旅立ち
次の日の夜。結弦に呼び出され、城の庭園に二人でいた。
「恵。話があるんだ」
真剣な表情で、結弦は話を切り出す。話の内容は大体の想像がつく。「なんだ?」と返事をすると、結弦は話を始めた。
「西条くん達に付いて、魔王討伐に行くことにする」
予想通りの話だった。こちらに来てから2ヶ月間、能力が近いこともあって一緒にいる時間も多かったのだろう。その中で決めたことだと思う。
結弦は話を続け、自分の能力が西条や他の人の助けになると思ったとか。世界の危機に城で、ただ待つだけは出来ないと思ったなど、色々理由を話してくれた。
それに、結弦がこっちに来てから感じた想いについて話してくれた。
「結弦が考えて決めた事なら、反対するわけないだろ。頑張ってこい!」
本当は少し心配だが、賢者の結弦の方が俺より何十倍も強いから大丈夫だと思う。結弦は「ありがとう」と返事をして、なんだか安心しているみたいだった。
***
結弦から話を聞いた翌日。俺もさらに強くならなければと、魔道具開発に勤しんでいた。
「『
詠唱と共に放たれた火の玉は、大爆発を起こし衝突した的を粉々に粉砕した。
「何してくれてんですか~~!」
すると、ルイに盛大に突っ込まれてしまった。実践を踏まえて改良を加えた魔道具に、レベルが上がり増えた魔力を注ぎ込んでやったのだ。このくらいの威力は、当たり前だと思うけどな。
「あの的も
「すごく強い魔道具」
「そういう事じゃないんですよ〜」
諦めたような、疲れたような表情でルイは俺を見る。ルイは最近、疲れているみたいだな。
そんな事をしている俺たちに、近づいて来る人がいた。その女性を見ると、ルイはすぐに跪く。
何処かで見たことある人だと思っていると、ルイが俺を引っ張って来た。よくわからないから、取り敢えず振り解く。
その女性の後ろに控える騎士が前に出ようとするが、女性に抑えられ怒りながらも下がった。
「お久しぶりです、アマウチ・ケイさん。拝見させていただきましたが、素晴らしい魔道具ですね」
喋り出した女性の声を聞いて思い出した。この人はこの国の姫さまで、俺たちを呼び出した張本人であると。
だから、ルイは跪いたし、後ろの騎士は怒ったのか。まぁ、俺は召喚を行ったクレア姫のことを良くは思ってないからいいだろう。
「そうだな。かなり改造した魔導回路を使ってるから、俺以外使えないと思うけど」
そう答えると、クレア姫は少し引き攣った笑顔で「少し拝見させてもらえませんか?」と聞いてきた。
相変わらず、後ろの騎士は怒り心頭って感じだし、ルイは顔色悪いし大丈夫か?
いいよ、とクレア姫に持っていた魔道具を渡す。
「魔力を流してもいいが、危ないから慎重にな」
「わかっています、大丈夫です。魔法に関しては、私の方が詳しいですから」
なんだか、話し方が雑になっている気もする。だが、言った通り慎重に魔力を流し魔導回路を見ている。
少しの間、魔道具を観察していたクレア姫だが、顔を上げて俺に言った。
「素晴らしいです!こんなに綺麗に纏められた魔導回路は初めてです!」
興奮気味に話し、俺に詰め寄ってこようとすると騎士に止められている。なんだか、食いつきが凄く良いなと思っていると。
「すいません。魔法の研究者として、こんなに素晴らしい物を前に興奮せずにはいられず」
と、謝罪された。姫様なのに魔法の研究をしていて、俺の刻んだ魔導回路を理解できる。クレア姫ってすごい人だったのかもしれない。
あの魔導回路を理解出来るならと、他の魔道具を見せてみる。すると、さらにテンションが上がっていく姫様。
「俺の工房きます?」
「行きます!」
誘ってみると、即答されたので工房へ案内する。
その後は、クレア姫の護衛に止められるまで魔道具について語り合った。
***
あれから、1ヶ月後。とうとう、勇者一行が出発する日になった。既に、この1ヶ月の間にオタク一味と不良組が城を出て行った。
出発の最後の確認をしている結弦の元へ、ある物を渡しに行く。
「気をつけて行ってこいよ」
「うん。ありがとう」
物を渡し、軽く話をしてその場を離れる。
『勇者一行〜。出〜発!』
その掛け声と共に、城門が開き勇者達を乗せた馬車が走って行く。
「行ってしまいましたね」
「そうだな」
近くにいたルイと、少しの間その場で馬車の出て行った城門を眺めていた。
______
これで一章が終わりになります。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
二章では、新しい仲間との出会いがあるので楽しみにしていてください!
ここから、あとがきです。
更新頻度が高くない中、これだけ読んでもらえていること。とても嬉しいです。ありがとうございます。
話は変わりますが、twitterもやっているのでフォローしてください。お願いします。
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