はい。」



「フダちゃんはよし、スズちゃーん、靖子ちゃーん、陽子ちゃーん、マサエちゃーん!」



うららさん、リーダー(笑)。



「もうすぐ、お掃除さんが来てくれるから。そのままでいいわ。」と、うららさん。


僕は、表に出てみると。


アイヴォリーのVWバスが、停まっていた。


「空冷だ、珍しいなぁ」と、僕が言うと


「そう。叔父のなの。借りてきた。沢山乗れると便利だし。」と。


玄関から、陽子さん、スズちゃん、靖子さん。

それぞれにお洒落な服装。



靖子さんは、白いシャツにスカートと

おとなしい。


色白なので、よく似合う。


「美人でしょー。靖子ちゃん。山形美人なの。手だしちゃダメよ」と

うららさん。笑う。


靖子さんも、にこり、と笑う。


笑うとかわいい(笑)。



「あーとは、マサエちゃんか。あいつめー。」とうららさん。



スズちゃんが「呼んでくるー。」と。

言ったら、出てきた。


まだ眠そうに。


「これ!マサエ、なんばしょっとか!」と、うららさん。



「九州ですか?」と聞くと


「うんにゃ、茨城だっぺ。」と言うので

みんな、笑った。




VWバスに乗り込んで、小窓を開けて。


セルモータが、きゅるきゅる。


「バッテリーが少し弱いみたい」と、僕が言うと


「あとで見て」と、うららさん。



エンジンは、でも、掛かる。


お掃除のおじさん、おばさんたちと

入れ違いに走っていくVW。


うららさんは片手を上げて、ご挨拶。


凛々しい。



「大学は山の手だから、スクールバスがあるんだけど

夏休みは運休」と、スズちゃん。



「時々、学校に出るんですか?」と、僕が聞くと



「そう。3年、4年はね。卒業制作があるし。」と、フダちゃん。



「あたしはないけど」と、後ろからマサエちゃん。


「ないんですか?」と僕が聞くと


「だって音楽科だもん」と。


靖子ちゃんもこくり。



「いいわねぇ、音楽は。消えちゃうし。」と、うららさん。


「でも、試験はありますけど。作曲とか。」と、マサエちゃん。



「音楽学校もあるんですか?」と、聞くと


「そう。芸術系学校なのね、ここ。」と。スズちゃん。



音楽大学と、専門学校があって。

他に、演劇もあるらしい。


「美大だと思っていた」と、僕が言うと


「それは、そう。隣にあるだけだから」と、うららさん。



「スーパーで、音楽って?」と僕が聞くと


マサエちゃんが「ほら、休憩室で鳴ってたBGMとか、CMソングとか。

ああいうの作ったり。音響デザインとか。」と。


いろいろあるんだな、と思う。



「うちの会社はちょっと、変わってるから。福祉の思想ね。」と

うららさん。


「それは、僕も感じてます。前、バイトしてたから。」と、僕が言うと


「あ、それで陽子ちゃんと・・・か。」と、フダちゃん。



「まあ」と、僕と、陽子さんは

ちょっと恥かしくなった(笑)。




「じゃ、お知り合いになったのはいつごろでー。」と、マサエちゃんが言うと



フダちゃんが「新婚さんいらっしゃい!、じゃないんだから」と。



みんな、笑顔。



「さ、着くよー。」と、うららさん。

山道の、曲がりくねった道路を

ゆっくり登ると、大きなキャンパスが見えて。


並木道。


左右に、テニスコート、グラウンド。


建物、いくつか。


その、奥まで行って

VWバスを停めた。


「普段は、車じゃ来れないけど。停めるとこないから。

でもまあ、きょうは休みだし。」と。



「キミはどうする?」と、僕に聞くから


「景色でも眺めて、学食カフェかなにかでのんびり」と言うと


「キミ、分かってるね。学食はそっち。なんか飲み物はあるでしょね。」と

うららさんは、てきぱき。



