冒険者ギルド
「ここが冒険者ギルドか」
「大きな建物ですね」
冒険者ギルドの前へと辿り着いた俺達は、開いたままの扉をくぐりギルドの中へと入って行く。中に入るとそこには酒場の併設された受付ホールが広がっていた。昼間から呑んだくれている冒険者もチラホラおり、入ってきた俺達を威圧的な目で見てくる。中には「貴族の坊ちゃんが。ケッ!」と、悪態をついてくる冒険者もいた。
「やっぱり、怖い人が多いですね」
「そうか。こんなもんだろ」
ルイは初めて来る冒険者ギルドに萎縮しているが、俺としてはオタク一味に教わった知識から何となく予想していた光景だった。マイクは何度か来たことがあるようで、周りの視線を気にすることなく受付へと向かう。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日は冒険者登録でしょうか?」
「ああ、こちらの方が登録しに来た。もう一人の方も登録をしたい」
受付嬢さんは俺達に向けられる視線を気にすることなく、そつなく対応する。マイクも慣れた感じで用件を伝えて行く。
「承知しました。それでは、冒険者登録の手続きをさせて頂きます」
「そうだ、受付嬢さん。これを持ってきたんだけど」
受付嬢さんの返答で思い出し、渡し忘れていた一つの封筒を取り出す。城を出る前にクレアに貰っていた推薦状だ。受付嬢さんは封筒を確認すると、「少々お待ち下さい」と言い残しどこかへ急ぎ足で向かっていった。
受付嬢さんがいなくなり、戻るまで待つことになった。そんな俺達に、一人の大柄な冒険者と取り巻き達が近づいていく。
「よぉ、坊ちゃん。冒険者ごっこか?」
「どうせ、騎士に頼ってろくに戦えもしないんだろう。くははっ」
近づいてきた男達は少し酒が入っているみたいで俺達を、というか主に俺を小馬鹿にしたように揶揄ってくる。
この状況も、オタク一味から教わっていたものと酷似していて驚いた。ひとまず、相手のペースに飲まれないように淡々と返す。
「少し
用件だけを簡潔に伝えると、ルイが何やら関心している。喧嘩を吹っかけるとでも思ってたみたいだ。けしからん。
だが、冒険者達には俺の発言は癪に触るものがあったらしい。怒りを露わにして詰め寄ってきた。
「てめぇ、冒険者舐めてんのか。アイアンにはな、ちゃんとした戦闘力があることを証明できないと上がれないんだ。この証明の大変さが、てめぇにはわからないだろうな!」
ギルドに来る道中聞いた話によると、荒くれ者や田舎の農家から冒険者になる人達もかなり多いとか。そんな人達は基本的に戦闘力が高くない。よって、多くの依頼が受けられるアイアンに上がるまでの下積み期間が長くなるらしい。
俺達に絡んできたこの冒険者達も、そんな出身の奴らだったらしい。だが、そんな事情など知るはずもない俺の発言は、彼らを怒らせてしまうには十分だったみたいだ。
「てめぇに冒険者の過酷さを教えてやる。裏の演習場に来い!」
怒る冒険者は俺と実際に闘う気でいるみたいだ。さすがに取り巻きも止めに入っているが、冒険者は耳を貸さずに俺へと迫ってくる。その時だった。
「そこまでだ、ゴーズ。やめなさい」
そう言いながら、ギルドの奥から筋骨隆々な爺さんが受付嬢さんに連れられ出てきた。
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