登録試験
「それでは、始め!」
爺さんの掛け声とともに試験が始まった。
合図と共にゴーズは走り寄ってくると、そのまま攻撃を仕掛けてきた。事前に聞いていた通り、『剣術』のスキル持ちらしい鋭い剣筋だった。俺は身体強化の魔道具を一つ起動し、ゴーズの剣を受け流す。ゴーズは剣を受け流されたことに驚いたようだったが、続けて攻撃を仕掛けてきた。
試験が始まってからは、ゴーズの猛攻を受け流すことで精一杯だった。剣術のスキルは騎士団の人達も持っているからわかっていたことだったが、やはり魔導具一つでは攻撃に転じられない。もう一つ、魔導具を起動しなくちゃ試験に合格できないな。
「なかなか、やるな!だがな、これを受けきれるか!」
「くっ!もう少しギアを上げるか!」
俺がさらに魔導具を起動しようとすると、それを察してかゴーズは更なる攻撃を仕掛けてきた。さらに重くなる剣戟に対応するため、追加の魔導具を起動させた。
「なめるなよ」と魔導具で高まった身体能力で、ゴーズの剣をはねのける。そのまま、接近し攻撃を仕掛けていく。
「まだ、本気じゃなかったってわけか。こっちも本気でいくぜ!」
「これが全力じゃないんだけど、なっ!」
やっぱり、爺さんの言う通りそれなりの実力者だな。持ってきた身体強化系の魔導具を全部使わないと、勝てないかもしれないな。相変わらず爺さんの表情は変わらないし、アイアン級貰えるかな?
ゴーズとの戦闘はさらに激しく、苛烈になっていった。爺さんは最初から表情を変えずに試合を観察していて、その隣で驚き続けているマイクと対照的だった。
「爺さんの評価にも影響しそうだし、これで終わりにしようか!」
そう言うと魔導具を全て起動し、ゴーズに攻撃を仕掛けていく。戦況の変化に見守る人たちの表情も変わっていくのが見えた。
魔導具の多重使用により、魔力がどんどん減っていくのを感じていた。早く決着をつけないと、試験の合格が貰えないかもしれない。だけど、ゴーズは以外と守りの方が固いみたいでなかなか決め手を与えられなかった。
「そろそろ、終わりにしよーぜ!」
「お前に負けるわけにはいかない!」
拮抗した状態が数秒続いた時、ゴーズの力が途端に抜けた。力が抜け地面に膝をつくゴーズ。何が起きたかわからない俺達をよそに、爺さんが試験終了を宣言した。
「そこまで!この試験はケイの合格とする」
爺さんはゴーズに近づき肩を貸し、立たせる。ゴーズは何が起きたのか、理解したみたいだ。多分だが、スキルの過剰使用による精神疲労だろう。
状況についていけていないルイから、どういうことですかみたいな視線を感じる。仕方なく俺がルイ達に軽く状況を説明していると、爺さんはゴーズを他の人に任せて俺たちのもとに戻ってきた。
「今回の試験、貴殿の力量よく見させてもらった。貴殿の実力はアイアン級に相当すると判断し、ギルドマスターの名をもってアイアン級冒険者の資格を与える」
ルイ達がようやく状況を理解し始める中、爺さんは俺のアイアン級冒険者登録を宣言した。だが、爺さんは残念そうに話をつづけた。
「今回の試験、貴殿の本来の実力を見ることが出来なかった。」
何故そんなことを爺さんが言ったのかマイクにはわからなかったようだが、ルイには言わんとすることがわかったみたいだ。もちろん、俺も何のことだかわかっていた。魔法系の魔道具を使用していないことだろう。魔道具といえば、ド派手に魔法攻撃を繰り出すっていうイメージがあるしな。
「だけど、アイアンで登録してくれるんだろ?」
「あぁ、そのように手配している。だが、君の本当の実力を見せてもらいたいと思ってね」
爺さんは丁寧に話してるけど、なんだか獲物を狙うような目で見てくるんだが。
俺の実力を疑っていたけどゴーズを倒すくらいの実力があって驚いが、もっと隠してる力があるんじゃないかと疑ってるってところだろうな。めんどくさいことになったな。
「見せるって言ったって。俺はもう満身創痍なんだが」
「それは問題ない。最上級とはいかないが、上級のポーションを用意しよう」
どうしても、俺の実力を見たいってわけか。引き下がれそうにないな。
俺達のやりとりを見守るルイ達は、不安そうな表情をしている。ただ、ルイとマイクは違う意味で不安にしているだろうが。
「わかった。やるよ」
「そうか、そうか。ありがとう。それではやろうか」
爺さんはそう言って、俺にポーションを渡すと訓練場の端へと歩いていく。俺は受け取ったポーションを飲みながら、爺さんに質問した。
「爺さんがやるのか?」
「そうです。これでも元ゴールド級冒険者ですから、実力はありますからな」
はっはっは、と笑う爺さんに「わかった」と言って俺は訓練場の反対へと向かう。
今度は魔法系の魔道具を使用できるから、さっきよりもやれることが増える。ただ、ルイとすれ違った時に、周りに被害を与えるレベルのものは使うなと鍵を刺されてしまった。だから、一発デカいのをお見舞いしようとしていた当初の作戦が使えなくなってしまった。
「ルールはさっきと同じでいいんだな?」
「はい。ただ、貴方の全力を見せてください」
「あぁ」と返事をする。今回の試験では、受付をしてくれた彼女が試験官を行うようだ。彼女は爺さんと、俺に確認をとると試験の開始を宣言した。
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