それぞれに流れ解散。




陽子さんは「じゃ、あとで・・。」と、にっこり。



そういえば、何も話してなかった(笑)。






案外な山の上なので、景色はいい。








街を見下ろしていて、思い出した。


「あ、原田さん・・・珈琲飲もうって。」


お話、したかったな。


「でも、どうしよう?・・・あ、そうか、電話掛けよう!」


学校の玄関は、バスロータリーになっていて

電話ボックスがある。


「さて・・・電話番号は。」


置いてある電話帳は、日に焼けて反り返っていて

ペーパクラフトの造花みたい(笑)



「えーと・・・スーパーマーケット、と。」


職業別で探すと楽だ。


「あ、あった。」


10円玉入れて、ダイアルを回す。


じー、ころころ、じー・・・。



呼び出し音・・。


かちゃり。



さっきのガードマンのおじさんの声だ。


まだ開店前なので、社員はいないらしい。



「あ、あの、さっき僕、原田さんと話していた者ですが・・・・。」


と言うと、ガードマンのおじさん



「ああ、さっきの子。何?」


と言うので「原田さんにちょっと用事があって。」


と言うと、ガードマンのおじさん「キミ、あ、いえ、あなたは

原田部長の・・・お知り合いですか?」




原田さん、部長なんだ。へー。


偉くなったなあ。と思いつつ。



「はい、以前お世話になったものです。町野と言います。

原田・・部長はいらっしゃいますか?」




ガードマンのおじさん「今、会議中ですから、お託でしたら・・・。」と


言うので


「それではお伝え下さい。僕は町野ですが、丘の上の大学に来てしまって

お昼までには戻れないかと思います。お誘いありがとうございました。残念です。」


と。

ガードマンのおじさんは「了解致しました。お伝えいたします。それでは失礼致します。」





へーぇ。本社の部長って言うと、偉いんだろうなぁ。


どの位偉いのか知らないけど(笑)。



気さくで、いい人だな。




それから僕は学食に行って、お昼のメニューを見ていたりして。



スタミナ丼。

ラーメン。

カレー。

きょうのランチ。


ふつうっぽいけど、結構お洒落で


カレー、と言っても

銀のお皿に盛ってあり、ルーは、別。


スープとサラダつき。

230円。


「安いなぁ」



まだ、お昼に早いから・・・。





コーヒーを頼もうか、と思ったけど


ティーサーバーに、麦茶とお茶が

飲み放題になっているから(笑)


それにした。


なにせ、苦学生である(笑)。





ひろーいテーブル。長いのとか、4人掛け、6人掛け。


いろいろ。

壁際にひとり掛け。



「バラエティがあるね。」



壁には、なんだか分からない絵とか(笑)。


芸術学校らしい。



演劇のリサイタルのポスター。


音楽会。


クラシックの演奏会。



「いいなぁ、大学」



僕は、行けないだろうと思っている。


お金、ないもんね(笑)。






麦茶は、結構濃くて美味しかった。


「お水も美味しいね」と、思う。




「あ、ここにいたの。」との声に気づく。



陽子さんがにっこり。


「お休み時間?」と僕が聞くと


「うん。きょうはね、自由制作みたいだから。」と。


後で、夏休みの終わりに出す、宿題みたいなものだけど


持ち帰って作れない時は、学校で作るそうだ。



「どんなの作ってるの?」と、尋ねると


「立体造形」と、陽子さん。



「見せてよ」と言うと


「見てもわかんないと思う」と、壁にある絵を指差して。


「そうだね」と、僕も笑う。


芸術ってわかんないな。


音楽なら分かるけど、あれもクラシックみたいなのは

よくわからないのもある(笑)


