決闘2

「どうだ!我が家宝『滅魔剣・スターレン』の力は!」


 そう言って、ハッハッハと高らかに笑うレイア。

 訓練場に集まっていた野次馬達は、レイアの一言でざわつき出した。少し聞き耳を立てた感じ、家宝を決闘に持ち出したことに驚いているようだ。

 まぁ、そうだよな。家宝をこんな決闘に持ち出して、壊したりなんかしたら大変だしな。ということは、決闘の最中に壊れてしまっても仕方がないってことだよね。


「そっちがその気なら、こっちも出すもん出すからな」

「ハッ!何でも出すがいい。いかな魔道具でも、この剣の前では無力だ!」


 レイアの許可も降りたので、俺はレールガンを取り出した。一瞬、首を全力で横に振っているルイが見えたが、気にしないでいく。


「何を出すかと思えば、そんなおもちゃか」


 レイアは以前に見たことのある魔道式拳銃だと勘違いして、油断しているみたいだ。威力に天と地ほど差あるなんて、微塵も思っていないだろうな。

 俺は人が死なない程度の威力に調整しながら、レールガンをレイアへと撃つ。高速で放たれる弾丸に驚ろいた様子をみせつつも、レイアは剣で弾丸を受けた。だが、弾丸の威力を殺し切れずに後ろへ下がる。


「なんだ!今のは!こんなの聞いてないぞ!反則だ!」


 突然何を言い出したかと思えば、わがままな文句だった。あいつは自分が決めたルールを忘れたのだろうか?

 仕方ないので、俺はレールガンが歴とした魔導具であることを説明してやった。いったい、決闘中に何をやってるんだか。

 説明を聞いたレイアは「そんな魔道具なんて!見たことないぞ!」と、さらに食い下がってきた。そんな魔道具は知らないから使用禁止だ、なんてわがまますぎるだろ。


「なら、その剣も使用禁止だろ。そいつは魔道具じゃないだろ」


 グチグチうるさいので、レイアの剣に文句を言ってやると、図星で言い返せないのか黙ってしまった。


「どちらの武器も使用を許可する。これ以上文句を言うのであれば、その者は降参したものとしてこの決闘を終わる」


 俺達が睨み合っていると、立会人のアーノルドーがそう言った。立会人の決定には流石にレイアも文句を言えないみたいだった。

 アーノルドーを見ると申し訳なさそうな顔をしていたので、問題ないとうなずいてやった。

 それから、アーノルドーの「はじめ」の合図で決闘は再開した。

 レイアのわがままと魔剣の使用にいい加減頭に来ていた俺はさっきよりもレールガン の威力を上げる。レールガンを構え、連続でレイアを狙い撃ちにする。レイアは弾丸を避け切れずに剣で防いでいて、中々攻撃に転じることができていなかった。


「くそ、小癪な!正々堂々と戦え!!」

「うるせー!勝てばいいんだよ、勝てば!」


 こいつは同じことしか言えないんだろうか?弾丸を受け続けるしか出来ないレイアは、口だけはよく動いていた。

 そこからしばらく、レールガンでレイアを振り回して遊んでやった。防戦一方のレイアを見て、鬱憤を晴らした。

 そんな風に攻撃を続ける中で、俺はある事に気づいてしまった。


「そろそろ、降参した方がいいんじゃないか?」

「降参などするものか!」


 まぁ、そう言うよな。でも、あの様子だと気づいてないみたいだな。レールガンの弾丸を受け続けているレイアの家宝が、そろそろ限界だってことに。

 アーノルドーはそのことに気がついているようで、決闘を止めるか迷っているみたいだ。決闘を止めるほど貴重なものだと言うことだろう。それをレイアはわかっていないんだろうな。


「仕方ないな。剣を壊して逆恨みされてもしょうがないし」

「何を言ってるんだ!」

「この決闘を終わらせるって言ってるんだ」


 俺はレールガンを撃ちながら、レイアに近づいて行く。レイアは俺が近づいてきたことに、少し嬉しそうだ。ようやく攻撃ができるって思っているんだろうな。でも、残念。お前の攻撃に当たるつもりはない。


「行くぞ!」

「来い!」


 俺はレールガンの威力を上げて、レイアの剣を弾き飛ばす。剣をなくして上手く防御が出来ないレイアに、改造型『雷玉サンダーボール』を撃ち込む。一瞬の眩い光と共に、「ドーン」と雷が落ちるような音が訓練場に響く。

 改良された雷玉サンダーボールを受けたレイアは軽く黒焦げになり、意識を失ってその場に倒れた。

 最後は少しあっさりしたものだったが、俺は宣言通り決闘を終わらせた。突然の決着に野次馬だけでなく、立会人のアーノルドーまで呆然としていた。


「そこまで!決闘の勝者はアマウチ・ケイ!!」


 正気を取り戻したアーノルドーの宣言で、決闘は終了した。レイアが勝つと思っていたであろう野次馬達は、この大番狂わせに盛り上がっていた。

 黒焦げのレイアが医務室に運ばれて行くのを横目に見ながら、俺は決闘場に残された『滅魔剣・スターレン』を拾い上げる。


「それをどうするつもりだ」


 アーノルドーが俺に近づいてきて、少し威圧的に聞いてくる。

 手に持つ剣は既に魔剣の能力を失い、ボロボロのなまくらとなっていた。


「壊しちまったからな、一応直してやろうかと思って」

「直せるのか?」

「元通りとはいかないけど、ほぼ同じような感じには出来るぞ」


 アーノルドーの質問にそう答えると、俺は剣に『構築』スキルを発動した。刀身に入ったヒビは跡形も無くなり、切れ味を失った刃は輝きと鋭さを取り戻す。そして、魔剣の能力を真似した魔導回路を刀身に刻んでいく。そうして、剣は決闘以前の姿を取り戻した。


「ほらよ」


 俺は直した剣をアーノルドーへ渡す。アーノルドーは直った剣を見て、目を丸くしていた。直せると思っていなかったみたいだ。俺をなんだと思っているのか。


「なぁ、なんだか軽い気がするのだが」


 アーノルドーの言葉に俺は「当たり前だ」と返し、新しくなった『滅魔剣・スターレン改』について、軽く説明してやった。

 まず、少し重かったので軽量化の魔法を刻み、さらに切れ味に不満があったので先鋭化の魔法も刻んでおいた。それから、また壊れても困るので硬質化の魔法も刻んでやった。


「軽く地面を擦ってみろ」

「あぁ、わかった」


 アーノルドーは俺の指示通りに、剣を地面に当てる。すると、剣は地面を豆腐のように切り裂いた。


「おいーー!こりゃ、別物だろ!どうなってんだ!!」


 アーノルドーも喜んでくれたみたいだし、もう十分だろう。いい仕事をした!

 俺は待ってくれていたルイと、いつの間にかいた近藤と合流すると工房に帰って行った。

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