第七章 代表決定戦が始まる
その夕方、リコールが発表された。なんと私達が失格だという。ゴールを切ったときに優先権を無視したのだという。
もちろん強烈に抗議した。明らかにおかしな判定だ。
しかし、審判は覆らなかった。
私達はレースを落とした。しかし、ハルたちも下位に沈んでいた。
その翌日、斜め上からさしこむ強い光線の束が目に飛び込んでくる。私は濃いサングラスを掛けていたがそれでもコンクリから跳ね返る日差しが目に暑い。
マリの方を見ると、彼女は少し俯いている。サンバイザーのつばで真夏の太陽の攻撃を交わそうとしたがうまくいかないようだ。やむなく眉を下げて目を細めた。おでこの傷跡が合わせて片側に下がっている。
「なんだよ、風がねえじゃないか」
マリがポールからダラリと下がったフラッグをみて思わず呟いた。
「予報では強風になるかもしれない、でしたよね」
トップカバーの裾を締めているシートを緩めるために体をかがめながら答え
た。
「当てにならねえな」
マリがぼやく。
「台風の影響ですね。南風が吹きこんできてますが、時間によっては安定しな
いと思います。 海面温度は高そうですが、これも波が高いのでムラが大きい
でしょうね。潮の流れもいつもと違うかもしれません」
我ながら天気予報士のようだ。
「微風だとボロセールにも頑張ってもらわないとなぁ」
マリがマストの先を見上げながら応じた。
「ハルさんたちと4ポイント差ですよね。」
「ああ、このレース、あたしたちが勝って、奴らが3位以下に落ちないと厳し
いね」
マリはもう一度西の空を見つめた。
「微風だと厄介だな」
「なにか策はありますか?」
マリは腕組みをしたまま空を眺めている。まるで空中に書いてある文字を読んでいるようだ。
「ちょっと様子を見てくる」
マリはそう残すとその場を離れた。
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