ジョン・ケージとか。




窓の外を見ていたら、真っ赤なコスモが登ってきた。


「あれ?もしかして。」



バスロータリーの手前のパーキングに停めて。



原田さんが降りてきて。


「あ、陽子さん、原田さん!部長なんだって。」



陽子さんは「うん、知ってる、社員だもん」



僕は「そっか」と、笑って。



表に出て。


「原田さーん、こっちですー。」



ロータリーを歩いていた原田さんは、駆けて。


若いなぁ。気取ってないなぁ。



僕も、駆けていった。



「すみません、来てくださって。」と、僕。


原田さんは「いや。沢口くんの学校を見たいのもあって。

すごいねー。ひろいねー。」

と、はっきりした言い方が、愛らしい。



陽子さんも駆けてきて「原田部長、お世話になっております。」



原田さんは「社外では部長はなーし!」と、笑う。


みんな、笑顔になった。



「そっか。町野くん、バイト辞めたんだってね。」と、原田さんは言うので



「はい、いろいろあって。」



原田さんは「うん。聞いてる。災難だったね。僕が知ってれば

なんとかなったんだけど。今は?」



僕は「ちゃんこ鍋屋さんでバイトしてます。」

と言うと、原田さん



「おー、あそこの店長知ってるよ。GT-Rに乗ってる。

そうか、あそこか。バイト料いいもんな、あそこ。

もしさ、町野くんが、卒業したらさ。

うちの会社に、もし良かったら来てね。


人事に言えば、入れるよ。


そうすれば、沢口くんみたいに・・その、奨学金出るし」



と、原田さんはすごい事を言ってくれた。



「ありがとうございます!」と、嬉しく思った。


そういう事を言って貰える程、何もしていないのに。



思いやりっていいなぁ。


そう思った。





それから、原田さんは次のお店に行くからと

真っ赤なコスモに乗って。手を振って

走っていった。


陽子さんと僕は、見送って



「いい人だね、原田さん」


「ほんとね・・・・・。」



あの人に恥じないように、しなくちゃな。


そんな風に思った。






「午後からは休み」と、陽子さんが言う。


「仕事も?」と、僕が聞く。



学食には、少しづつ

学生さんの姿が見えてきた。

10時半くらいか。


丘の上の学校なので、クーラーが無くても涼しい。


遠くに富士山が見える。



「そう。仕事は休みの日なの。」と、陽子さん。


「うららさんたちも?」


「そう。みんな、休日をずらしたの。」と、にっこり、陽子さんは

そうしていると、最初に会った時よりも少女っぽく見える。


学校なので、メークアップをほとんどしていないのもあるかな。



「なんか、邪魔しちゃったみたいな・・・。」と、僕が言うと



陽子さんはかぶりを振り「ううん、みんな、あなたに会って見たかったんだって。」


と、にこにこ。




「女の子だなぁ」と、僕は思う。




僕らは、あんまり、友達の彼女がどんなでも

気にすることってないけど(笑)



陽子さんが教室に戻ると言うので

僕は美術教室の方へ、ふらふらついていって。

見学をしながら。


美術科、と言うか

美大の建物は、ここの正面にあって。


元々は美大だけだったけれど、子供の数が増えたので

短大、専門学校。


音大、演劇学校。


とか、増やしたそうだ。


いくつかの楽器メーカーとか、画材メーカー等の

協力があったそうだ。



「まあ、そうすると芸術に親しむ人が増えていいよね。


と、僕は思う。



小学校の頃、ブラスバンドが作られて

僕は、ちょっとだけトランペットを吹いたりした事があった。


冗談で「タブー」を吹いたりして


よく叱られた。



そういう風に、楽器に親しむのもいい事だと思う。


「絵もそうなんだろうなぁ」と。


絵の具の匂いのする、廊下はちょっと暗い。

だいたい、絵画のあるところは日射を嫌うので

そういう感じ。



どこかで裸婦デッサンでもしていないかと思ったが(笑)


