決闘前夜

 俺達は前回と同じように、混み合う一層と二層を抜け三層まで降りてきていた。迷宮ダンジョンが初めての近藤は、目をキラキラさせていた。一週間前のあの重い空気はどこへ消えたのやら。


「今回は最初のフロアボス討伐を目標に、第五層まで進もうと思う」

「了解です」

「了解しました」

「おう!」


 今回の迷宮ダンジョン攻略のリーダーは、俺がすることになった。嫌だと拒否したんだが、この中で一番強いからと押し付けられてしまった。

 前回の反省も生かして、今回はゆっくり確実に攻略していく予定だ。三層は迷宮ダンジョン未経験の近藤をメインに進んで行くことになった。近藤の今の実力を知るためでもある。

 迷宮ダンジョンをしばらく進んでいると、狼型の魔物と遭遇した。数は二体。近藤が「ここは俺にやらせてくれ」というので、任せてみることにした。


「よし!牛若丸の実力、見せてやる!」


 もう刀の銘を考えたのか、早いな。もしかして、一周間前からずっと考えてたんだろうか?

 近藤は牛若丸を納刀状態で構え、魔物との間合いを見極めていた。魔物が近藤の間合いに入ると、高速の居合が放たれた。刃は軌跡を残して、魔物の首を跳ね飛ばした。


「すごいですね。これが居合切りですか」


 マイクが感嘆の声を漏らす。確かにすごい居合だったが、実は少し種があるのだ。

 近藤に渡した刀は、鞘と刀本体で一つの魔導具として機能するように作ってある。刃に魔法を刻み切れ味をあげているのはもちろん、鞘にも魔法を刻んである。納刀状態で魔力を鞘に込めることで、電磁加速砲レールガンと同じ効果を抜刀に与えるようになっている。簡単に言えば、抜刀が電磁加速砲レールガンと同じだけ速く強力になるということだ。

 ただ、この機能をさっき伝えたのに、もう使いこなしている近藤もすごいのだが。


「おぉー!牛若丸ぅーーー!!」


 さっきから、興奮しすぎなので褒めるのはやめておこう。

 そこからは順調に進んだ。三層は近藤が率先して戦っていたので、俺達の出る幕はなく四層に突入した。四層ではマイクを前衛に俺が中衛、ルイが後衛で近藤が遊撃という陣形で進んだ。現れる魔物はゴブリンと呼ばれる二足歩行の緑色の怪物で、陣形をとる程度に知能もあった。ただ、現れた端から俺がレールガンで頭を吹き飛ばしていったので、戦闘らしい戦闘はなかった。

 そして、俺達は順調に五層まで到着した。


「慎重に進んできたお陰で、なんのアクシデントもなく来れたな」

「ああ、戦闘もなかったけどな」

「順調ならいいじゃないですか」


 近藤は五層であまり戦えなったので、少し落ち込んでいた。逆に、ルイは順調に進めて嬉しそうにしていた。

 俺達はボス部屋の前まで移動すると、作戦を確認した。まず、俺がレールガンで先制攻撃を行い、マイクと近藤が前に出て戦う。俺とルイが後ろから二人の支援をする。他にも有事の際の対処など、一から十まで確認を行った。


「よし、行くぞ!」

「はい!」

「おう!」


 俺は扉に手をかけ、押し開けた。扉が開くと俺達は陣形を保ちながら、中へと進んで行った。中にはゴブリンキングと呼ばれる、ゴブリンの上位種が待っていた。

 俺はすかさず先制のレールガンの射撃を放った。放たれた弾丸は、ボス部屋にいた全ての魔物の頭を吹き飛ばした。


「お、おわりか?」

「いや、まだ何かあるはず」


 近藤がなにかのフラグみたいなことを言うので、それから少し警戒していたが何も起こらず。俺達はあっけなく第五層のボス部屋を攻略したのだった。


***


 それから、俺達は決闘前日までレベル上げのために迷宮ダンジョン攻略を進め、第十層のボス『オーガ』を倒したのだった。


「ジョブレベルは十二。申し分ないな」

「本当に、明日の決闘で勝てるんですか?」


 ルイが心配そうにしているが、問題はない。正直、迷宮ダンジョン攻略をしていて思ったのだが、レールガンがあれば勝てるんじゃないかとも思っている。でも、慢心をしてはいけない。俺は出来うる限りの準備を行い、明日の決闘に備えた。

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