冒険

現代知識

 結弦達が出発してから、一週間が経った。


 あれから魔道具の開発と、魔導回路の研究など色々とやっていた。

 魔導回路の研究にはクレアも参加してくれている。そのお陰で、自分では気付けなかったミスを見つけることが出来たので、魔導回路はより質の高いものになった。その結果、魔道具の性能も以前より大幅に上昇した。


 これは余談だが、ルイは恵のことで更に頭を抱えている。



 今日も訓練場で魔導具を試し打ちをしている。ルイも俺の後ろで試射を見つめている。なにか監視されてるような感じもするが、気のせいだろうか。

 今日はある魔導具を、ルイに見せてやろうと思って持ってきていた。


「ルイ。今日持ってきた魔導具は、いつものとは一味違うぞ!」


 そう言って笑うと、ルイは「なんだか心配です」と不安そうにしている。

 「それで、どう違うんですか?」とルイが聞いてきたので、懐から用意していた魔道具を取り出す。


「今回の魔道具は、俺の世界の知識を元に作ったんだ。その名も『魔導式拳銃』!」


 魔道具を見せると、ルイは見慣れない形と聞きなれない単語に首を傾げている。

 そんなルイに俺は、この魔道具について説明した。


「この魔道具は俺の世界にあった拳銃って言う武器を、魔法を使って再現したものなんだ。仕組みはやりながら説明するよ」


 ルイはこの魔道具を警戒してるようだけど、「気になります!」ってオーラがすごい出ている。

 俺は魔道具に魔力を込め、撃鉄ハンマーを倒す。狙いを定め引きトリガーを引くと、大きな破裂音と共に弾丸が的へと飛んでいく。


「これが魔導式拳銃だ!」


 振り返ってそう言ってやると、弾丸が貫通した的を見たルイは目を丸くして驚いていた。いつもの魔道具のように的を破壊するものではないが、正確に的の中心を射抜いている。


「ケイ、この魔道具はどのような仕組みなんですか!?元になった武器とはどのような違いがあるんですか!?」


 ルイは新しい魔道具に興味深々って感じだな。俺は「説明しよう!」と、どこかのアニメで出てきそうなセリフから魔導式拳銃の詳しい説明を始めた。

 この魔道具についてと拳銃がどんなものか、ついでに他の現代武器についても説明していく。その間ルイは目を輝かせて聞いていた。


***


「この魔道具は、現代武器と魔道具の融合の第一歩だ!まだまだ、もっとすごい魔導具を作ってやる!」

「僕も協力します!!」


 魔導式拳銃の完成を喜び、これから作る予定の武器に期待を高める恵。そして、恵の作り出す新しい魔導具に大きな可能性を見つけるルイ。二人は現代知識と魔導具の融合に胸を高鳴らせていた。


 そんな二人の元に近寄る人物が一人。二人が魔道具を使う一部始終を見ていた彼女は、チンケな魔道具を作った二人を馬鹿にしたような態度で歩いてくる。


「おい。下賤な異世界人と魔法省のパシリ!」


 二人に近づくと彼女はその地位には見合わない口調で話しかける。

 彼女に気づいたルイは怪訝な表情をしながらも腰を低くする。だが恵は彼女のことを記憶しておらず、呆然としている。


「いかがなされましたか、スターレン様」

「貴様らがおもちゃで遊んでいるのを見かけてな。異世界人に用があるのだ」


 ルイは突然現れた彼女に無礼がないよう対応する。彼女がクレア・ルーシュの護衛騎士であり、近衛騎士団副団長であるレイア・スターレンであることをルイは知っていた。

 恵も二人の会話を聞きながら、彼女が誰だかを思い出していた。クレア姫と一緒におり、何かと殺気を放っていた人物だと。

 レイアの用が恵にあると知ると、ルイは恵に変なことはするなと目で訴えた。だが、恵はそんなことを気にも留めずレイへ返事を返す。


「何の用だ、クレアの腰巾着。これでも、そこそこ忙しいんだ手短にしてくれ」


 恵の喧嘩口調な返しにより、ルイの思いははかなく散った。


「調子に乗るなよ、異世界人。貴様のクレア様への態度、許されるものではない!貴様をクレア様の前から追放するため、決闘を申し込む!」


 恵の安い挑発にまんまと引っかかったレイアは、いきり立ちながら恵に決闘を申し込んだ。その様子を見ていたルイは当然の出来事に呆然としながらも、大事になってしまったと感じていた。

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