それは残念ながら、無かった。



真剣に、何かを描いているようだ。



陽子さんは「立体造形」と言っていたから・・・。



彫塑みたいなものかな、なんて思って。



とことこ歩いてみる。



「おお、キミか。」と、聞き覚えのある声は


うららさん。



あちこち絵の具のついたエプロンをして。

シルバーフレームのメガネを掛けて。


「はい。知的に見えますね。メガネ。芸術家みたい。」


と、僕が言うと


「私は、知的なのかな?元々」と、楽しそうに笑うと

可愛い笑顔になって。


とても魅力的。



「うららさん3年生なんですか?」と聞く。


「そう。今が一番楽しいね。」と。にこにこ。


「来年は卒業だから?でも、就職先は決まってるでしょ?」と、僕が言うと


「卒業制作がダメだと、出られないもの」と。



「絵って、そういうもの?」と、僕が言うと


「そういうものなの。」と、にっこり。


でもだいじょうぶよ、と。


「陽子ちゃんは立体だから、大抵大丈夫ね」と。うららさん。


「なぜですか?」



「あのジャンルは結構、まだ新しいから。評価が割れても問題ないし」




と、うららさん。



「なーるほど」



「それに短大だしね」とも。



「作家になるのに学歴って関係ありますか?」と尋ねると


「ない。ないわね。才能だけね。でも才能ってひとが決めるの。

多くの人が『いい』と思うのが才能」と。うららさんは凛々しく。


ちょっと仰ぎ気味に、空を見て。



「まあ、僕にはわかんないけど」と言うと


うららさんは楽しそうに笑い「そんなもんよ」



「音楽なら分かるけど」と言うと


うららさんは「じゃ、音楽科の方へ行ってみたら?楽しいわよ、きっと」



と。


それじゃ、そうするかな、と


元来た道を戻って、玄関の方へ。



「えーと、音楽科はどっちかな」と。



ふらふら歩くのも楽しい。






隣り合っている建物が、どうやら音楽学校らしい。

僕は、そっちの方へ歩いていくと・・・。


聞こえる、聞こえる。楽器の音とか

歌。


なんとなく、セッションっぽいサウンド。



白い建物は、美術科と同じだけど

すこし、天井が高い。



1階の、右手には


この手の学校に良くある、ピアノのブースがいくつも並んでいる小部屋。

各々で、練習をしたり、作曲をしたり。



その、小部屋のひとつで

さっきの靖子さんが、真剣そうに何か、難しそうなピアノ曲を弾いていた。


「上手だなぁ」と、思っていたけど


一生懸命なので、声は掛けずに廊下を進む。


中央階段みたいな所が、ホールになっていて

オルガンがあったり、ピアノ。


学生たちが、めいめいに自分の楽器を持ってきて

音を出している。


クラシックっぽい練習をしている。

基礎、かな。良くは判らないけど。


僕は、オルガンの蓋を開けて

小さな音で、ちょっと、軽く。

コモドアーズの「マシン・ガン」の、最初のところを弾いたりして遊んだりした。


そうすると・・・。


誰かがギターで入ってきて。


ドラムが、支えてくれて。


セッションになってしまったので


次は、スティービー・ワンダーの「I wish」


これも、難なくつながる。



軽く遊び終わると「キミ、何年生?」と、

ギターの青年が声を掛けて来た。


「いえ・・ちょっと、知り合いのところに遊びに来てて。

僕は、まだ高校生です」



と、言うと、その青年は、ハンド・クラップを1回「へー。驚いた。上手だね。

暗譜で。かなりオリジナルになってたし。」




・・・そうなんだ(笑)そのままだと思ってたけど。



それで「譜面見てないんです」と言うと


ドラムの、こちらは女の子が「耳コピかー。それで。あんなに。

ねね、うちの学校においでよ。先輩がいるの?誰?」



僕は「えーと、マサエさん、靖子さん」


その子は「うん。知ってる。楽しいね。あの子たちも。

呼んであげようか。」


と言ったけど「いえいえ、勉強の邪魔すると悪いし。」と言うと


ギターの青年は「マサエちゃんなら作曲だから、2階にいるんじゃないかな?

