隠しボス

 開かれた隠し通路は、奥の方に見える扉まで真っ直ぐに続いていた。


「おい、絶対やべえって。あんな扉、ボスフロアでしか見たことねーぞ」

「そうですね。何か危険な感じがします」


 ボスフロアを経験しているゴーズとマイクが、扉に危険なものを感じていた。

 そういえば、マイクもいたな。今まで、完全に空気だったから忘れてた。


「ひどいですよ、ケイさん。一緒に戦ってたじゃないですか」

「だって、俺より後ろにいたし。それに、全然喋らなかったからー。ごめんって」


 などと、くだらないことを言いつつ、俺とマイクは隠し通路へと進んでいった。だが、その後ろでゴーズとルイは足を止めていた。


「おい、本当に行くのか?一旦戻って、報告した方がいいと思うぞ」

「僕もそう思います。少し慎重になるべきです」


 ゴーズがまともなことを言っているが、確かにその通りかもしれない。だけど、好奇心が止められない。それに、楽観的かもしれないが何とかなる気がする。


「確かに、危険性はあると思います。ただ、ケイさん達の戦闘を見ていて、少なくとも十層レベルの戦闘力はあると思いました。これは贔屓でも油断でもありません」

「たしかに、ギルマスに傷をつける程度には実力があるけど」


 「俺は傷一つ付けられねぇのに」と、ゴーズにも実力を認めてもらえてるみたいだ。それでもルイは心配そうにしていた。


「大丈夫だよ。最悪の場合は、当たり一帯消し飛ばすからさ」

「だから、心配なんですよー」


 心配を晴らしてやろうと思ったら、何か違ったらしい。それでも、「仕方ないですね」と一緒に行ってくれるようだ。

 俺達はようやく、隠し通路を進んで行くことになった。開かれた隠し通路には魔物はおらず、扉まで真っ直ぐに進んで行った。


「おっきな扉だな」

「あぁ、やっぱりボス部屋だな」

「ボス部屋ってどんなとこなんだ?」


 俺の質問に、ゴーズとマイクが軽い説明をしてくれた。まず、ボス部屋と呼ばられるエリアは、基本的にボスフロアにしかないものであること。

 部屋には扉があり、扉は外側からは開けられるが、内側からはボスを倒さない限り開けられないこと。部屋の中にはフロアボスと呼ばれる強力な魔物がいること。など、簡単なことを聞いた。


 ルイにはそんなことも知らずに来たのかと、呆れられた。解せぬ。


「ひとまず、扉を吹き飛ばせるか試してみるか」

「なんてこと、しようとしてんだ」


 万が一の時に、脱出できるよう試そうとしたら止められた。

 そこで少し揉めていると、隠し通路に他の冒険者達が集まってきた。やっぱり、さっきの爆発は目立ちすぎたみたいだ。


「そこのあなた方。これはどういうことですか?」


 礼儀正しそうな奴が事情を聞いてきたので、ちょうどいいから説明がてら頼み事をした。

 内容は、俺達がボス部屋に入ってから一時間経っても出てこなかったら、ギルドに報告してくれというものだ。


「一時間って、そんなに危険なんですか?」


 彼の言葉の意味は簡単で、ボス部屋の攻略には基本的に二時間から三時間程度かかる。その中で、今回の一時間というのは危険性が高いことを意味するというわけだ。

 だけど、俺が一時間の時間制限にしたのはそれだけが理由じゃなくて、一時間以内に倒し切るという意味も含めている。


「わかりました、あなた達を信じて待ちます。もちろん、一時間経てば報告に行きます。いいですね?」

「あぁ、頼んだ」


 俺達は名もしれぬ冒険者に入り口を任せ、扉を開けた。開けた扉の中は光が無く、不穏な雰囲気だったが、俺達は迷わず一歩を踏み出しボス部屋へと足を踏み入れた。


 

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