迷宮と冒険者ギルド
「決闘なんか受けて、どうするつもりなんですか!?」
レイアとの決闘が決まった後、工房まで戻ってくるとルイが慌てながら聞いてきた。
ルイが心配する通り、普通に考えたら相当に分の悪い賭けだけど勝つための算段は立てている。相手が格上だからこそ使える、とっておきのアイデアがある。
「まぁ、落ち着け。決闘はどうにかなると思う」
「相手は聖騎士ですよ!それに、周りへの被害が出ないようにしなくちゃいけないんですよ!できるんですか!?」
「そう言われると。まぁ、どうにかなる……、かな。ギリギリの賭けになるかもだけど。そのためには、レベルを上げなきゃいけないだよな〜。どっか効率の良い狩場ってある?」
ルイの言う通り、相手は格上。さらに威力の高い魔道具は、周りへの被害が出てしまうから使用できない。
ただ、どうにかできないわけでもない。だけど、今のままでは身体能力的にも魔力量的にも厳しい。それらを解決するためにまずは、レベル上げが必要だ。
「レベル上げですか。それなら、王都の近くにちょうど良い
「
「なるほどな。冒険者登録ってのが必要なのか」
「そうです。それにランク制限もあります。自分で言っておいてなんですが、現実的ではないと思いますよ」
「やっぱり、ランクもあるんだな」
「そうです」とルイが説明する。ランクは全部で七階級あり、下からブロンズ、アイアン、シルバー、ゴールド、プラチナ。そして、英雄級と呼ばれるミスリルに、伝説級と呼ばれるアダマンタイトがあるみたいだ。基本的にダンジョン攻略が認められるのは、アイアンかららしい。
「なので、特例でもない限り
「特例ってさ。王族の推薦状みたいのじゃ、ダメなのかな」
「それなら……。大丈夫かもしれないです」
俺はルイの言葉を聞くと、研究室から飛び出しあるところに向かった。それからしばらくして一つの封筒を持って、研究室まで戻ると。
「クレアから推薦状、貰ってきた!」
そう言って、俺は封筒をルイに見せつけた。すると、ルイは一瞬驚いていたがすぐに呆れ顔になった。何故だろう、これで特例は解決するのに?
ルイは恵の行動力と無用心さに頭を抱えていた。
***
翌日、俺達は推薦状を手に冒険者ギルドへ向かっていた。馬車は目立つので歩き向かう。
それから、クレアに推薦状を貰いに行った時に護衛を一人連れて行くよう言われたので、今は三人で歩いている。護衛はレベル上げの時にお世話になった人だった。
「お久しぶりです」と出発前に挨拶した時に言われたことで思い出した。前にも名前を聞いていた気もするが、改めて自己紹介をした。護衛の人はマイク・アクレーンというらしい。なんでも近衛騎士らしく、出て行く時にはレイアに睨まられてきたみたいだ。
しばらく歩きながら話していると、王城のとある噂の話になった。どうやら、訓練場をたびたび破壊する者がいるらしいのだ。騎士団の間では修繕費が嵩んでいると、嘆きの声が周っているらしい。他にも、王城の禁書庫に忍び込もうとした者がいるとか、騎士団に混じって剣術の訓練をする魔導具使いがいるとか。
「そ、そんなやつがいるんだな……」と白白しく誤魔化すと、俺のことをルイが睨んできた。
他にも色々な噂があると聞くと、アタフタする俺とルイを見て小さく笑うマイク。冒険者ギルドへの道中はあっという間に過ぎていった。
そして、王都の商業地区の端に建つ一際高い建物。そう、異世界名物『冒険者ギルド』にたどり着いたのだった。
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