曲を詰めてるでしょ。でもキミも作曲向きだよね。いつもオルガン?」


と聞くから「普段はギターだけど、好きなのはサックスかな。」


と言うと、ドラムの女の子は「SEXじゃなくて?」と


明るく言うので、みんな笑った。



ドラムの女の子は理佳ちゃん、と言う子で

青森から上京、ここの音楽大学に入ったとか


「芸大はおちちゃって。へへ」



と、笑っていた。



ギターの青年はジョージ、と言うから



「アメリカ人ですか?」と言ったら


「まさか。譲治さ。」と言って


「何か弾いてみて」と、ギターを渡してくれたから


ジョージ・ベンソンの「ブリージン」の、最初の所の

フィル・アップチャーチのギターを弾いた。



「うんうん、綺麗な音。」と、譲治さん。



「ありがとうございます」と。



「ねね、SAXだったらあるよ。なんか吹いてみて?」と。

理佳ちゃんが古そうなアルトを持ってきたから


「ほんじゃ」と


デイヴ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」を

さらっと。



「うんうん、上手上手」と、理佳ちゃんは

ドラムを叩いてくれて。

「ジャズは難しいな」とか言いながら。



そこに・・・・。「あ、町野くん。」と、マサエさんが

何か、譜面を抱えて

階段を下りてきて。


すこし大きめの丸メガネが、かわいい。

ソヴァージュ・ヘアは肩のちょっと上くらい。


丸顔なので、なんとなくコミカルな。




とてとてとて・・・と、駆けてきて「今の音、いいね。なんか、もう少し」



と言うから「じゃあ、こういうのは?」と


スパイロ・ジャイラ。「モーニング・ダンス」


爽やかな秋のはじまり、みたいなアルトの音が印象的で。


ホールにいた誰かが、セッションしてくれる。


マリンバ、シンセ、ベース。


譲治さんは「そっちに向いてるね。クラシックより。」と。



僕は「ただ吹けるってだけです」と。

理佳ちゃんは「でも、あれだけ吹ければね。スタジオで食えるね」



まーた、おだてないでくださいよ。と、笑ってると


遠くから、靖子さんがにっこりとして、見ていて。


「笑顔、かわいいなあ」なんて思った。





音楽っていいなあ。ホント。








理佳ちゃんも、とても魅力的で開放的。

胸の開いた夏服で、白い肌。

ふくよかで、にこにこ笑顔。

SEX、なんて言う

ちょっと刺激的な子。


・・・こんなふうに、大人になっていくなら。


都会の暮らしってのも、いいんじゃないかな、なんて思ったりもした。



アメニティ青池のみんなも、そうして大人になっていったのだろうかな、なんて

思うと


そういうのをふしだら、とか

そういうふうに見るのも、ちょっと違うのかもしれない、なんて思ったりもした。



楽しいのなら、それはそれでいいんじゃないかな。

無理して真面目に振舞わなくても。



そして、陽子さんがもし、そうなったとしても

それはそれで、魅力的な大人になっていくのかもしれないな、とも思う。



これから、そういう事がないとも言えない。




「歌は好き?」と、理佳ちゃんがにこにこするので


まるいお顔でそういうと、ほんとにかわいらしい。


「そだね」と、僕は言って


5th dimentionの「aqarius - let the sunshine in」の、最初の所を

