迷宮

 次の日の朝、俺達はやっと迷宮ダンジョンに向かうことになった。メンバーは俺とルイとマイク、それと迷宮ダンジョンで合流予定の監督冒険者である。

 城を出るときに、近藤が自分も連れて行って欲しいと駄々をこねたりしたが何とか出発した。近藤は騎士団に押し付けてきたので、今頃ビシバシしごかれていることだろう。



 今向かっているのは、王都に一番近い迷宮ダンジョンであるルーシュ王国第一迷宮。通称『初心者ダンジョン』。難易度が比較的低い迷宮ダンジョンで、アイアン級になった冒険者が一番最初に挑戦するような迷宮ダンジョンだ。低階層は簡素な迷宮ダンジョンの造りで、出てくる魔物も弱いものだけ。だが、深く進むほどに迷宮の造りも複雑になり、出現する魔物のレベルも上がっていく。『初心者ダンジョン』と呼ばれる所以はそこにあるらしい。

 王都を抜け迷宮ダンジョンに向かっていくと、だんだんと冒険者の姿も増えてきた。


「やっぱり、冒険者多いな。狩場があるといいけど」

「そうですね、迷宮ダンジョンがこんなに繁盛しているとは思っていませんでした」

「騎士団の訓練でも時折来ますが、いつもこんな感じですよ。中にも大勢いるので、狩場の奪い合いなんかも起きたりします」

「はぁ、面倒だな。早いとこ、進むのが良さそうだな」


 迷宮ダンジョンの入り口が見えてくると、見覚えのある男がこちらを見ているのがわかった。なんだか、嫌な予感がするが気にせずに入り口へと向かっていく。

 すると、その男が走り寄ってくると。


「お前、今気づいてたのに無視したよな!」


 というので、また無視をした。今度は「もしかして、本当に見えてないのか」なんて、バカなことを言い始めるのでさすがに返事をしてやった。


「なんのようだ、ゴーズ。また、喧嘩したいのか?」

「見えてるじゃねーかよ。あん時は酒も入ってたから、少し言い過ぎた。悪い」

「いやに素直だな。どうした?」


 初めて会った時とは全然違うゴーズの態度に、俺達は驚いた。何があったのか知らないが、少し気味が悪い。


「いや、なんだ。あの後こっぴどく叱られてな」

「そういうことかよ。で、何の用なんだ?」


 思った通りだった。でも、怒られたら態度を改める点だけ見ると、やっぱり素直な奴なのかもしれない。


「お前らの監督役を任されたんだ。よろしくな」

「監督役って、お前だったのかよ」


 嫌な予感は当たっていたらしい。監督役を選んだのは、きっとあの爺さんだろう。ただ、試験で戦った時にも感じたが実力はあるやつだ。人間性も良くなった?と思うことにしよう。


「まぁ、しょうがない。よろしくな」

「おう、任せろ」


 やっぱり心配だ。


***


 ゴーズを加えた俺達四人は、迷宮ダンジョンの入り口の受付へ向かった。受付の前には冒険者達の列が出来ており、初心者ダンジョンが人気なことが伺えた。


「入る前に軽く迷宮ダンジョンの説明をしておく」


 そういうゴーズに、俺達は迷宮ダンジョンについて説明を受けた。


 まず、迷宮ダンジョンの管理は冒険者ギルドが行っているということ。これが、俺達が冒険者登録をしなくちゃいけなかった理由だ。

 それから、アイアン級になったばかりの冒険者が迷宮ダンジョンに挑む場合、監督役が付くということ。俺達の場合はゴーズになる。

 それと、階層の移動について。基本的には階段を利用して行き来するのだが、ボスフロアをクリアするとその次の層まで転移できる魔法石が貰えるらしい。

 他にもこまごましたものはあったが、こんなところだ。


「次の方、どうぞ」


 話をしている間に俺達の番になり、受付を行うことになった。

 俺とルイ、それからゴーズは冒険者証を提示し受付を行う。マイクは騎士団に所属しているため、受付はパス出来るらしい。羨ましい限りだ。


「それじゃあ!初めての迷宮ダンジョンへ!」


 俺達、主に俺とルイは張り切って入り口をくぐり、迷宮ダンジョンの中へと入っていった。

 迷宮ダンジョンに入って最初に目に入ったのは、人。そして、人。人だらけだった。外で待っていた時にも思ったことだが、かなりの数の冒険者が来ているため迷宮ダンジョンは込み合っていた。


「階層を二つも下りれば、人はまばらになる。どんどん行くぞ」


 そういうゴーズを先頭に俺達は初めての迷宮ダンジョンを奥へと進んでいった。

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