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「写真といういうのはその字の如く、真を写したものを指すのよ。スマホの画像であろうとも写真は写真だわ」

「な、なるほど……」


 人差し指を立てながら三葉は流暢に語りだした。


 どうやら写真に対しては一家言を持っているようだ。

 さすがは写真部部長というところだろうか。


「むしろ、最近のスマホの進化を考えればこっちの方が写真と呼ぶに相応しいと私は思うのよ。だってそうでしょう。真実を写すのに必要なのは何よりも携帯性と撮影速度。スマホはそのどちらもカメラに勝っているわ」

「え、えーと……?」


 三葉の語りは加熱し加速していく。


 地雷を踏んだということに気付いた頃には、もうその口を塞ぐことはできなくなっていた。


「この現代社会において常時カメラを持ち歩いている人間なんて存在しないわ。対してスマホを持っている人間は? 携帯電話から進化したスマホを携帯していない人間なんていないと言っていいわ。真実を写す手段を誰もが携帯しているというだけでも、スマホがカメラより優れていることは明確ね。

 さらにスマホはその撮影の容易さも特徴だわ。カメラはその種類によって使用方法が異なる。仮に自身の所有している物であればスマホよりも迅速に撮影が行えるとしましょう。でも、初めて使用するカメラならどうかしら? カメラはスマホでの撮影よりも、その操作方法が統一され普及していると言えるかしら?

 確かにカメラでの撮影の方がクオリティの高い写真は撮れる。そこは認めるわ。けれど、写真において重要なのはクオリティではなくその内容、何が写されているのかよ。つまり、何かを撮影したいと思ったその瞬間に手元にあって、すぐに撮影ができるのはカメラとスマホのどちらなのって私は問いたいの。

 加えて、最近のスマホはカメラ機能も進化してきてる。カメラにも劣らない写真を撮ることも可能なのよ。もちろん、部長である私もその点は抜かりないわ。この前買い換えたばかりのこのスマホ! ビルの10階から落としても壊れない耐久性と、水深200Mまで耐えられる防水性能を備えているの! このどこにでも持っていける携帯性、はたしてカメラで同じことが出来るかしらね?」


「……とりあえず、そんな深海でスマホを操作することはないと思います……」

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