オルガンで弾いて。


アルトのパートを、ちょっと歌うと




理佳ちゃんは、同じところのハーモニーを歌って。



1コーラスで、テナー、バリトン、ソプラノが入る所で


ホールのみんなも、歌いだした。


靖子さん、マサエさんも歌ってて。

楽しそう。



理佳ちゃんはドラムに戻る。譲治さんはギターへ。


僕はテナー・パートに戻りながらオルガン。



let the sunshine in に入って


エレキ・ベースが入ってきて。


僕も、あのテナー・パートを歌った。


リードボーカルのシャウトは、誰かが入ってきて。



ひとしきり歌い終えると、みんな、笑顔 、歓声。



「楽しいね!」と、理佳ちゃん。



「音楽っていいね。」と、マサエさん。


靖子さんも楽しそう。



「こういうの学園祭でやるといいね」と、ジョージさん。



「そうですね」と、僕・・・。



ホールの隅から、先生だろうか、おじいちゃんが

にこにこして見ていた。



「ね、うちの学校においでよ、ホントに!」と、理佳ちゃん。


僕は「はい、入れれば。」



「時々遊びにおいでよ」と、ジョージさん。


3年生かな?


「でも、僕は学生じゃないし・・・。」と言うと


「それはいいの。音楽ってそういうものだからって。ここの校風。」と

理佳ちゃん。







「ミュージカルもやるのよ。演劇科と一緒に。

まあ、『ヘアー』はやらないけど。」と、理佳ちゃん。


みんな笑う。


ヘアー、は、ヌードのパフォーマンスがあるの(笑)。



「『黒い炎』とか、やりたいね」 と、ジョージさんは

あの、前奏のギターを軽く弾いたり。



「ブラスがかっこいいですね」と、僕。




「そうそう!トランペットがね、突き抜けるようで」と、理佳ちゃん。




そういうと、ホールに居た誰かが、そこのトランペットを吹いたりして。




ちょっと間違えてて、みんな、笑う。



「練習しなきゃね」と、ジョージさん。









理佳ちゃんは「靖子ちゃんを訪ねて来たの?」と聞くので


僕は「はい、あの、靖子さんは僕の友達の、友達で」と言うと


「世界に広げよう、友達の輪っ!」と、ジョージさんが言うので


みんな、わはは、と。笑った。


笑っていいともかいな(笑)。






「ミュージカル、面白いね、それ」と言ったのは


小柄でスリム、知的な感じ。

ウディ・アレンによく似てる。


「ああ、渉くん。」と、理佳ちゃんはにっこり。


「演劇の渉君なの。企画が面白いの。」と、理佳ちゃんは言う。



ジョージさんは「それじゃ、やる?『ヘアー』。渉ちゃん踊ってよ。」


と言うと、渉さんはいえいえ、と

大袈裟に手を振ったので、みんな笑顔になる。


「でも、演劇にも音楽って要るからさー。時々は一緒にやろうよ。」と。


一同、うんうん。



頷く。



「じゃ、渉君、彼、見学者。名前は、えーと・・・なんだっけ」と、理佳ちゃんは笑う。




「町野です。タマって呼んでます、みんな。」と、僕が言うと


渉くんは「タマちゃんね。うん。いいね。うちにもいるよ、にゃんこだけど」


と言うと、また、みんな笑う。


「じゃ、タマちゃん、演劇科も見てってよ。ダンスやってるから。」と、渉さんは

そういうので・・・。




ついでに(笑)





