シルバー級冒険者

 次の日、素材と報酬を受け取りにギルドへ行くと、そこはお祭り騒ぎだった。どうやら、迷宮ダンジョンの隠し部屋発見でみんなが盛り上がっているらしい。


「おい、隠し部屋発見者達の登場だぞ!」

「あんな、若いのがか?」

「なんでも、登録試験の時にゴーズの野郎をボコボコにしたらしいぜ」


 あちこちから色々な声が聞こえてくる。事実におひれがついていたり、根も葉もない噂だったり。とにかく、何でも聞こえくる。

 ただ、直接絡んでくる奴がいないのは、ミノタウロスの件が広がっているからなのだろう。やはり、スキル持ちの魔物はそれだけ危険視されているということか。


「なんか、落ち着きませんね」

「そうだな」


 報酬を受け取るのに受付で待っていると、ルイがそう口にした。確かに、これだけ見られてると、うざったく感じるな。

 そんな事を思っていると、応接室でギルマスの爺さんが待っているらしく、受付嬢さんが案内してくれることになった。


***


 応接室に入ると、そこには爺さんとゴーズが待っていた。俺達が席に着くと、爺さんは隠し部屋の件について話を聞かせてほしいと話始めた。


 まず、隠し部屋を見つけるまでの流れや、発見時の状況などについて説明した。魔道具で壁を吹き飛ばしたと言うと、何故か頭を抱えて「そんなのありなのか」などと呟いていた。


 次に、隠し部屋に入った後のことについても説明をした。戦闘開始時に突然ミノタウロスが現れたことについて話すと、少し怪訝な表情を浮かべていた。それから、ミノタウロスの発動したスキルの特徴を伝えると、やはり『狂戦士バーサーカー』だろうということになった。さらに、トドメの一撃となった『魔導式電磁加速砲レールガン 』についても話をした。「あの穴はそういうことなのか」と、この話にも頭を抱えてていた。


 爺さんは俺達の話を聞き終わると、一層頭を抱えてしまった。何故か、ルイが爺さんに「わかります」と言っていたが、何がわかるというのか?わからん。


「ひとまず、話はわかりました。ゴーズから聞いていた話と合わせても、齟齬はないようですな」


 爺さんは俺達の話を一通りメモすると、そう言って顔をあげた。そして、待機していた受付嬢さんに合図をすると、受付嬢さんは一つの袋が乗ったトレーを持ってきた。


「これは角と目を除いた、ミノタウロスの買取額です。確認してください」


 そう言うと一枚の紙を渡してきた。そこには、思っていた以上の金額が記されていた。何かの間違いなのでわないかと、爺さんに確認したが事実なようだ。それから、一応角の査定額も出してもらったが、そこには一枚目の倍以上の値段が記されていた。それだけ、貴重な素材であるということだろう。


「大丈夫そうですかな?」

「大丈夫です」


 「それから」と爺さんは、隠し部屋発見の報償を出してきた。そこには一枚目の紙と同じだけの額が書かれており、俺達は冒険者三日目にして大金持ちになった。素材は相談通り俺とルイに、報酬は山分けすることになった。


「そして、最後になりますがこちらを」


 そう言って爺さんが取り出したのは、シルバー級冒険者に発行されるドッグタグだった。そこには俺とルイの名前が刻まれていた。


「見てわかるように、あなたたち二人をシルバー級冒険者として認定させてもらいます」


 爺さんは理由は色々ありますがと続け、「実力自体は試験でわかっていたのですが、隠し部屋発見の功績を口実に上げさせてもらいました」と言った。

 こうして、俺達は冒険者生活三日目にしてシルバー級冒険者となったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る