電磁加速砲

 あれから、刀の改良や他の魔道具の開発などを行い、とうとう免停解除前日になった。

 今日は明日の迷宮ダンジョン攻略に向けて、新しい魔道具の確認をすることになった。そのために、俺達は今日も訓練場に来ていた。


「何から始めますか?」

「とりあえず、『焔塊ファイアボール』からやるか」


 俺とルイは一つずつ改良した魔道具の確認を行なっていった。

 まずは、『焔塊ファイアボール』の魔道具を構える。魔力を込め、的に狙いを定め放つ。魔道具から放たれた焔の玉は一直線に的へ飛んでいき、着弾すると小規模の爆発を起こした。煙が晴れると、そこには穴の空いた的があった。


「いい感じだな」

「指向性を持たせるのは正解でしたね」


 ルイの言う通り、改良した『焔塊ファイアボール』の魔道具は爆発に指向性を持たせた。今までは当てたものを木っ端微塵にするので、魔力効率が悪かった。それを破壊力はそのままに、指向性を持たせることで魔力効率を上げたというわけだ。

 そして、次に取り出したのはミノタウロス戦で活躍したこいつ。『魔導式電磁加速砲レールガン』だ。今までの『魔導式電磁加速砲レールガン』は刻み込んだ魔法の威力の高さに銃身が耐えられず、使い捨てになっていた。ただ、このままでは実戦でろくに使えないので、何度でも使えるように銃本体と魔導回路に改良を加えた。今回は威力の確認と、どこまでの威力なら銃身が耐えられるかを確かめてみることになっている。


「まずは出力三割くらいで撃ってみるわ」

「了解です」


 『魔導式電磁加速砲レールガン』に魔力を込め、的に狙いを定める。魔力が込められると『魔導式電磁加速砲レールガン』から電気が走り始める。そしてトリガーを引き、弾丸を放つ。放たれた弾丸は光の軌跡を作り、的を貫通して背後の壁を穿った。


「さっきの『焔塊ファイアボール』と、同じくらいの貫通力がありますね」

「そうだな。でも、まだ『焔塊ファイアボール』の方が威力は高いな」

「次は六割でいってみましょうか」

「そうだな」


 ルイが言った通り貫通力は申し分ない。だが、まだ破壊力が足らない。

 俺は『魔導式電磁加速砲レールガン』を構え、魔力を込める。次の的に狙いを定め、トリガーを引く。放たれた弾丸が通った後を、ショックウェーブが走っていた。狙った的は跡形もなく吹き飛び、背後の壁に穴をあけていた。


「あっ」

「今度は少し、威力が高すぎたかもしれませんね」


 ルイの言う通り、思ったよりも威力が出ている。訓練場を囲む壁は魔法で保護されていて、そんな簡単に壊れるものでもない。それを貫通するレベルであれば、大概の魔物は屠ることが出来るだろう。


「一応、最大限の力も確認しておくか?」

「そうですね。すでに穴は開いてしまっているので、一つ増えても一緒ですよ」


 ルイはそう言って苦笑いする。なんだが最近、ルイが色々と大雑把になってきている気がする。

 ただ、ルイの言う通り穴は既に空いている。なので、結局怒られることに変わりはない。

 俺は最大限まで『魔導式電磁加速砲レールガン』に魔力を込めると、的に向かって放った。放たれた弾丸が通った後の地面は抉れ、的は蒸発し背後の壁は跡形がなくなるほどに破壊されていた。


「さすがにやりすぎたかな」

「そうですね」


 最大限の威力には耐えられず壊れた『魔導式電磁加速砲レールガン』を手に、俺達は反省した。

 その後、駆け付けた城の衛兵さんとクレアにこっぴどく叱られたのは言うまでもない。


***


 次の日、免停が明けた俺達は迷宮ダンジョンの前にいた。今回のメンバーは俺とルイ、マイクに近藤だ。近藤は俺達の免停期間中に、しっかりアイアン級になっていた。


「お前すごいな」

「冒険者になって二日でシルバーになったやつに言われてもな」

「それもそうですね」


 褒めたのになんだか釈然としない。それにマイクの態度が段々と適当になってきている気がする。

 それと、近藤は見るたびに侍っぽい格好になっていたのだが。今日はとうとう、侍そのものみたいな格好になっていた。そこに渡したミノタウロスの刀を差しているので、完全に侍だった。


「この刀があれば、俺は鬼に金棒だ!」

「そうか、よかったよ。その刀、まだ銘がないからいい感じのつけてくれ」

「おう、ちゃんとしたの考えとくわ」


 近藤は刀を渡してからずっとテンションが高った。少しうざいが、気持ちはわからなくもないので放っている。

 今回も長い待機列を抜け、俺達はようやく二度目の迷宮ダンジョン探索に挑むのだった。

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