演劇科は、この建物の隣。


「元々美術学校だったから、音楽と演劇はオマケ」と

渉さんはコミカル。


お芝居みたい。


歩きながら、オカマちゃんの仕草真似をしたり。


「うまいなー。」と、僕が拍手したりすると


「タマちゃんもやってみれば?」



えー無理です。と言うと


「キミは元々女の子っぽいものね」と。



渉さん。


「よく言われます。」


と、僕が言うと


「そうでしょ?演劇向きだよ、それ。面白いと思うよ。」


と、にこにこしながら、隣の建物へ。


結構平たい感じで、広い。


敷地は、森に面しているので

木々の中で、なんだか衣装を着て

8ミリかな、映画を撮ってる人もいる。



「ああいうのもやってるんですか?」


と、聞くと


「まだ同好会だけどね。そのうち大きくなったら

作るんじゃない?映像科。

芸術学部であるもの、そういうの。」




「何にも知りませんでした、僕」と言うと


「まあ、そうだよね」



と、ひろーいエントランスを入ると



木の床で。まだ新しい。


体育館くらいの広さのところで、体操かな、柔軟のようなことをしていたり


音楽にあわせて動いたり。



数人タイミングを合わせて、跳んだり。




空中回転したり。



「かーっこいい!」と、僕が言うと


渉さん、にやり。「やってみたい?」



僕は「いえいえ、運動は苦手で、逆上がりできないもの。」


と言うと


「鉄棒はないよ。ははは。音楽に合わせて踊るだけでも楽しいでしょ?」と。


掛かっていた音楽に合わせて、すっ、と、軽く跳んでみて。


スピン。着地。



「かーっこいい!」と、僕、拍手。



「ディスコくらいなら踊れるけど」と、僕が言うと

「ほんと?じゃ・・・。」と。


どっかからラジカセを持ってきて。


ボタンを押した。



掛かった音楽は、あの「怪僧ラスプーチン」だったので


近くでダンスしてた人たちが、笑った。



僕は、あのコサックふうダンスをちょっと踊ってみた


歌いながら。


「上手いじゃない!歌いながら踊るってすごい!」と、渉さん。


僕も楽しい。



近くにいる人たちも、同じダンスをし始めたり(笑)。



そんなこんなで、アース、ウィンド&ファイアーとか、踊ったりして


「なんか、ディスコ大会になっちゃったね。」と、渉さん。



「ダンス楽しいですね」と僕が言うと


「そう、それでミュージカルをね、こういうダンスでやってみたいワケ」と

渉さん。



「なーるほど。」



「キミ、曲作れるでしょ?そういうのに、オリジナルの曲を付けたいと思うんだ。」

渉さんはすごい事を考えた。




「作れ・・・てはいないと思いますけど。さっき弾いたのも適当だし。」


と、僕は正直に。



「それでいいの。なんか、キミの演奏好きだよ。自由で。

その方が楽しいもの。

マサエちゃんとか靖子ちゃんとお友達でしょ?

あの子たちにも助けて貰うけどサ。なんかやろうよ。」と

渉さん。



まあ、いいか(笑)と

僕は曖昧に頷いたり。



演劇科でも、ダンスをする人、演出をする人、演劇をする人。


いろいろ。


見ていて楽しい、とっても。


ダンスをする人は、見ていて美しい。


表情もそうだけど、体型が綺麗で

彫塑のようだと思う。



ばねで出来ているみたい。






・・・でも、理佳ちゃんみたいなふんわりの方が

どっちかと言うと扇情的だな(笑)


なんて思ったり。





「あ、ナオミちゃーん、ちょっとちょっと」と、渉さんは


ダンスをしていた女の子を呼ぶ。



体操着、だろうか。

緩いTシャツを羽織って。レッグウォーマ。


ダンスの靴は、上履きみたいな。




「なに?渉くん。」



と、長身の均整のとれた女の子は、欧州の人みたい。

だけど、黒髪で、黒い瞳。


「彼ね、タマちゃん。音楽科のマサエちゃんの友達・・・の友達か。

才能あるんだー。こんだね、ミュージカルのお手伝いをしてもらおうかと。」



と、ヘンな紹介をしたので


ナオミさんは「タマちゃんね。1年?」と聞くから


「1年だけど高校の」と言ったら


「付属の?」と、ナオミさん。


「付属ってなんですか?」と、僕が聞くと



ナオミさんは「ああ、ここね、付属高校があるの」



・・・そうか、それで。


音楽科の人たちも、その付属の生徒だと思ったのか(笑)。



「いえ、県立の。大岡山の。」と言うと


「転校してくればいいのね。」と、ナオミさん、にっこり。


長い髪を後ろで止めていて。


はっきりと、凛々しい。



渉さんは「そうだよ、転校!いいアイデアだ」と。







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