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「ふぅっ……つい熱くなっちゃったわね」


 まったくだ。

 まさかここまで長い話をされるとは思っていなかった。


 これからは三葉にはカメラとスマホに関する話題は投げかけないように気を付ける必要があるだろう。


「えーっと……そうそう、写真だったわね。これを見てちょうだい」


 ようやく見ることができたそのスマホの画面には、大きなプリンが写されていた。


「これは誰かに食べられてしまったというプリンですか? かなり大きいですね」

「そうよ。これは昨日の夜に家で撮ったの」


 プリンの直径は20センチ弱はありそうだ。

 高さも10センチ程度はありそうなので、文字通り巨大プリンと言って差し支えないだろう。


 プリンの形を保つためなのか、その容器もごてごてとしていてとても嵩張りそうだ。


「これ、かなりレア物のプリンでね。前から狙ってたんだけど全然手に入らなかったの。知ってる? マンモス堂の円盤プリン」

「いえ、ボクは知らないですね……」


『アタシは知ってるぜ? いつだったかにテレビで紹介されてたからな』

『そうなの?』

『確か、マンモスの卵で作ったプリンとか謳ってたかな』


 なんて奇抜な謳い文句。

 おそらく大きいということを強調したかったのだろうが、マンモスは卵生じゃないだろうし、なによりまったく美味しくなさそうだ。


『予約不可で抽選販売しかしてないらしいぜ? ククッ、代償としてシオンに貢がせるのも面白えかもなぁ?』

『勘弁してよ』


 サナへのお菓子の献上は代償としては軽い部類だが、その成否が運に左右されてしまうのではいつ完遂できるかわかったものではない。


「ようやく円盤プリンが手に入ったからみんなに見せてあげようと思って、それで今日の朝に部室の冷蔵庫に入れておいたの。そしたら、放課後にはプリンが無くなってたってわけ!」

「朝にはあったプリンが、放課後にはなくなっていたと……」

「部室なんて誰でも入れるわけじゃないから、すぐに今日部室に入った人間を確認したわ。その結果、写真部の部室に入ったのは私以外では2人だけだったことが判明したの」

「そのふたりが写真部部員だったというわけですね」


 三葉はおさげを揺らしながら大きく頷いた。


 ”部員内の不届き者”という言葉にはこういった裏付けがあったというわけだ。

 まあ、部室内の物が盗まれたとなれば、その犯人は大抵の場合は部員だろう。


「問い詰めたってどうせしらばっくれるでしょ? ふたりともにそんな態度を取られちゃったら、私にはどっちが犯人かなんてわからないかもしれない。だから、探偵さんを頼ることにしたの」

「なるほど、概要は理解できました」

「どう? 犯人はわかりそう?」

「そうですね……」


 ・朝、三葉が部室にプリンを持ち込んだ

 ・放課後、三葉が部室を確認するとプリンは無くなっていた

 ・部室に入った人間は、三葉を含めて3人だ


 いまわかっている情報はこんなところだろうか。


 そうなると、次に知るべきは――


「相田先輩、写真部の部室に案内してもらってもいいですか?」

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